sweet!!

仔犬

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christmas!!!

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また数店舗回ってペットショップも付き合ってもらって先輩にもわんこにも癒されて。荷物は途中のお店で配送してくれるというので手は自由になった。小腹はお洒落な車で出店していたチーズたっぷりのサンドイッチが大満足で満たしてくれたが夕方となればまたお腹も騒ぎ出す。


「疲れたか?」

「ぜんぜん!このくらいで疲れてたらバイト14連勤とか出来ません~」

「よくやるな、楽しそうにしてんなら良いけど」

けどで終わらすなんて珍しい。横から覗きこんだらニヤリと笑って不意にとられた手がそれぞれの指に合わせるようにつながれポケットの中。

「たまには構え。俺を」

「ぐおおお」

「なんだよその反応は……ははっ」

当然のごとく変な声が漏れ出たおれに氷怜先輩が今度は爽やかに笑った。片手は取られているから両手で覆う事はできない。ああ、今日はなんだか先輩がカッコいいし可愛いしで忙しい。

「そろそろ飯食うか……どこか行きたいところあるか?」 

「うーんと……あ」

見えてきたのは赤い屋根がいくつも並ぶ通り。どこもかしこもクリスマス一色の煌びやかなそこに人がたくさん集まっていた。チラリと見えるサンタが子供に風船をあげると、嬉しそうに走っていく。

毎年ここはクリスマスマーケットが開かれているのだ。どこまでも続くイルミネーションは建物の線をなぞるように張り巡らされ夜を綺麗に照らしている。


「キラキラだあ……」

「こういうの好きなのか?」

「嫌いな人いるんですか?」

おれの言葉は意外だったのかもしれない。
一瞬の間を空けて答えが返ってきた。

「……嫌いじゃねえけど見ようと思ったことは一度もねえよ」

「え、まさか」

「なかったな、見に行くなんて」


知らなかった。サプライズもプレゼントもさらりとこなすからこう言う事も慣れたものなのかと。おれはと言えばみんな喜んでくれるから定番だった。それにおれ自身も好きだから毎年どこかしらを見に行く。


「おれ秋と優とすらあります」

「瑠衣と暮刃と俺で見てたらやばくねえか?」

「ぷっ」

想像したら面白くて吹き出してしまった。それはそれで見たい。瑠衣先輩あたりがキレーイとふざけた話し方で暮刃先輩と氷怜先輩にすり寄ってそう。

「それに、見たいって言う奴をそばに置かなかったな」

「そうなんですねぇ」

つまり同じ考えの人と一緒にいたと言う事か。こういうのって人によって違うしバラバラだから話を聞くとなんだか新鮮。

「……おれたち真逆ですねぇ」

イタズラのつもりで敢えて告げてみるが例のごとくいい笑顔で返された。構えたって同じ結果だけど胸のあたりに力を入れる。

「でもお前が喜んでんの見てるとイルミネーションも捨てたもんじゃ無いな」

「あ、もうこれ以上は!HPが!」

立て続けの攻撃に息も絶え絶えだと主張したら爽やかな笑顔でからりと笑われる。ずるい、ずるすぎる。そんな笑顔までつけられたらもうおれダメなんです。

いや、まて。逆に考えてみればおれの得意分野を氷怜先輩は意外とやってきていないのだろうか。

「じゃあ、おれは氷怜先輩がしてこなかったものを全部やっていきますので!」

「それは……楽しみだな」

不意に立ち止まって繋いでいない方の手がおれの耳を撫でるとゆっくりと綺麗な顔が降りてくる。唇の柔らかい感触は一瞬で、気付いた時には目尻にシワを寄せて嬉しそうに笑っていた。

ああ、やばい。
耳まで熱くて目線をぐりんと外して辺りを見渡した。

フル回転させた頭でディナーといえば、とこの辺りのお店を思い出す。恥ずかしさから思いのほか大きな声が出てしまった。

「せんぱい、ビュッフェ!」

あれ、と指差した先に洋館をモチーフにしたお店が輝いている。おれの心情などばればれだけど氷怜先輩は静かに微笑むだけでゆっくりと口を開いた。

「ここ、美味いよな」

「あ、やっぱり知ってましたね。えっと、行きません?」

「ああ」

頷いた先輩に喜ぶと、頭を撫でられる。
なんかもう、でれでれって言葉が似合うほど先輩が好きすぎるからこのまま溶けそうだ。

すると、ブーっとお互いポッケに入れていたスマホが同時に音がなり現実が蘇る。同時に鳴るなんて限られたメッセージグループだけだ。

「これは……」

一瞬目線を合わせ、おれはスマホを出して画面のロックを解除する。文字を読んで、すぐに後ろを振り返ったら見慣れた姿が。

「おお……さすが類友」

氷怜先輩がため息をつく。だけど嫌じゃない、そんな表情で。
おれは笑いながら手を挙げて振ると同じように返された。

「こんな気はしてたよ」

「離れられないもんですね」

手を挙げた暮刃先輩に苦笑気味の優。それからすでに爆笑している瑠衣先輩とビュッフェの料理が気になるのか看板のメニューを覗く秋。


「ナニナニ、みんなオレの事好きすぎ~」

「瑠衣先輩、今日自意識の高さが尋常じゃないっすね!」

「……アッキーは一人で食べたいんだ。そっかそっかーじゃあみんなイクヨー」

「ごめんなさい!まじで腹減ってます!」



結局、朝と同じ顔ぶれに戻ってしまうのだから2人で思わず吹き出した。

「どう?2人っきりは満喫できた?」

「随分と上機嫌な顔したやつが聞いてくんなよ……」

暮刃先輩がおやバレたと微笑む。確かに上機嫌だ。瑠衣先輩も秋もいつも通りだけど、やっぱりいつもより楽しげでほっこりする。

「あ、2人っきりと言えば……今回のクリスマスはこんな感じだったんで、氷怜先輩の誕生日には唯にリボン巻いてあげるんで。いくらでも好きにしてくださいね」

「え……え?!」


優が落とした爆弾発言に慌てるおれに繋いでいた手が引かれる。


「楽しみにしてる」


まだおれには2人っきりなんて早いのかもしれない。それほど上質で綺麗な色気で微笑むのだ。


「昨日までの威勢の良さはどこにいったの唯……」

「まだまだ色気で氷怜先輩には勝てないって事だよ」

「やっぱ唯はリボンだね」

固まったおれに親友2人の恐ろしい会話が繰り広げられる。
流石にひどいとビュッフェでは2人のお皿に盛り付けまくって食べるまで帰れませんの仕返し。でも結局手伝ってしまって3人仲良く撃沈。

そんなこんなでクリスマスは騒がしく終わってしまった。


「う、動けねぇ」

「絶対太った……」

「もう3人でリボン巻こうよ」

「「それは絶対無理」」


2人は言い出しっぺの法則を学んだ方が良い。














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