sweet!!

仔犬

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christmas!!

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「秋」

「え?」


珍しく秋なんて呼ぶから少し驚いてしまった。ベッドの上で両手を広げている瑠衣先輩はこれまた珍しく真顔だ。


「匂いがどうの話した後にそれはちょっと……」

「自分に着いた匂いが嫌なだけー」


いや気になるだろう。
そんな視線を送っても腕は下がらず宙をふらふらと動いている。数秒待っても変化はない。


「……あとで文句言わないでください」

仕方なく、その上に飛び込んだ。
腕が下され背中にまわる。確かめるように滑り、次第にその力が強まっていった。ボディーソープなのかシャンプーなのかトリートメントなのか、とにかく良い匂いが鼻をくすぐる。やっぱりお風呂入ってからが良かった。


「いいにおいする~」

「え、それ怖いんですけど」


それはもしや体臭?
クラブでたまたま良い匂いが着いたなら良いけど。


「アッキーの匂い」

「げ、嗅がないでくださいよ」

「良い匂いがなんだから良くない?」


ケラケラ笑う瑠衣先輩の振動が伝わって来る。
横になってみてわかった事が1つ。意外と疲れてた。

だんだんまどろんできた俺に声がかかる。


「寝ればー?」

「いやご飯作ってるのに」

「んーー、今日は獅子が機嫌良いから」


なんでも大丈夫と言う瑠衣先輩。
こんなんでも意外と周りを見ているのだ。
機嫌がいいのは確かにそうだな。でもそれは先輩達だけじゃないし、あの2人もそうなんだと思うと、突拍子もないことを言っているんじゃないかと心配になる。

それに目の前のこの人も。


「これ、嬉しいかったですか?」


胸の上で頬杖をつき瑠衣先輩の手を掴んで、俺がはめた指輪をつまむ。俺の下で目を一度瞬かせ、ニヤリと笑った。

「上出来~」

「うわ、可愛くない言い方」

そう突っ込みながらも、彼らしい返答に笑ってしまった。瑠衣先輩もけらけらと楽しげでやっぱり機嫌がいい。だって俺の髪をいじりながら昔話をし始めた。

「昔さー、好きなもの全部自分の部屋に集めてたんだよネ」

「あー想像つきます……何集めてたんですか?」

「欲しいもの全部」

とにかく好きなったものは全部部屋に入れていたと言う。ケーキも大好きなペットも好きな服も好きなぬいぐるみも。

「そんでさ集めて、そこで過ごして満足すんの」

両手を投げ捨てるようにけらけら笑いながら綺麗な目がかがやく。そして嬉しそうに続けた。

「2人でも良いけど、オレひーも暮ちんも気に入ってるのネ。唯ちんも優たんもー」

つまり、好きなものが集まった家だと言うのか。何だか聞いてて俺までうれしくなってきて、知らないふりをして首をかしげる。



「俺は欲しいものに入ってるわけですか?」



ペロリと舐められ、舌なめずり。


「当たり前」







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