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christmas!!!
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しおりを挟む「おはよう」
いやに眩しい朝だと思ったら人だった。
少し空いたカーテンからさす光が窓側で寝ている暮刃先輩の髪を輝かせていた。ぼんやりする頭の中で、明らかに彼が微笑んでいるのが分かるが少し開いた目がまた閉じてしまう。
抱きしめられている感覚が体温と振動で伝わる。
「まだ、眠そうだね」
頭を撫でられて心地良さに本当に寝そうになるが時間を確認したくなった。首元に埋まり声を出してみたら寝起きで少しかすれていた。
「今、何時ですか……」
「9時。まだ時間はあるし寝ていいよ。起きたければ手伝ってあげる」
不思議な申し出に思わず笑ってしまった。
それならば甘えてみることにして、小さく手を出す。
すると、くすりと笑い声が聞こえて頭の下にあった腕が背中まで回ると掛け布団ごと抱えられるように暮刃先輩の足の間に座る態勢になる。
ゆっくりと頰に触られて今度は強い力で抱きしめられた。ぼんやりとしているが心地の良い強さの抱きしめがだんだんと目を覚ましていく。
いつ寝たんだっけ、ゲームが楽しくてでも疲れて一旦休憩しようと思ったんだっけ。そしたらそのまま寝てたと。
「たぶん運んでくれたんですよね。ありがとうございます」
「役得だね」
ポン、ポンと背中を叩かれて一定のリズムがまた眠たくなる。
「寝ちゃうんですけど……」
「寝てもいいよ」
俺の言葉にくすくす笑いながら俺の髪を撫でていく。もしかしたら寝癖でとんでもない事になってあるのかもしれない。ぼんやりする俺と違ってこの人は朝でも完璧だ。多少乱れた髪すら色気を出す要因になる。だって時々かきあげて、目が合えば微笑まれておでこに唇が落ちた。
「見過ぎ」
「暮刃先輩」
なんだろう、いつも甘いけど今日は一段と俺に甘い。名前を呼んだら完璧な笑顔で微笑んだ。
「でろでろに甘やかして刷り込みしてません?」
「うーん、バレた」
隠す気もないくせにふっと笑って残念と一言。俺は思わず釣られて笑うが、可愛い作戦のその効果は高い。
少し背中を伸ばしてその腕から抜け出して暮刃先輩を見れば、カーテンから漏れた光が暮刃先輩を照らしてグレーの目が神様みたいに見える。
それでも同じ人間だと言い聞かせてベッドの上に膝を立てた。俺の胸のあたりにくる暮刃先輩の頭を抱きしめる。
「居心地が良すぎるなんてもうインプット済みですよ」
「まだまだ」
足りないと言うが昨日の今日で随分なことを言ってくれる。自分ですらあのとつけたくなる俺たちの嫉妬や羨望のなさからそれを生み出したのだから奇跡みたいな事だ。
「朝ごはんにしようか、何か作るよ……ちなみ俺の予想では秋と瑠衣は一階のソファで寝てる、と思う。かける?」
「寝てなかったら俺が朝ごはん……は無理なんで紅茶を淹れます」
「優って器用そうな顔してるのに……ははっ……」
ゆっくりベットから降りたら何がツボなのか暮刃先輩が笑い出す。俺はこの人がくしゃりと笑う顔が好きで朝からいい気分だ。
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