sweet!!

仔犬

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secret!!

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「……ん」


なんか、暖かい。
どこだここ。

ぼんやりと視界がはっきりしないけど、何となく外ではないことがわかる。
風もないし静かだし、それに身体に何か掛けられている。
 
さっきまで暑かったような気がするんだけど……記憶までぼんやりしてて頭の回転が遅い。視界の次に嗅覚が反応し、嗅ぎ慣れない臭いだとわかる。徐々にはっきりと見えた世界は意外と狭い。

「あれ、車……?」

「起きたかお姫様」

その声だけで頭が一瞬で動き出し、ついでに眉が少し吊り上がる。
センター分けのパーマが効いた黒い髪に目つきの悪い蛇のような暗い瞳、何を考えているか分からないけどいつも人を馬鹿にするような笑み。

「驚いたよ。ここで時間潰してたらアンタがあの扉から出てきた挙句そんな格好してるし、かと思えばこの寒空の下寝始めた。お優しい王子に心配されてるんじゃねぇのか」

やっぱり馬鹿にしたような口調で多分質問されたんだと思うけど、俺としては状況把握が先だ。窓の外は確かにお店の駐車場でどこかに連れて行かれたわけではない。服も特に乱れなし、思わずミラーでメイクの確認までしてしまったのは唯のせい。

ほっとしたところで頭がずきりと痛み、体が寒さで震え出す、羽織っていたものを抱き込むが匂いで分かる。この男の、榊李恩さかきりおんのコートだ。

「これ……どうもありがとうございます……」

「もうちょっと可愛く言えねえのか?」

返そうと思ったら突き返された。
とりあえず出してもらえるか分からないから、着ておこう。

「……不覚なんですよこっちは」

「そりゃそうだ。不覚じゃなかったらとんだアホだな」

相変わらずこの人の口調はものすごくむかつくし、さりげなく車から出ようと思ったら防がれた。
数秒間沈黙の後、でも助けてもらった事には変わりないと仕方なく小さく頭を下げる。

「本当に、助かりました」

「馬鹿正直で間抜けだ。色気もねえ。35点」

どんな採点してるんだ。
苛立ってもしょうがない、こうなったらそっちの都合を聞き出そう。

「……何でこんなとこに、また俺の事追いかけてきたんですか」

クリスマスの時みたいに雰囲気ぶち壊しの訳が分からないありがた迷惑は2度と御免だ。だけど男はタバコを取り出しただけで似合わない言葉を口にした。

「今日は子守」

「……父とは思えない根性のねじ曲がり方ですけど子育てなんて大丈夫ですか」

もはや遠慮と言うものはこの人に対して適用されないので思った事は全て言う。それでも特に効いた様子もなくげらげらと笑い始めた。

「くくっ威勢がいいなあ、仕事だよ。ガキ臭えやつのお守りだ」

それってボディーガードだろうか。
まあこの人強いし、詳しくどんな仕事か聞きたくなるが、これ以上居るとさらに被害が生まれそうだ。心なしか騒つくのは怒られることが確定しているからか。

「そうですか。それでは」

「待った」

今度は別れの挨拶もつけてみたけどドアに手をかけたら上から掴まれる。結局開けられず体の向きを榊李恩に向けられたうえ、離してくれない。

「何か……?」

「命の恩人だ。少しくらい話に付き合えよ。暇してんだ」

「……はあ」

いまいち良くわかんないんだよな、この人。出来れば早く先輩達と合流しないといけない、それにしてもどれくらい時間経ったんだろう。

「俺どれくらい寝てました?」

「20分ぐらいだな」

「なるほど……」

確かサクラ姉さんが先輩達がくるって言っていた気がする。だったらやばいな。掴まれた腕を引っ張るが残念ながらびくともしない。

鋭い目つきで視線が絡むと頭から下に下がっていく。そりゃ女装してたら目がいくよね。布面積少ないし。
唯のメイクは完璧でも出来れば今日の姿でこの人に会いたくはなかった。いや、いつでも会いたくないけどね。

「あの本当に用がないなら」

「あんた、可愛いな」



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