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care!!!
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バイトを早く上がったと言う連絡に赤羽がカフェに到着するとその姿がない。春に控え室に居ると聞いたものの、3人のコートも荷物もそのまま肝心な本体がいない事に赤羽が目を細めた。
考える前に春が不思議がるのを避けるため赤羽は荷物をまとめる。教科書、携帯が2つ。
3人の携帯は覚えていた。秋と唯の携帯だった。
ちょうど春が様子を見に後ろから顔を出す。
「あれ、居ないね……あ、ゴミ捨ててくれたんだ。上がっていいって言ってるのに本当いい子だなぁ」
「ゴミ?」
春の言葉に首を傾げた。
「いつも最後にここにまとめておくんだけど無いからす捨ててくれたんだなって」
ロッカー横を指差した春。確かにそこのゴミ箱は空、ゴミはない。
「外にいるかも知れないので、とりあえず荷物だけ車に運んでおきますね」
「ごめんね、いつも遅くなって心配だったから送り迎えがあると安心するよ」
春がいつもの柔らかい笑みを赤羽に向けたので同じように笑顔で返した。頭を下げて店を出るとすぐに裏に回った。
人通りの全くない、ゴミ置場のプレハブがあるだけで他にはなにもない。鍵も閉まっている。
この一瞬でやられたわけだ。
プレハブのドアに手を当てて、赤羽は笑った。
もともと早い歩みがさらに早くなり、車に乗り込むとスマホを握る。数コールで相手につながった。
吐かせたサイトを見ている頃だろう。機械を通した低い声が響くと、口の端をあげた。
「どうした」
「氷怜さん」
いつも通り淡々と、顔だけは穏やかに話す。
つもりだった。
思わず早口に出た名前に自分自身で驚く。
言葉が出てこない。これは、怒りだった。
赤羽にしてみればここ数年で1番驚く事だった。あの3人が連れ去られたという事がここまでそんな感情を呼び起こすなんて考えもしなかった。今まで唯斗達にあった出来事も心配こそするが、ここまで揺さぶられた事がないからだ。
何に、自分は怒っているのだろう。
「赤羽……?」
「…………早く上がったと連絡をもらったので迎えに行ったのですが、荷物を残したまま唯斗さん達が消えています」
返事はなかった。機械越しだと言うのに主人の顔が思い浮かぶ。冷気を帯びた目が暗闇の中で待つ獣のようになっているのだろう。
今自分と同じ顔をしているのかと思うとなぜか落ち着いた。
「優夜さんはおそらく携帯を持っているようなので、それが使えれば居どころが割り出せるかと思います……一旦そちらに戻ります」
「…………分かった」
低く静かな返事に心中が読める。通話を終了させると、唯斗達のコートが目に入った。寒さを感じて車のエンジン入れた。
クラブまでの数10分の距離が嫌に長く、音楽をかける気にもならない。かける音楽をあの子達が喜ぶような選曲にしたのは割と出会ってすぐだ。
「…………なるほどね」
自分も情報収集対象のひとつ。突き止めた想いに1人で笑った。
車をいつもの場所に横付けし、裏からクラブの一室を一直線に目指す。ドアを開けた赤羽に、全員が注目した。その空気の異様さに気づくのに3秒も要らなかった。
「申し訳ありません」
赤羽が頭を下げた事により幹部の緊張感が増した。張り詰めるような凍えるようなそんな空気の中で式と桃花が固唾を呑む。
赤羽が頭を下げたまま起こそうとしない。氷怜も瑠衣も暮刃もすぐには何も答えなかった。タバコの煙を吐いて氷怜がようやく口を開く。
「……赤羽」
「はい」
「お前が謝るのか?」
「いえ、それでも俺の気が治らないです」
「……お前も存外気に入ってるわけだ」
喉を転がす声に読み取られたと思った、隠してもいないが。
この顔は手に入れる情報のために、隠すのに都合が良いだけのもの。
