sweet!!

仔犬

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secret!!!

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氷怜の膝から脱兎の如く逃げた唯を見つめ、氷怜は仕方なくグラスを持ち上げた。笑いを堪える瑠衣が震える腕で酒を注ぐ。


「あいつは本当に反省してんのかよ……」

「……ブフッ……唯ちんやるうぅっ……ブッアハハハ!!」


堪えもすぐに限界を迎え、ゲラゲラと笑う瑠衣に氷怜が小突く。するとそれをひょいと避けソファに向かうと氷怜は諦めた。相変わらずの身のこなしは酒に関係する事はない。

人影に気付いた優が薄く目を開けた。


「……あれ、寝てました?」

「ちょっとだけ~」


瑠衣の手が優の額を滑ると暖かさに目を細める。
震えるほど寒かったが、今はだいぶマシになった。未だ握り締めていた暮刃のコートを見て次に瑠衣と氷怜を見上げる。頭が痛くて寒くてクラブでは謝れなかったと、優はようやくいつも通りの呼吸をして眉を下げて口を開いた。

「……心配させてごめんなさい」

「まー大人だからー許してあげましょう?」

今更の事に瑠衣は少し目を丸くするが、それでもすぐにふざけた彼にようやく優が小さく笑う。はっきりと謝った事、そして和ませる返事に何かが軽くなった。


「……うん、ちょっと元気出ました」

「オレがいる事で世界平和だからネ~?」

「いつもお前の周りに気絶したやつ1番転がして何言ってんだよ」

「勝手に転がってるだけです~」


やりとりにくすくす笑いながらゆっくり体を起こした優は、ふと着ているドレスに目がいった。可愛いドレスはさすがアゲハのもの、デザインだけでなく体のラインもすごく綺麗に出る。だがふと改めてその丈に疑問を感じた。


「あれ、こんなに丈短いやつだったかな」

「優たんまでそんな事言ってるとゲームオーバー」

「え?」

両手を上げた瑠衣に優が不思議そうに首をかしげると氷怜は大きくため息をついた。今まで優が頭を乗せていた柔らかい皮張りの肘掛けに体重を乗せると腕を組む。

「いざスイッチ入るとお前らは本当何も見ねえな……」

優はすみませんと謝りながら、だんだんと頭がクリアになってきたのを感じる。そうなると何故今回は周りが見えなくなったのかを考え始めるのは優のくせだ。

「……秋と俺、女装に関してはそもそも男だしって言う捨てきれないオスの精神があるから……あんまりこう、心配と言う境地にいかないんですよね」

「唯ちんも?」

「唯はそんなの意識してません。より良くするためにはどうするのかって方が唯は大事だと思うので」

「あーそんな感じダネ」

「後は……見た目に関してはそれなりだと思っているので」

「素直!!」

否定のしようがなく、その見た目はひと受けが良い。唯も秋も優も何故か目につくのは、派手以前にその持って生まれた素材、それを活かす術が誰よりも上手いのだ。

あっけらかんと言う優に瑠衣は笑いながらその話を興味深そうに聞いているが、これかなり珍しいのだと氷怜いつも静かに感心していた。

基本的にチームの重要な人間しか覚えられない節がある。だが唯と秋、優に対しては世話まで焼くようになったのだから、氷怜からするとようやく他人に興味を持ったかと言うところだ。

氷怜が黙ったことに気付き、下手に話しすぎたと慌てた優が小さく手をあげた。


「あの、これは反省していないわけでは無いです……」

「お前が良く頭が回るのは知ってるよ」


安心させる大きな手が氷怜から伸びる。
目を細めた優に氷怜は一度だけ糸口に口を出す事にした。


「今みたいなやつ、暮刃と話したのか」

「……んー」


優にしては珍しく言葉を濁し曖昧に笑うだけだった。
氷怜は目線をずらし、唯と秋のいる風呂場を目で指す。

「……ほら、お前も風呂入ってこい、だいぶ回復したろ」

「ほいー着替え持ってきてあげたヨ」

「秋裕がな」


受け取った優は笑ってお風呂に向かっていく。
氷怜はタバコに火をつけ瑠衣の横に深く座ると、煙を吐き出した。白が空気に溶けると瑠衣が首を傾げて言う。



「ゼントータナンー?」

「四字熟語でその話し方はやめろ……」








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