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night!
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しおりを挟む「うーーー!気持ちーーーー!!」
なんにせよマッサージは大事だ。まずはイノさんからマッサージ。毎日お酒を飲む人は浮腫むよね。といっても顔超小さいし素晴らしい張り。
むくみがたまりやすいところからデコルテに全て流して行く。顔の調子悪いって思った日は特にやってほしいね。
「唯お前すげえ!プロかよ!」
「まだマッサージでメイクすらしてませんが」
「いやもうすでに血色良くなったし目が軽いわ」
イノさんの話し方が大分フランクになってきた。お客様の前はまた違った一面が見れるんだろうけど、鏡の前で顔をペタペタするイノさん可愛い。自然体なこの感じで弟みたいとお客様に可愛がられるのだろう。
「あと、指とかもマッサージしたほうがいいですよ。さらにいうなら肩。指って肩のコリとか取ると楽になるんですよ……ホストの皆さんって指先きっと大事ですよね?きっとお客様の中には顔を見て話す人ばかりじゃないと思いますし」
「よく分かったね。お酒注ぐ時に見られるし中には手フェチも居るからね」
鹿野さんが感心しながら手を見せるポーズをする。綺麗な長い指、誰も文句は言わないだろう。その手を取ってマッサージの仕方を教えて行く。
「こうやって指さきからほぐしていっていた気持ちいいくらいの力で……」
「……うーん、本当に君ここで働けばいいのに」
「んん??」
鹿野さん、なぜそんな話になるの。マッサージしてるだけだ。首を傾げたおれは下準備が終わったイノさんにメイク開始だ。
「さてメイクですけど。どうなりたいですか?」
「俺が1番引き立つようにしてくれよ」
人生で一度は言ってみたいセリフにランクイン。
今控え室にはおれと鹿野さん、イノさん、胡蝶さんしかいない。
待たせるのも悪いし、みんなお腹が空いていそうだなと思っていたらサクラ姉さんがお礼にと奥の1番いい部屋でディナーをご馳走してくれると言うのだ。
だからみんなには先に行ってもらってゆっくりと過ごしてもらっている。
氷怜先輩には絶対に一人で部屋から出ない、イノさん達以外に話しかけないを約束させられた。おれそんなに迷子になりそうなのか?
ちなみに制服で来たおれたちはフロアに出るのに制服じゃダメだと今スーツを借りている。
結局着替えさせられたねと暮刃先輩はため息をついていたけどキチッとスーツやっぱりカッコいい。ちゃんと髪型も決めてみたよ。
そしてこれまた先輩達鬼のように似合うのだ。瑠衣先輩はいつも派手な色が多いからそのギャップで余計に白のスーツが際立つ。あの綺麗な美人顔がどこぞの貴公子か王子か物語からそのまま出てきたようだった。
暮刃先輩はグレーのスーツ、で大人っぽさと色気とただならぬ品格が数倍に膨れ上がった。慣れた様子でいつもの甘い笑顔。たぶん真顔だったけど優はときめいていたと判断しました。
そして何と言っても氷怜先輩の黒のスーツがもう、もう、もう、心の臓がどっきどっきだったね。最近おれ達と遊ぶ時はカラコンをしていなくて、それがまた美しくて、かっこよくてただならぬ獣の色気が……。
「おーい、唯手が止まってんぞ」
「はわ、すみません!えーーと、これ!」
イノさんの言葉に我に帰ったおれが掴んだのはファンデーション。色が白い彼にぴったりだ。
「しかしすげえ量だな……」
広げたメイク道具達に改めてイノさん達が驚いていた。
さっきのマッサージを真似しながら胡蝶さんがおれを見る。やはり同じように驚いているのかメイクさんにでもなるのかと聞いてきた。
「いえ趣味です!」
「趣味の域で良いのかってくらいだよ……」
鹿野さんに胸を張って答えると道具を覗き込んだイノさんがコンパクトを1つ取り上げた。
「うわ、これ最新作のファンデ」
「それ使います?でもそれ持ちはいいんですけどちょっと黄色味が強いから……」
ファンデに向いていたイノさんの頰を持って眼の色を確認する。色白に色素の薄い茶色の瞳にはもっとピンク味を含んだ方が良さそう。
「違うやつにしてもいいですか?」
「……おう」
ちょっとしわを寄せたイノさんににっこり笑って肌を確認。
全員の肌質に合ったもの選ぼう。肌の荒れも目立たない綺麗なお肌だけど、よりいつもより輝くように。それでもお酒飲んでこれだけ綺麗な肌。おそらく元々の努力が大きそう。
「綺麗な肌ですね」
「お前……」
イノさんが何かを言いかけたのでにっこりと笑えば鹿野さんが横から声をかけた。
「イノ、高校生にやられないでよ?」
「んなわけないだろ!だいたいこいつあの氷怜達のお気に入りだぞ」
そう言われてきょとんした。だってそのことは話してなかったから。
