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しおりを挟むなんだか途方もない話にうーんと唸るばかりのおれたちにサクラ姉さんはぴしりと言い放つ。
「まだ何も確定的なことは分からないから貴方達はあまり気にしなくて良いの!」
「はい!」
思わず敬礼のポーズにクスリと笑う美人さんは話を続ける。こう言う気持ちの良い話の流れを作れるサクラ姉さんに婚約者さんは骨抜きなのではないだろうか。
「それになるべく知らない方が良いこともあるかもしれない、縁ってどこで繋がるか分からないから」
「あ、聞きましたか?桃花の叔母様のお話」
「なんだからしくて、笑っちゃった。それに私もみてもらった事あるのよ宮子さんに」
やっぱり有名な人なんだな、宮子さん。商売だったりする人には特別な力を信じても掴み取りたいって言う人が多いのかもしれない。
「あ、それと話は変わっちゃうけど今日はアゲハから伝言があって」
噂をすればなんとやら、連絡は取っていたけど特に変わった話は出なかったのに。優と秋がおれに目線を向ける。
「アゲハさんってあの唯がメイク教えた美人さん?」
「そうそう。2人はちゃんと話したこと無いもんね。今度紹介する!」
「ならちょうど良いわ。3人で行ってあげて?」
サクラ姉さんが持ってきていたミニショルダーバック。細い指が丁寧に金具を外し中から白いカードを取り出した。二つ折りのはがきサイズの表紙には金の英字でハッピーバースデーと上品に書かれていた。
「あの子、今月誕生日なの。それはパーティの招待状」
「わあ!お祝いしないと!」
そんなの絶対にいかなければならない。使って欲しい美容品がいくつもあるし、何より誕生日という女の子の一大イベントに参加できるのは嬉しい。
「随分盛り上がってんな」
「あ、お帰りなさーい!」
氷怜先輩、瑠衣先輩、暮刃先輩の順でドアから顔を出す。暮刃先輩だけが振り向いて通路のほうに何か声をかけた。そんなに時間は経っていないからおれたちのせいで早めに切り上げるような事になっていないといいが。
「先輩、アゲハさんのお誕生日会行ってもいいですか?」
ソファの背もたれに向き合って膝立ちしているおれのもとに氷怜先輩が戻ってくると、おれの頬を撫でながら首を傾げた。
「誰だ?」
「何言ってるのさんざん会ってるじゃない。本当に他人に興味ないんだから氷怜くん……私のお店のトップの女の子よ」
「ああ」
少しあきれ気味のサクラ姉さんにああ、と言っておきながら思い出したようには見えなかった。招待状を見開きにするとアゲハさんの美しいお写真があったので氷怜先輩に渡す。
「この前おれのメイク講座を聞いてくれた人ですよ?」
「アゲハ……あったか?」
暮刃先輩に視線を向けるとサクラ姉さんと同じような表情。
「会ってるよ氷怜。クリスマスにもきてたし、イノのパーティの時も……」
「オレも覚えてナーイ」
「……まあ、とにかく。それに行きたいんだよね?」
いつものことなのか暮刃先輩が話を持ち直した。頷いたおれたちにそう、と微笑む。
「氷怜、それ日にちは?」
「来週の土曜」
「その日は……」
口ごもった暮刃先輩に瑠衣先輩がすかさず口を挟む。
「じゃー幹部ダレカつける?」
「幹部は……いや赤羽を、ダメだな俺達が向こうだ……」
「紫苑はどうだ」
「そうなるとここが」
これは、やめた方がいいやつだろうか。
優と秋を見るがなんとも言えない顔をしているので、何も言わずに待ってみた。
ちょうど赤羽さんが戻ってきたので赤羽さんにも話し始めると彼にしては珍しく首を振った。
「さすがに2度同じ手で出し抜かれたくはありません」
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