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しおりを挟む手で隠してるけどがっつり指の隙間で見るタイプの瑠衣先輩がゲラゲラ笑いはーあと一息。今度はぐったりして秋に寄りかかる。
「てゆーかオレはハラヘッタヨ」
「こんなに恥ずかしいのに一瞬で食欲に負けた……」
たしかにブランチの時間ともなればお腹は空いている。歩き出して秋にぶら下がる瑠衣先輩にグーにした手をマイクがわりに突き出した。
「瑠衣先輩は何をお願いしてんですか?」
「血みどろ試合出来ますように~」
「こわい!!」
「アハハハハ!」
神様にお願いしちゃダメなやつ。
平和なのが聞きたくて暮刃先輩を思っ切り見つめると視線に気づいてふんわり笑う。年明けのこの笑顔尊い。
「俺は美味しいお酒が手に入りますように、かな。後のことは自分でできるけど巡り合わせは難しいよね」
「そろそろ新しいの開拓してぇな」
「まだ手つけてないのあるでしょ」
なんか大人すぎて良く分からないけど血みどろよりは良さそうだ。
通り過ぎる誰もが先輩達を振り返る中、気にした様子もなく氷怜先輩がおれを撫でる。
「ひさとせんぱいはー?」
「お前らが勝手にどっか行かないようにって」
「それいいね。それこそ俺達の力でもどうにもならないからね」
「新年早々怒られてるよ。唯」
「え?おれだけなの?」
3人なのに優によって責任転嫁されたが、筆頭がおれと言われてしまっては黙ることにした。式と同じように見渡した暮刃先輩が染めたばかりの優の頭を撫でた。
「声かけられなかった?」
「流石に先輩達がいると俺たちそんな目立ちませんよ」
「それはどうだろう」
先輩達の心配症は今年も変わらない気がしてなんだか癒される。大きく頷いた式が不思議でたまらない。
がやがやと賑わう通りを巡って、それぞれ食べたいものを聞かれ上げていくと、流れるように持たされていく。
当然のように目立つ彼らは女の子の可愛い悲鳴と何人ものアドレスを手渡されていたが、暮刃先輩が微笑んだり、瑠衣先輩がいつものマイペースで交わし、氷怜先輩はそんなに微笑むことはしないけどそのオーラだけでどうにかなるようだ。
流石にコレだけ大きなイベントだと声をかけられる比率が違う。
「今日は赤羽さんたち来ないんですか?」
「その内くるんじゃねえか。唯斗口開けろ」
あーと開けた口にたこ焼きが放り込まれた。んまい、屋台が出てたらたこ焼き必ず食べるのはおれだけ?
秋がイカ焼きを頬張りながら瑠衣先輩を見上げた。
「先輩達屋台とか食べるんですねぇ」
「オレはお祭りはなんでもスキヨ。まあ、暮ちんが来てんの初めて見たけど」
「暮刃先輩タコパって言葉に首かしげてたもんね」
私生活でホットプレートなんて使わなそうだ。
少し離れたところに優と暮刃先輩が屋台にいるのを見ながら秋がうーんと唸る。
「暮刃先輩が屋台に並んでると高級料理に見えてくるな……」
「並んでるのりんご飴だけど」
涼しい顔の優が何処か嬉しそうに笑ったのが見える。優様りんご飴好きなんだよ、可愛いでしょ。
「チームの奴らと瑠衣に引っ張られて去年行ったわ」
「ひー眠くて超不機嫌だったヨネ!!」
秋が食べたいと言ったじゃがバターを片手に瑠衣先輩がゲラゲラ笑う。あんな綺麗で派手だけどじゃがバター持ってるのかわいい。
落とさないように秋がそっと受け取るナイスアシスト。
「食ってばかりで太るな……」
「お正月はいいよー」
式が至極真面目にそういうのでたこ焼きを口に突っ込んだ。おめでたいから数日間くらい羽目を外したっていいと思う。カロリーだって関係ない。
ふと通りを見渡すがお目当の人は見つからなかった。秋がおれにもイカ焼きを差し出したので一口ぱくり。にっと笑った秋がおれの視線に気づいた。
「どしたの唯」
「今日椎名が初詣行くって言ってたんだよね」
「ん?合流する?」
「やーそれがさあ……おれがメイクも髪の毛もしたから誰かと行くっぽいんだよね」
「もっと早く言えよ。見逃したかもじゃん」
一瞬で真面目に探し出した秋にちょっと笑える。椎名とはみんな仲良しだからクラスの女の子みたいな扱いだ。
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