sweet!!

仔犬

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date!!!

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「えーと……あれは言葉のあやで」



「ひさとがナンパ……ぶふっ」



薔薇の陰から瑠衣先輩と秋が出てきた。瑠衣先輩は笑いを堪え、きれていないが堪えて、秋はなんとも言えない顔をした。それでも彼はおれのフェミニストの流れを頭に入れているため、困った顔をしたカナコちゃんに手招きをする。


「怪我なければ先に外に出てましょう?唯斗はちょっと今あれなんで……」

「え、う、うん……本当にありがとう!」


少し遠くからカナコちゃんがお礼を言ってくれたのでぎこちなくも手を振り返した。
秋がカナコちゃんを通路に促すと、瑠衣先輩が頭の後ろで手を組み氷怜先輩に声をかける。


「ひーこの道を右右左右左左右ね~」




幻の連続コンボみたいな伝言を残して瑠衣先輩が迷路を進んで行く。やがてその足音も聞こえなくなった。

残されたおれは遂に対峙するのだ。
流れる無言に耐えかねてまず、おれから弁解とも釈明とも取れない話を出した。


「まずおれはナンパはしたことがないのですが……」

「……」

「えーと……」


氷怜先輩の無言に何を言えばいいのかわからず言葉に詰まった。おそらくナンパも何も、あれが煽り文句だなんて氷怜先輩は気付いている。つまり違う事で怒っているのだ。

「また助けてもらって、ごめんなさい」

「……」

こ、これも違うのか?そう言えばおれ人をこんな風に怒らせた事ないかもしれない。ましてや恋人が怒るという状況になった事がないのだ。

氷怜先輩がもう一度タバコを一息吸った。
何も言わないという事はおれの答えを待っていることになる。

冷静になれ高瀬唯斗、逆の立場になって考えるんだ。
じゃあ、もし氷怜先輩が危ないことにおれに何も言わずに突っ込んでいったら?氷怜先輩強いから多分心配ってそんなにないんだろうけど、めちゃくちゃ巨大な危ないところって分かってたのに、行ってしまっていたら…………。


「何も言わずに勝手に飛び出して……ごめんなさい」

「……ん、そうだな」


やっと反応があってなんだか思わず目が潤んだ。氷怜先輩がタバコをしまうとその腕がおれの頭の後ろを捉えそのまま抱きしめられる。


「お前が誰を守ろうと構わない、むしろ良いとこだよ本当に。俺が惚れてんだからそのままのお前が良い」

「はい……」

「だけどなお前を守んのは俺の役目だ」


低い声が響く、優しい声だ。
全部を受け止めてくれる。


「守られる事を体で覚えろ」

「……っ」


言い方がズルすぎて思わず顔が熱くなる。恥ずかしくて声が出せず、代わりに静かに頷いた。
おれの反応に納得したのか頭に置かれた手がポンポンと二回叩かれると、一気に雰囲気を変えて話す。

とは言えまだ話は続いてる。責めるフリをしながら氷怜先輩が歩き出した。

「まあ、こうでも言わないとまたあんな近くにいたのに助けも求めずスマホ忘れてどっか行きそうだしな」

「ご、ごめんなさいぃぃ」


土下座の勢いで謝ればフッといつものニヒルな笑み。サングラスをずらして、氷怜先輩が意地悪な顔をした。



「なんなら本当に首輪着けても良いけど」

「あ、着けますよ。スマホも首にかけます!」



手を上げて宣誓したものの、氷怜先輩はなんとも言えない顔をした。


「唯斗……お前のそういうところ嫌いじゃねぇけどな……」


希望の反応と違ったらしい。
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