17 / 379
territory!
5
しおりを挟むジーンズのパンツに上半身は何も纏わず、両手はポッケに引っ掛けて力を抜いて立つシーン。長めの金の髪から覗く目は青みがかったグリーンだ。唯一腕につけられた時計の宣伝ページである。
舌を出した姿が遊び心も醸し出す。優も秋も目が離せないのか同時に同じことをつぶやいた。
「綺麗……」
「そうなんだよ、豹原先輩ってやっぱり1番美人系なんだよな」
「実際はこんなだけどな」
「ひど~」
けらけら笑う豹原先輩はモデルと気付かれた事には大して気にも止めていないようだった。
「これウィッグですか?」
「んーん、色抜いたの。目はホンモノね」
おれたちは多分一斉に豹原先輩の目を見たはずだ。
今の目は黒。
「それがカラコンなのかーー」
脱帽。先輩達のポテンシャルにおれはもうお手上げ。わざわざ黒のカラコンでこんな綺麗なの隠しちゃうなんて。
「いいなぁ、綺麗な目……」
「ひーだってそれとったらヘーゼル系にグリーンが入った感じじゃないー?」
「まあ、そうだな」
ドリンク片手に少し顔を傾けた獅之宮先輩は自分の目を思い出しているようだ。それでも今の赤のカラコンが似合ってしまうのはやはり造形からして整いすぎているのだ。
天音蛇先輩は元の目の色だ。グレー系が素晴らしく綺麗。髪の毛は染めてるだろうけど、黒髪の想像はつかない。
「俺達みんな本当は色素薄いよね。だいたい氷怜は髪の毛も黒じゃないし」
「え!」
見たい、地毛が見たい。おれの心情を読み取ったのか獅之宮先輩が困ったように笑う。
「今度見せてやる」
それを見ていた豹原先輩が面白そうに声を上げた。
「ひー散々日本人じゃないのかって聞かれるの嫌がってたからそれしてんのにさ、唯ちんには甘いネー」
「ええ!?無理して染めなくても」
「いや、お前が見たいなら染める」
思わずおれは優を見るも、こっちじゃないでしょと言われて無理矢理顔を戻される。今ケーキ食べてんだからと付け加えられた。そう言う問題?
「えっと、じゃあ、タイミングが合ったらがいいです!そしたら絶対その時呼んでください!」
「わかった」
王者の雰囲気から一転、なんて優しい爽やかなないい笑顔だろう。心臓がぎゅっとなった。
「えええ、ずるくない?先輩達みんなずるくない?」
「先輩達が死ぬほどかっこいいのなんて前から知ってたじゃん」
項垂れたおれに秋も優も、はいはいカッコいいね優しいね素晴らしいねとドライだ。さすがにおれがうるさいのに慣れている。
「みんなで雑誌見るの?ファッションが好きなのかな」
にこにことおれたちのやりとりを見ながら雑誌を指差して天音蛇先輩が聞いてきた。
「優は服が好きで買ってるんですけど、秋も服好きだから一緒に見てて、おれは服も好きですけど特に美容がすごい好きで」
「美容?」
「ヘアケア、メイク、ボディケア、ダイエットとかとにかく、美容が楽しいんですよね」
そうなのだ、それは女の子の物だろ、とよく言われるが保湿は男子だって必要だ。メイクだって最近ではしている男の子も増えてきた。いろんなものをたくさん試して、いいものを勧めたりすると女の子も喜ぶ。
デザートにティラミスを選んだ秋が頰をほころばせながら補足を入れた。
「俺たちも唯が勧めてくれたシャンプーとか、ボディクリームとか使ってますよ。先輩達も欲しいのあったら唯に聞くときっとあの青いロボットのように教えてくれます」
「言い方よ……」
いや、確かにおれの今日持っているリュックにもいろんなものが入っている。保湿系から香水。口紅とかもある。女の子にいつでも紹介出来るように。見た目可愛いのも最高だし、男だってやったほうがいい、少しだけつけてナチュラルに血色アップ。
「ちなみに香水とかも好きなので、先輩達の香水全部当てられます……」
「唯ちん……犬だったか……」
ぽかんとした顔なのにそれでも豹原先輩は的外れな事を言って笑わせてくる。そんなこと言っても先輩が本当は頭いいの知ってますからね。試験トップスリーで貼り出されるの先輩達ですからね。
「すげえな唯斗、下にいるやつら多分超助かるぜ」
「なんでも聞いてください」
自信満々で胸を叩いた。
おれが褒められてにやにしていると、またもやドアがノックされる。今度は赤羽さんではなく見たこともない人だった。少し早口で男の人が獅之宮先輩に告げるとすぐに振り返った。
「瑠衣、暮刃、少し顔出せ」
「えーー!」
あんなに綺麗な顔を膨らませてかなりの不満顔だ。それでも文句をいいながら豹原先輩は立ち上がる。天音蛇先輩もやれやれとゆっくり腰を上げた。
ドアの横で獅之宮先輩がおれ達にお留守番する子供のように言い聞かせる。
「少し良い子にしてろよ。部屋にあるものはなんでも使っていいからな。赤羽を……いやあいつも居た方がいいな……」
「何処よりも良い子にするのでお構いなく」
「そうか」
少し甘く笑われては照れてしまうではないか。隠すように手をブンブン振って先輩を見送る。ドアが閉められて一気に部屋が静かになった。
46
お気に入りに追加
1,388
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる