sweet!!

仔犬

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territory!!

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まさかその近くの部屋で未だに恋バナが展開されているとは誰も思わないだろう。




「はぁ、いっぱい食べた。幸せ~」

すっかりおれはいつものペースで、食事を美味しく頂いた。とは言え元々6人分以上はあったのでまだ料理は残っている。

秋もお腹をポンポンして満腹サインだ。

「先輩達ってあんまり食べないのかな」

たしかに先輩達はドリンクばかり飲んでいた。ここではハッピードリンクと呼ぼう。しゅわしゅわの黄金色。

「これ飲んだことある……?」

「不味いよ」

優が答えた。

「え、飲も」

とは言え不味いと思うのはわかっているので一口だけコップに入れて飲んでみる。

「ぶええまず」

「唯!顔よ!ぶっさ!」


ひっど。
秋が大笑いしてソファの上でお腹を抱えていた。
隙あり!とお腹をくすぐると悲鳴のような笑い声が出る。このソファ3人でもゆったりしているので、優が少し離れて観戦していた。


「ねえ、先輩は唯のどこが好きだって?」

コップを片手に首を傾げる。優の分析の始まりだ。

「ええ、それ聞く?」

「それ気になる!」

くすぐりから復活した秋も興味津々だ。
少し声を潜めて教えてあげた。


「笑顔に惚れたって」

「あ~なるほどねぇ」

「いいところ見てくれたね先輩」


わかっちゃうんか。
ああでも、秋や優に置き換えてみれば分かりやすい。2人の笑顔まじで好きなんだよなぁ。

「それさらっと教えてくれちゃう先輩もやっぱカッケェ……」

「照れとかないからね、あの素晴らしさ!」

「はいはい、かっこいいねぇ」

両手を広げて表現したのにやっぱり優はクールな返し。靴を脱ぎ体育座りでコーラを飲んでいる。

「てゆかさ、2人はどうなの?仲良さげだったけど」

「俺は……めっちゃ喋りやす!めっちゃイケメン!!とは思ってる」

「そうだね、そんな感じ」

なんだか2人とも曖昧な顔。心地よさは感じていたがおれみたいにビビビ!とはこなかった訳か。


「まだ、芸能人と話してる感じだね。付かず離れずのふわふわ」

「ふーん、そっかあ」


秋が肘掛の部分に背を向けたのでおれの方に足がきた。伸ばしたいのかと思い秋の足の間に移動。みんな靴も脱いでリラックスモード。

「また付き合いがあればなんか変わるのかなぁ」

「んーでも唯が獅之宮先輩と付き合ってる訳だし、接点は増えそうだね」


なんだかさらっと先輩達をすすめていたが2人は同性に偏見はないのだろうか。


「というか、2人は男の人でも大丈夫なの?そもそも」


これだけ一緒にいてもそんな話したことがなかった。おれの周りは女の子の方が多かった、たぶん。2人が付き合った事があるのも女の子だけだ。
もちろんおれも。獅之宮先輩が規格外だった。

「女の子好きだよ。ただ唯のせいで男女の分かれ目がよくわかんなくなったというか……」

「はい!ピピー!そこ!なんでかんでもおれのせいにしない!」


優が思い出したかのようにおれを見ながら言うのでエアイエローカードを出した。笛の代わりに口笛。

「いやぁ、でも唯が居なかったらそう思わなかったもん。だって、初めて見たとき普通に唯可愛い女の子だなぁって思ったもん」

「身長も今より低いしね、ちょうど良い女子っぽさあったじゃん。女の子とも仲良いし、男子はちょっとにやにやしてたし」

「え、にやにやしてたの?気付かなかった……ああでも、あの時おれの中でヘアゴムが流行ってたから今ぐらい長かったし弄ってたね」


懐かしいなぁ。身長伸びるのが遅くて、女の子の中でも低い方だったし小物も可愛いのがすきだったから女の子に間違われること多かったなぁ。

「まあ、中身知ってるから今は男だなあとは思うけど、男が唯好きになっちゃうとこと見てるとさ。ああ、こういうのもあるんだなあみたいな」

「2人とも寛大になったよね……」

「おかげさまで」

「はい!そこレッドカード!」


2人も元々話したらすんごいノリがいいからこうなっただけで、全部おれのせいではないはず!はず!


その時またドアがノックされた。先ほどよりも控えめに数回。ドアをおれが開ける前にドアの方から開いたので思わず数歩下がる。

「氷怜くん?ネロのことなんだけど……あれ?」

超絶美人がそこに居た。
片方だけ耳にかけられた長い黒髪に大ぶりなピアス。タイトな黒のワンピースにピンヒール。大きな目にきれいな口元全てが完璧だ。

「あらあら、ごめんなさい。お邪魔しちゃったかしら、いつもあの子達ここに居るから」

まさかあの子達とは先輩のことだろうか。
ネロと言っていたしチームの人なのかもしれない。

「いえ、お邪魔させてもらってるのこっちなので。俺高瀬唯斗って言います。今日は先輩たちに色々助けてもらったあげくディナーまでご馳走になっているところで……」

「まあ、ご丁寧にどうも。私はサクラ。サクラ姉さんって呼ばれてるからそっちがいいかな」

サクラ姉さんと言うだけあり、彼女は大人の魅力を全て詰め込んだような人だった。歳は20代半ばだろうか。

「とつぜん美人さんが入ってきてびっくりしちゃいました。獅之宮先輩たちなら、話があるみたいで席はずしてますよ」

おれの言葉に喜ぶどころか関心したようで、手を胸の前で合わせた。

「あなた若いのに人を褒めるのが上手ね。先輩って事は君は後輩なのかな。でもそう、話し合いじゃあ奥の部屋かしら……まあ、後でもいいかな」

通路の奥を見た彼女は一瞬だけ迷うがすぐに諦めたようだ。おれはドアをさらに広げて彼女の通り道を作った。

「良ければここで待ちますか?待ってるよう言われてるので」

「やだ、あの子達食事の途中で行ったの?無粋ね」

テーブルの惨状に彼女は失礼しちゃうと、拗ねたフリした。コロコロ変わる表情が大人の女性の中でも可愛らしい。

「あ、おれの友達もいますけど」

2人はすでに靴を履いて腰を上げていた。それぞれが自己紹介を済ますと、彼女はニッコリ笑う。

「よろしくね、サクラよ。少しの間お邪魔させてもらうわ」
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