sweet!!

仔犬

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christmas!

12

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「じゃあイクヨ~」


随分と呑気な声の割に強制連行の形で車に乗せられ、クラブのある場所よりも都市の中心部に移動した。

閑静な住宅街を通り過ぎてそこに着く。
都心にこんな静かなとこがあったのかと驚く間も無くモデルルームのような建物に言葉をなくす。


「はーい、あげたカード出して~」


まるで幼稚園児の引率だ。
真っ黒なカードキーを使って開いた世界は異世界だ。
広い、広すぎる。自分が住んでいる家なんて物置なのではないかと思うくらい。高い天井は吹き抜けで二階に繋がっている。二階から一階を見渡せ、白の木材で作られた階段はそれすら見せるインテリアだ。

「瑠衣が吹き抜けと窓にだけはこだわったから」

「ベストポジションで昼寝したいもん。オレ、シャワー浴びる」

「今?」

「イマ」

既に行き慣れているのか、じゃあねぇーと瑠衣先輩が部屋の奥に消えていく。

「まったく、あいつも自由だな」

ため息の暮刃先輩に導かれた先に、相変わらず趣味の良すぎるソファが一階のリビングに置かれていた。
広すぎてソファで小さくなったおれたちは目の前にあるこれまた大きな窓を眺めていた。映画館ですかと言うほどのガラスは都会だと言うのに星がよく見えた。そのまま視線を下ろすと芝生とレンガ調の…………。


「プール…………」

「唯、頰つねってやるよ……」

「自分でつねんなよ……」


もう頭が全然回らないおれたちは呆然して、現実とは何だろうと哲学的な事を考え始める。これが現実なら恵まれすぎている。

「来世は囚人かなぁ」

「今世が最高すぎたから?ありえるな」

「もう虫以外なら良いや」


優がまるで全てを受け入れるように言うからむしろちょっと落ち着いてきた。虫は確かにこの世界で生きるのは大変そうだ。

「欲を言うならワンコかなぁ」

「そしたら来世も飼ってやるからいい加減現実に戻ってこい」

ソファの後ろから肘をついてティーカップを渡してきた恋人がふっと笑った。夢みたいなこれが現実のようだ。

秋も優も冷えた身体暖めるように渡されたカップを両手で掴むと思い当たる節があったのか首をかしげる。

「赤羽さんって知ってたんですか?」

「あいつには何も言ってないけど、知ってんじゃねえのどうせ」

同じくグラスを煽った氷怜先輩があいつの事だと言う。


「氷怜、これ次何いれるの。ああ、トマト?」

「ミキサーにかける」

大きなカウンターキッチンから声を上げた暮刃先輩が味見をしながら聞く。向かった氷怜先輩とバトンタッチで暮刃先輩がリビングにこちらにくると目の前のローテーブルの横に座り、聖夜にお似合いの微笑み。


「気に入った?」

「これ気に入らない人居ないですよ」


やっと処理ができ始めたのか優が呆れ顔になってきた。淹れてくれた紅茶も美味しくて、気持ちがいいクッションも完備でそれを抱きしめたらおれも落ち着いてきた。
映る手元の指輪もじわじわと心をあったかくしていく。この空間全てが幸せなのだとクッションにぎゅっと力を込め、今度は思いっきり緩めて両隣の秋と優の腕を掴む。

先輩達が居て2人もいる。



「えへへ」



ついににやけて笑ったおれに2人が釣られたのか吹き出した。

「ふぬけた笑いしてんなぁ」

「ほんとだよ」

「だってさあ……氷怜先輩おれも作ります~」


手をあげると綺麗に笑った氷怜先輩、この人が笑うとおれも嬉しい。


「ん、冷蔵庫のもん使えよ」


にやにやが止まらない。
こんなに楽しい夜があって良いのだろうか。





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