笑い混じりの氷怜の言葉にいつもの笑顔で顔を上げた赤羽が、笑みを深くした。
「もう掴んでるんだろ」
「はい、それが俺の仕事ですから」
考える前に春が不思議がるのを避けるため赤羽は荷物をまとめる。教科書、携帯が2つ。
3人の携帯は覚えていた。秋と唯の携帯だった。
ちょうど春が様子を見に後ろから顔を出す。
「あれ、居ないね……あ、ゴミ捨ててくれたんだ。上がっていいって言ってるのに本当いい子だなぁ」
「ゴミ?」
春の言葉に首を傾げた。
「いつも最後にここにまとめておくんだけど無いからす捨ててくれたんだなって」
ロッカー横を指差した春。確かにそこのゴミ箱は空、ゴミはない。
「外にいるかも知れないので、とりあえず荷物だけ車に運んでおきますね」
「ごめんね、いつも遅くなって心配だったから送り迎えがあると安心するよ」
春がいつもの柔らかい笑みを赤羽に向けたので同じように笑顔で返した。頭を下げて店を出るとすぐに裏に回った。
人通りの全くない、ゴミ置場のプレハブがあるだけで他にはなにもない。鍵も閉まっている。
この一瞬でやられたわけだ。
プレハブのドアに手を当てて、赤羽は笑った。
もともと早い歩みがさらに早くなり、車に乗り込むとスマホを握る。数コールで相手につながった。
吐かせたサイトを見ている頃だろう。機械を通した低い声が響くと、口の端をあげた。
「どうした」
「氷怜さん」
いつも通り淡々と、顔だけは穏やかに話す。
つもりだった。
思わず早口に出た名前に自分自身で驚く。
言葉が出てこない。これは、怒りだった。
赤羽にしてみればここ数年で1番驚く事だった。あの3人が連れ去られたという事がここまでそんな感情を呼び起こすなんて考えもしなかった。今まで唯斗達にあった出来事も心配こそするが、ここまで揺さぶられた事がないからだ。
何に、自分は怒っているのだろう。
「赤羽……?」
「…………早く上がったと連絡をもらったので迎えに行ったのですが、荷物を残したまま唯斗さん達が消えています」
返事はなかった。機械越しだと言うのに主人の顔が思い浮かぶ。冷気を帯びた目が暗闇の中で待つ獣のようになっているのだろう。
今自分と同じ顔をしているのかと思うとなぜか落ち着いた。
「優夜さんはおそらく携帯を持っているようなので、それが使えれば居どころが割り出せるかと思います……一旦そちらに戻ります」
「…………分かった」
低く静かな返事に心中が読める。通話を終了させると、唯斗達のコートが目に入った。寒さを感じて車のエンジン入れた。
クラブまでの数10分の距離が嫌に長く、音楽をかける気にもならない。かける音楽をあの子達が喜ぶような選曲にしたのは割と出会ってすぐだ。
「…………なるほどね」
自分も情報収集対象のひとつ。突き止めた想いに1人で笑った。
車をいつもの場所に横付けし、裏からクラブの一室を一直線に目指す。ドアを開けた赤羽に、全員が注目した。その空気の異様さに気づくのに3秒も要らなかった。
「申し訳ありません」
赤羽が頭を下げた事により幹部の緊張感が増した。張り詰めるような凍えるようなそんな空気の中で式と桃花が固唾を呑む。
赤羽が頭を下げたまま起こそうとしない。氷怜も瑠衣も暮刃もすぐには何も答えなかった。タバコの煙を吐いて氷怜がようやく口を開く。
「……赤羽」
「はい」
「お前が謝るのか?」
「いえ、それでも俺の気が治らないです」
「……お前も存外気に入ってるわけだ」
喉を転がす声に読み取られたと思った、隠してもいないが。
この顔は手に入れる情報のために、隠すのに都合が良いだけのもの。
笑い混じりの氷怜の言葉にいつもの笑顔で顔を上げた赤羽が、笑みを深くした。
「もう掴んでるんだろ」
「はい、それが俺の仕事ですから」
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