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christmas!!!
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しおりを挟むそのまま触れるような感触はすぐに離れてニヒルに笑ってカーテンが閉まる。なんてことをしてくれるんだと真っ赤になるが固まっていてもしょうがない。
着替えてる間にお店をもう一周。
デザインが凝ってて見るだけでも楽しいけど、鏡に合わせると首をひねる。お店をが氷怜先輩のイメージが強すぎて自分にはイマイチだ。
それでも鏡に映ったおれのヘアスタイルは氷怜先輩がやってくれたハーフアップ。緩めに巻いてまとめた後に崩すとたちまち垢抜ける。
ハーフアップ好きなんだよね。男子が?と思われるかもしれないが服によっては下ろすよりもあげた方が可愛い。
「そちら着られますか?」
後ろから声をかけられ振り向けば、合わせたままの服を店員さんが見つめている。
最初は一瞬だけ氷怜先輩みて驚いたのに、このお姉さんはその後も態度も変えないクールな人だ。
黒髪のオールアップスタイルが印象的。
「ちなみにお姉さんのおすすめありますか?」
ピンと来ない時は熟知してるスタッフさんに任せるが吉。服好きなんだけど優がいない時はこうなるよね。
「うちはユニセックスばかりなので種類が多いですがデザインもシックで……せっかく可愛らしいお顔立ちなので、こちらなんていかがですか?」
ひらりと広げられた洋服はプリーツが入っていて丈が短い。黒のそれは確かに可愛い。
だけど困った、流石のおれもスカートは普段履かない。
「……履くのか?」
いつのまにか着替え終わったのか氷怜先輩が後ろに立っていた。
着たとこを見せに来てくれたのだ。淡いけど落ち着いたピンクサイズは大きめだからカジュアルに着れる。ローズが入ったような大人な色は予想どうりよく似合う。
褒めたかったけどサングラスを外した瞳には笑いを堪え涙まで浮かべてる。おれは気にせず少し困った顔を作る。
「……お姉さん、実はスカートはあんまり履かなくて」
あんまりどころかほとんど履かないとも。
わざと言っているのにも関わらず氷怜先輩は肩まで震わせて笑いを堪える。
お姉さんはおれの言葉にそれは失礼しましたとさらりと流して次のお勧めを持ってきてくれた。氷怜先輩にオススメしたロングコートのショートバージョンだ。
なんとか笑いを堪えた氷怜先輩はコートを一目見て、いいなと頷く。
「畏まりました」
迷いもなく微笑んだお姉さん。
首を傾げたおれは氷怜先輩を見上げる。
「コート二枚買うんですか?」
「お前の」
うーん、氷怜先輩にとって何でもないのかもしれないけど、このままだとおれ一生返せないな。難しい顔が出ていたのか痛くないデコピンが飛んでくる。
「そんな顔すんなよ」
こんな時だけくしゃっと笑う氷怜先輩のズルさを秋と優に後で教えてあげよう。完敗は承知で腰に手を当て宣言する。
「じゃあせめてお昼は出させてください!」
「わかったわかった」
くすくす笑いながら頭を撫でられてしまっては結局甘えさせてもらっているのと同じだ。そしてその手が心地良くてすりついてしまうのはもはや本能。
氷怜先輩が着替えている間にカウンターで用意してくれていたお姉さんがにこやかに待っている。近寄れば赤いグロスのついた唇を薄く開けた。
「驚きました。有名な方がいらっしゃったので」
「あんまり来ないですか?」
「いえ、私はあまり芸能に興味がなくて、それでもその私が知っているような人なので……でもお連れ様は芸能とはジャンルが違いますね、ある意味社会的な有名さを持ってますから」
驚いた、そう言う見方もあるのか。
普通の人って先輩達をあの見た目の綺麗さから芸能人の扱いしかしていない。お姉さんの態度には納得だ。
「でも、そうは思ってない方達も多いようですね」
そう言って騒ついてきた店内を見渡すこともなくお姉さんはカウンターから出た。丁度氷怜先輩も戻ってくると、包んでくれた袋を持って出口まで案内してくれる。
落ち着いた店内に似合う丁寧な接客は見習うものがたくさんあるなぁ。
ガラスのドアを開ければ外にも人だかり。長居しすぎたのかもしれない。氷怜先輩がサングラスをかけ直し、ポケットに入れた腕に隙間を作った。
おれはそこに腕を置き、せめて買って貰ったものは持とうと手を伸ばす。するとお姉さんがにっこりと笑った。
「美男美女カップルは大変ですね」
凛としたお姉さんに笑ってそう言われてしまっては否定するのも申し訳ない。
当然、こちらもにっこり笑ってお姉さんから袋を受け取る。
「ありがとうございます」
隣で氷怜先輩がついに吹き出した。
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