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仔犬

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「榊とは数回会っただけで深い仲じゃないぜ。お互い目立つ立ち位置にいて、たまたま集まりが被ったくらいで情報はほとんど持ってない。ただ、今のお前らのテリトリーで動いていたやつだ。まあもともとそういうのに興味があるような奴でもなさそうだったからそこは関係ねぇだろうな……それぐらいだよ」

あの人の事をそうぴよちゃんが教えてくれた。さっきちーちゃん先輩が逃げた窓が開いているのだろうか冷たい風が流れた。

ぴよちゃんの言葉に瑠衣先輩が首を傾げる。

「ふーん?オレ聞いたことなーい、暮ちん知ってた?」

「いや、俺もさっぱり」

「そもそも俺達はチームとして最初は動いてなかったし……テリトリーもチームも結果として今の形になったからな」

チーム昔の話を聞いたことがないので、始まりなんて以ての外だ。へえと驚きながらぴよちゃんが話に耳を傾ける。

「まあでも強かっただろ?頭も切れる、でもイマイチつかみ所がねぇやつだったからな……印象に残ってる事と言えばいつも綺麗な面した優男とつるんでた」

「優男?」


あの人は目付き悪かったけど、お友達は優しそうなんだ。是非ともお会いして榊李恩の攻略法をお聞きしたい。

「本当にそれくらいだよ……なに調べてんのかしらねぇけど、これ以上こいつらに怪我増やすなよ」

「ああ」

明らかにおれの腕を見てぴよちゃんが先輩達に投げかけた。腕の話なんかした事ないけど、先輩達が同じように頷くとぴよちゃんはすこし納得したようだ。

「まあ、なんか思い出したら言うわ……ほらさっさと帰れ」

「はーい!ぴよちゃんありがと!」

手を上げたおれに大きな手が乗ってきた。ためらいのない力で頭はボサボサ。見上げたぴよちゃんは、らしくない真面目な瞳でおれの頭の上を見た。

なぜ頭の上。

「おれの頭の上に何か……?」

「高瀬……お前変な縁連れてきそうだから下手に動くなよ」

「へ、変な縁って何ですかね」

「俺の勘侮れないぜ」

「当たってる当たってる」

感心したように秋が言うとみんなが笑った。優は興味深そうに呟く。

「歩く縁引っ掻き回しかあ」

「そんなすごい迷惑そうな肩書きは嫌だよおれ……」

みんなは楽しそうだが、言われた本人としては心が落ち着かない。しかもぴよちゃんのそれは、まさか、巷で噂の霊視ではないのか。

「ぴよちゃんはそう言うの見える人なんですか……」

「……」

何も答えずまた視線はおれの頭の上だ。
桃花は辛いものは苦手だけど、怖いのは平気らしい。ニコニコとしながら会話に混ざる。

「そういえば俺の叔母も見える人なんですけど唯斗さんの話すると面白い魂だね、憑いてる魂もって」

え、全然ニコニコで話す会話じゃない。
ギギギ、と氷怜先輩と暮刃先輩に首を向けたら、安心する笑顔を向けてくれると思ったのに肩を震わせて笑っている。よく見たら秋と優もだ。

「お前……ははっ」


ひどい、一体何がツボなんだ氷怜先輩。


「心配なら、良い祓い屋知ってますよ」

赤羽さんがいつのまにか取り出したタブレットで調べ始めることで本格さを増してきた。ハラハラのおれにニヤニヤの瑠衣先輩が楽しそうに脅かしてきた。

「ブフッ……ナニが憑いてるかね~?」

「……いや、いやいや、まっさかー」

笑い飛ばそうと思ったのにぴよちゃんったらものすごい真面目な顔でこんな事を言う。

「憑いてるししかも……まあいいか」

「本当に憑いてるの?!え、え、そんなところで止めないでぴよちゃん」

「じゃあな」

「ええ、ぴよちゃんのバカーーー!」

振り返りもせずぴよちゃんは行ってしまう。階段を降りるぴよちゃんに叫んでみても反響して返ってくるだけ。


「唯って本当に……あはは!」


暮刃先輩まで声をあげるからおれはもうショックでおよよと泣き真似をするしかなかった。


それでも流石にしょんぼりしたおれを笑いながらもご機嫌に持ち上げるために先輩達は四川料理をご馳走してくれた。
先輩達との久しぶりのご飯。
単純なおれは美味しい美味しい料理と、どこぞの舞台のような圧倒的なパフォーマンスですぐに元気を取り戻す。


こうして無事、慌ただしいテストが終了した。


「カンフーやばい!おれもやる!」

「これ以上趣味増やしたら死ぬんじゃない?」

「大丈夫、おれ憑いてるから!」

「ついに逆手に取った……」




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