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christmas!
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しおりを挟む思案するように氷怜先輩がぼそりと呟いた。よく聞こえなくて首をかしげるとあげた指輪を逆の手でくるりと回す。
「唯斗、これ俺にずっと付けてて欲しいか?」
「もちろん!」
喜んでもらいたい、そう思ってそれを選んだのだからたしかにつけて欲しい。これでも男だから、首でもどこでも良いけど身につけてもらえたらそりゃ嬉しいよね。
氷怜先輩も同じはずなのに何故それを聞かれたんだろう、まさかデザインが気に入らなかったのだろうか。もちろん喜んでくれていたのは見ていたけど思わず聴きたくなってしまった。
「あの、気に入らなかった……とか?!」
「まさか。なんなら他の指輪捨てたっていいぜ」
「え、いや?!捨てなくていいです!」
否定の言葉に安心してそしてその他を捨てる意味を理解したら急激に照れてぶんぶん頭を振る。愛が男前すぎてうまく返せないけど、そんな事は思っていない。
ただ喜んで欲しい、好きなものを身につけて、その上でそばに置いて欲しい。それだけだ。そう思ったおれを氷怜先輩がじっと見つめていた。
「お前……気付いてるか?」
「え?」
突然質問されたが、何に大しての質問なのか。
きょとんなおれの反応に何かを考え始め、何も言わずにそのまま完成した料理を盛り付ける。
おれはその間に煮込まれているスープに最後の具を入れた。後は待つだけ、もう少しで完成だ。
「唯斗」
するとカウンターに寄りかかった氷怜先輩がおれの指をとった。もらった指輪は細めで外側はまっさらで丸めに作られている。でも内側の見えない部分に小さな宝石が入っていた。そのセンスが彼らしい。
なぞるように触られるとくすぐったい。
「どの指でもいい、俺がお前にあげた事を忘れるな」
真っ直ぐな視線がおれを貫いている。
そんなの当たり前だ。この先おれはこの指輪をを見るたびに氷怜先輩を想うだろう。見るたびに恋するほど、愛しさがこみ上げる。おれの中で絶対的な人間がこんな事を言ってくれる。
それに、同じ気持ちだ。
「おれもそう思ってもらえたら嬉しいです」
くすくす笑ったら、そう答えるとは思っていなかったのか氷怜先輩が意外そうな表情した。
「へえ……」
薬指だけの感覚が手のひら全体を遊ばれるように指が絡み、ついに重なってその手に閉じ込められた。
その動きに気づいたおれのだんだん早くなる鼓動に合わせたように、いつも揺るがない瞳が一瞬光を強くしてた。口元をゆっくりと上げ、ぞっとするほど美しい捕食者の笑み。
「お前から首輪が貰えたと思うと、堪らない」
繋がれた手を口元に運び、数回緩やかにキスが落とされる。
その間ですらその目がおれを捉えているから、口を動かしても息がうまく出来なくて言葉が不発に終わった。
おれはやっぱりだめなんだ。
こう言う時のこの人を目の前にすると今まで培った言葉や行動が全部真っ白になってしまう。聞こえないはずの鼓動がうるさくて耳元で鳴らされているようで、それ以外はこの人の情報しか入ってこない。目が離せなくなって甘くなった匂いで胸が苦しい。
「首輪じゃ、ない……」
やっと言葉が出たのに言葉と同時に恥ずかしさがこみ上げてきた。意識していなかっただけで、そうと言われて仕舞えばそれは嘘じゃない。
「こんな捻くれた考え方してねぇのはわかってるけど……勝手に喜ぶのは良いだろう?」
ニヒルな笑みに瞳が鋭くなった。
絶対的な王者が何故おれに屈するような言葉を選ぶのか、いままで信じられなかったけどそれがこの人の表現の仕方なんだ。その想いをおれに解りやすく伝えてくれている。
もう恥ずかしくて思わず一歩下がると肘が火元に近くなってしまった。グイッと引っ張られて氷怜先輩の腕の中。
「気を付けろ」
表情が見えない中で耳元で囁かれた言葉が色をつけて体に響く。
それは何に、それとも誰に?
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