257 / 379
secret!!!
6
しおりを挟む「……何で待ってるだけなのに怪我してるの」
丸い瞳が怪訝そうに歪んだ。
その言葉に榊はエンジンを掛けながらミラーを覗く。口の端が小さく切れて血が滲んでいた。舌で舐めとると、先ほどの出来事を思い出し鼻で笑う。
「猫に噛まれたんだよ」
「あっそ」
明らかな嘘でも麗央は興味も無いと、適当に返事をする。いくら顔が可愛くても震えていた美人の細い体の方がクるものがあったと思いながら、雇主が車に乗り込んできたのを確認し発車した。
助手席で頬杖をついた麗央は街のネオンに目を向けながらうっとりと話し出す。
「アゲハ可愛かったなぁ……やっぱり女の子のドレスは良いよね」
「色気があれば何でも良いけどな俺は」
「下品な話はやめて」
馬も合わなければ趣味も合わない。
だが麗央は榊のその腕と頭の良さだけは見込んでいた。地位と美貌を持って生まれた麗央にとって盾となれる人間は必要だった。なにかと危ない目に遭う彼に両親が紹介した榊は金次第で良いように動いてくれると噂だった。
そうしてボディーガードになったのはわりと最近の事だ。
「俺が暇潰してる間にお前はずいぶん楽しんだみたいだな」
「そりゃ親友の誕生日のお祝いだよ」
「ちげえよ。居ただろお前の大好きな獅之宮氷怜が」
瞬間丸い目が輝いた。それでもすぐに目尻がきつく上がり眉を潜める。これでモデルが出来るのだから不思議なものだといつも榊は感心していた。
「何言ってんの。そんな都合良く会えるなら俺だって会いたいよ、見たとでも言う訳?」
「……いや」
榊も確信はなかったが優と暮刃がいたと言う事はおそらくそうでは無いかと思ったのだ。でもあまり公に顔は出さないかもしれない、それに麗央にその話を続けさせたら煩くなる事はインプットされている。
「お仲間が居ただけだ」
「no nameの……?ああ、でも氷怜さんのお気に入りにそっくりな子がいたよ。似てるからって失礼な態度しちゃったけど無理なものは無理、だって、どれだけ……」
それは本人なのではと思ったが、それを伝えると2人きりのこの場では怒りが榊に向かう推測は容易かった。
「せめてもっと、可愛くならないと……」
やはりスイッチの入った彼に榊はスルーを決め込む。得意の音楽をかけその場は任せる事にした。
今宵は気分が良い。
そう思えたのはあの真っ直ぐな瞳に見透かされたからかもしれない。
13
お気に入りに追加
1,391
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
BL学園の姫になってしまいました!
内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。
その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。
彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。
何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。
歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!
ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。
仔犬
BL
いつもの通りギリギリの毎日の中今日も疲れて目を閉じる。当たり前に始まる朝に嫌気がさしていたのに、目が覚めたらやけに綺麗な天井が見えた。
見知らぬ部屋で呆然とする俺の前に現れたのは懐かしい親友2人の姿だった。
懐かしさと嬉しさで喜ぶ俺だけどいまいち2人と話が噛み合わない。俺の記憶とお前らの記憶が違うってどう言う事だよ。
あと何で足首に鎖ついてんの?
過保護な不良に狙われた俺
ぽぽ
BL
強面不良×平凡
異能力者が集まる学園に通う平凡な俺が何故か校内一悪評高い獄堂啓吾に呼び出され「付き合え」と壁ドンされた。
頼む、俺に拒否権を下さい!!
━━━━━━━━━━━━━━━
王道学園に近い世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる