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仔犬

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「桃花はみんな知ってる?」

「俺でも顔を見たことがある、くらいですね」

広いお座敷は豪華な料理で埋め尽くされ、それ以上に人で賑わっている。誰も彼もが宮子さんに挨拶をして頭を下げ、手を握って恩人だと言う人もいた。

「すごいなぁ宮子さん」

美味しい料理を頂きながらその様子を眺めていると、どれほどの繋がりがある人物なのかよく分かる。宮子さんと話せるのは当分先になりそうだ。

「式も桃花の家はじめてだよね?」

「おう、俺の家にきたことはあるけど」

「え?!俺達も行く!!」

「お前らうるさそうじゃん」

「唯だけだって」

「みんな知ってる?おれ黙る事も出来るって」

「無理だろ……」

「がーん」

「あんまり唯斗さんをいじめなくても……」

「愛故に愛故に」

秋がにやりと笑う。みんなひどいとむくれようと思ったけど、優しい桃花が豪華な料理をひと口食べさせてくれるとそんな事一瞬で吹き飛んだ。

「美味しい~」

「俺おせち料理あんまり好きじゃないけど、桃花のとこは美味いわぁ」

「それは良かった」

秋はおせち料理保存食なイメージがしていやなんだって。おれは見た目も可愛いし視界が華やかで好き。桃花は相変わらずゆっくり食べながら嬉しそうに微笑む。

「俺は栗きんとん派です」

「オレも~」

優がしっかりと味わう横で瑠衣先輩がペロリと平らげる。
なんだかおれだけ美味しいもの食べてるような気がして椎名に連絡したら「ママも美味しいご飯御馳走してもらうのハート」って返事が来たからよしとしよう。


「すごいや、著名人が続々と来てる」

「先輩達もナチュラルに挨拶してますよね……」

「家が家だしな」


先輩達の家って一体……。
そんな疑問が生まれる中、後ろから声がかかった。

「また飲んでるんですか」

「赤羽さん!あけましておめでとうございまーす!

「今年も爽やかに宜しくお願い致します」

駆け寄ったおれたちにくすくすと笑いながら赤羽さんが手を挙げた。また飲んでるのかと聞いた本人もその手には豪華な包みのお酒が握られている。
髪の毛の変化にも似合っていますと爽やかな白い歯を覗かせる。その笑顔は今年も抜かりがない。

「うん、今年も君達らしく宜しくお願いします」

「赤羽さんは着物着ないんですねぇ、残念」

「皆さんの姿が見れるだけで充分ですし……」

言いながら宮子さんにむけて頭を下げた赤羽さん。やっぱり知ってるだなぁ。

「赤羽。悪かったな最後まで」

「いえ、とんでもない。早く抜け出したい瑠衣さんの矛先が俺に向く前で助かりました」

「え?」

にっこりと笑った赤羽さんの言葉にすぐさま瑠衣先輩の方に振り返る。ちょうどグラスを口につけていた瑠衣先輩がキョトンとした顔で残りを全て飲み干した。

「赤羽っち相手してくれるんだったら、もうちょい暴れても良かったカナ」

「なるべく遠慮します」

爽やかにばっさり断っていく赤羽さんに暮刃先輩がくすくすと笑いながら優に白とピンクの甘いお餅を食べさせ話す。

「愛想振りまくの瑠衣は1番ダメだから試合させてたんだけど対等に相手できるの俺か氷怜か赤羽か幹部クラスだけだから試合要員に回るわけにもいかなくてね。見世物としての手合わせになるから物足りないってただこねてた訳」

「2人だってイライラしてたしー」

「お前と違って俺と氷怜はずっと相手してるんだから、それくらいしょうがない。まあ結局俺達向いてないね、あればっかりは」

「今更だろ」

向いてないと言うが微笑みだけで相手を満足させられるのだ。でも式と桃花が苦笑いをしていると言うことは本当に不機嫌だったのではないかと気になるところ。

その会話に赤羽さんが嬉しそうに話し出した。


「唯斗さん達が来てからは余計に顕著ですよね」

「え、なんですかそれ可愛い」

「寂しかったとか?」

「会いたかったとか?」


3人でにやにやしたらデコピンが飛んできた。

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