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fight!!
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しおりを挟む「倒せた……」
桃花が信じられないと目を見開く。それでも、そんな彼がたった一瞬を見逃さず先輩の態勢を崩してくれなければ無理だった、この作戦は。さすが桃花。
「何してるの瑠衣……いくらなんでも油断しすぎ」
「えーーだってーー!」
秋に乗られたまま手足を全部投げ出して瑠衣先輩は拗ねたように頰を膨らませた。暮刃先輩はやれやれと手を広げる。
「てゆかオレ押し倒されたの初めてなんだケド……アッキーのエッチー!」
「ええ……」
ものすごいムクれている。とりあえず手短かな目に付く事で当たり始め、秋は苦笑いですみませんと謝った。桃花が秋に駆け寄ると目を輝かせる。
「秋裕さん何かやってたんですか……?」
「ダンスしてるんでバク転は割と余裕です。いきなりやられるとは思わないかなって……」
「お見事です」
第1戦の結果におれはガッツポーズ。
ありがとう、さすが秋。
おれの考えに1番理想の形で応えてくれた。喧嘩に慣れていないおれたちなんて先輩たちにとっては赤子も同然なのでもちろん本気なんて出してこない、なので突飛なことして隙を作ろうと思ったのだ。
そんなおれに余裕の笑みが2人分。だよね、そうですよね。子供騙しは一回切り。
「やるじゃねぇか、秋」
「次はどんな一発芸を見せてくれるの?」
もう全部バレている。
とりあえず笑ってごまかして優を見るも同じ顔だ。2人揃って苦笑い。
「うーん、こっからが問題……」
「人数的には有利なんだけどなぁ」
先輩達の後ろで秋が立ち上がり瑠衣先輩の手を引っ張る。やっと立ち上がったと思えば秋にぶら下がりながらものすごく不満げだ。
「瑠衣先輩自分で歩いてください!」
「ええ~もう何もやる気でない」
「そ、そんなに嫌だったんすか……」
なんだか申し訳ない事してしまったと思ったのか秋が黙り込む。その背中にぶら下がる瑠衣先輩がむくれたままこう言った。
「……オレもこっちに着く」
「え?」
「豹原さん、流石にそれは……」
おれたちの元に来た桃花の言う通り瑠衣先輩がこちらに着くのは大いにあり難いが、ハンデの意味がなくなってしまう。
「オレは2人に手を出さないしサポートするダケ。ひさとー、くれはー、いいでしょー?」
「好きにしなよ」
暮刃先輩がそれでも余裕の笑みで返してくる。優雅さに磨きがかかってきてませんか。
暮刃先輩の許しが出ても、瑠衣先輩はまだ不満そうだ。なんだか相当ヘソを曲げている。その矛先はまさかの人物に向いた。
「てゆーか、オレ赤羽っちも倒したいんだけどー?」
その名前におれは彼をあの部屋より見ていないことに気がつく。他の人と交えている様子もなく本当に誰も目に触れていない。
だんだんと意識を取り戻してきたチームの人たちもなんだなんだと騒めき出す。式がやっと復活したのか小さくあ、と呟いた。
その目線の先は階段の上、暗闇から姿を現した彼の笑顔はいつも通りの爽やかだった。
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