「そんなわかりやすいですか?」
「わかりやすいも何もこんなとこまで付いてくる理由が他にねぇもん。昔あいつらがホストで入った時それはもうひでえ態度だったぞ」
「え、まさか女性にですか?」
それはいくら何でもおれでも怒る。おれの質問にううん、と胡蝶さんが首を振った。
「いや、俺らを抜いて一夜で一位の伝説作ってたよ。代表には恩があるからってそういうところは氷怜達きっちりしてるから。ただ、熱狂的なファンがついてそれはもうお怒りだったね」
「あ、言ってましたねそれ……」
「だからもうここには来ないと思ってたよ。俺たちは向こうのクラブには遊びに行ったりしてたから仲良くなったけどね」
たしかにこの前のデートの時の氷怜先輩それはそれは大変だった事が伺える口ぶりだったしなぁ。
「それなのに来てる。しかも付き添いだっていうからびっくりしたぜ。だっていくら仲間思いとはいえ、次元が違う世界のやつがひょいひょいついてくるわけねぇだろ」
「しかも全然違うよ、君たちを見る目がさ」
さすが人間相手に商売をしている人は観察力が違うな。すぐに関係を見抜くなんて。
「奇跡みたいですよねぇ。あんなにすごい人たちがおれ達にと一緒に居てくれるの」
「そんなあっさり奇跡ですよねぇで済ませるか?」
「いやあ、いつのまにかそばに置いてもらってもので」
「置いてもらうっつうかあれは……」
「あれは?」
「独占欲丸出し」
鹿野さんがやれやれと話すがいまいちピンと来なかっ
た。いつもあの人達は余裕だ。
「そうですか?」
「そうですか?」
おれの言葉がそっくりそのまま聞き返されてしまう。しかもさんに綺麗に揃うものだから驚きだ。
いやだって、独占欲、独占欲かあ。
うーん……今日来てくれたのはものすごく心配してくれているのはわかる。
「心配症だなぁとは思います」
「やばいな唯……」
「え?!」
突然イノさんにこいつアホだなという顔で引かれてしまった。これはこれはと鹿野さんと胡蝶さんまで神妙な顔。それにしてもこんな話ししてるけど、驚いている様子がないのは面識があるのだろうか。
「それよりも皆さんは偏見とかはないんですか?あ、おれはもちろんこの通りですけど」
「お前、やばいって言われてるのにさらっと違う話持ってくるところちょっとなんかあれだな…………なんだっけ?偏見?ないない」
「この世界意外とどっちでもいける人多いし」
「現に俺もそうだしね」
「おお!」
さらっと胡蝶さんがカミングアウト。でも納得だ、男から見ても女の子から見ても大満足の色気だし。
「それにあいつらも散々手出してたしな男女関係なく」
「そうですよねぇ、あんなにかっこいいんですもん……」
うっとりし出したおれに3人が笑い出す。
「ここでその反応で良いのかよ!」
「むくれたりしないんだ?」
「ん?焼く場面ありました?」
さらに笑いが起こるが、おれは次の行程に移っていた。
バッチリ肌質確認したし全員同じようにマッサージも基礎化粧品も施した。おすすめのいくつかの候補も教えた。
「よし」
「ってもう聞いてねぇし唯……」
笑っているイノさんの顎を持って上を向いてもらう。ちょっと驚かせてしまった丸い目に可愛い印象の顔立ち。肌は綺麗だし、うっすらのパウダー程度でいいけれど。
「男の人は肌と、眉毛ですよねぇ」
「金髪だから眉もとりあえず金にしてんだけど」
「目の色にあわせてみました」
「え、今の一瞬で書いたのか?」
びっくりして鏡を見たイノさんがおおお!と声をあげた。我ながらうまくかけたと思う。
「そうかこれでも全然浮かないのか……」
「すごいなイノの可愛らしさ残して、凛々しさも出してる……」
「色金でも良いんですけど、元の自分の色に合わせた色を少しのせた方が馴染みます。人間味を出すか、お人形に寄せるかでも変わっては来ますけど。それにイノさんの骨格の作りやっぱり柔らかいからそれに沿わずにミリ単位眉山上げました」
すかざす鹿野さんが眼鏡をとって自分の目を指差した。あ、眼鏡とると涼しげな塩顔男子美形がさらに際立つ。イケメン一生侮れない。
そんな鹿野さんがおれの手を食い気味に掴んだ。
「ねえ、唯!おれ胡蝶の色気ある目に少しだけ寄せたいんだけどナチュラルにする方法ある?」
「もちろん!」
「俺は雰囲気たまに変えたいんだけどいまいち代わり映えしなくて悩みかな」
「それなら」
その悩み全て解決しよう。ペンシルを掴んだおれはきっと楽しげに笑っているはずだ。
「あらゆるシチュエーションに対して全てのやり方伝授するので、メモの用意は良いですか?」
おれの意気込みが凄すぎたのかと3人が最初のように座ったまま勢いのあるお辞儀をした。
「お願いします!」
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