sweet!!

仔犬

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着替えさせてもらった家とはまた違う建物に案内される。静かな空間は自分の動く音だけが響いて、外からの人の声も届かない。
部屋の数は少なくて、その大部分を縦も横も広いお座敷が占めていた。


「よく来たね」


その広い部屋に1人。
細身ですらっとしたスタイル。長い黒髪を低い位置でまとめているその立ち姿に祖母なんて要素は感じられない。まるで桃花がそのまま歳を重ねたように美人さんにおれは目を輝かせた。

「桃花のお母様?」

「お世辞まで言えるなんて良い子だ」

凛とした声。
桃花そっくりな黒の瞳はどこまでも見据えていそうだ。部屋の真ん中から徐々にこちらに近付いて、端の先輩達からおれたちへとゆっくり見渡してふむと一言。

「随分と派手な集まりだねぇ」

「お、お祖母様」

「宮子さんとお呼び!」

「はい……」

突然の手厳しい声にびっくりして桃花の腕を掴むと、ハッとした様子で咳払いをした宮子さん。名前呼びの希望は椎名で言うところのママでしょ~の逆バージョンだろうか。

「全く、お祖母様なんてみんなが呼ぶもんだからこの子まで……驚かせて悪かったね」

条件反射とはいえ、下手に驚いてしまいすぐに頭を下げる。


「すみません。あまりの美人さんに見とれていました」

「まずはごあいさつだろ」

「あいた」


秋に小突かれ、式がため息。
やりとりにキョトンとした宮子さんがゆっくり桃花を見る。

「……この子、いつもこうなのかい?」

「はい」

問われた桃花がなんとも言えない顔で答えた。この反応はおれとしてもいつものことなので手を差し出して宮子さんに微笑む。

「高瀬唯斗です……宮子さんっておれも呼んでも大丈夫ですか?」

「……なるほどね」

「へ?」


何がなるほどなのだろう。じっと見つめられるも何でもないと首を振る。細くて柔らかい手が握り返してくれた。

「私も唯斗と呼ぼうかな、色々聞いてるよ」

「ぜひ!桃花にはなんて言われてるか怖いですけど……それから友達の野島秋裕と坂下優夜と」

「俺は本田式です」


2人の腕を引っ張ると頭を下げ式も同様に挨拶した。宮子さんはまた3人をスキャンするように見つめると綺麗な顔で微笑む。



「孫をよろしく頼むよ。秋祐、優夜、式」



桃花の事をすごく大切にしてる感じが伝わって、おれまでヘニャリ。おれにおばあちゃんがいたらこんな気持ちになるのだろうか。


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