sweet!!

仔犬

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territory!

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ジーンズのパンツに上半身は何も纏わず、両手はポッケに引っ掛けて力を抜いて立つシーン。長めの金の髪から覗く目は青みがかったグリーンだ。唯一腕につけられた時計の宣伝ページである。

舌を出した姿が遊び心も醸し出す。優も秋も目が離せないのか同時に同じことをつぶやいた。

「綺麗……」

「そうなんだよ、豹原先輩ってやっぱり1番美人系なんだよな」

「実際はこんなだけどな」

「ひど~」

けらけら笑う豹原先輩はモデルと気付かれた事には大して気にも止めていないようだった。

「これウィッグですか?」

「んーん、色抜いたの。目はホンモノね」

おれたちは多分一斉に豹原先輩の目を見たはずだ。
今の目は黒。

「それがカラコンなのかーー」

脱帽。先輩達のポテンシャルにおれはもうお手上げ。わざわざ黒のカラコンでこんな綺麗なの隠しちゃうなんて。

「いいなぁ、綺麗な目……」

「ひーだってそれとったらヘーゼル系にグリーンが入った感じじゃないー?」

「まあ、そうだな」


ドリンク片手に少し顔を傾けた獅之宮先輩は自分の目を思い出しているようだ。それでも今の赤のカラコンが似合ってしまうのはやはり造形からして整いすぎているのだ。

天音蛇先輩は元の目の色だ。グレー系が素晴らしく綺麗。髪の毛は染めてるだろうけど、黒髪の想像はつかない。

「俺達みんな本当は色素薄いよね。だいたい氷怜は髪の毛も黒じゃないし」

「え!」

見たい、地毛が見たい。おれの心情を読み取ったのか獅之宮先輩が困ったように笑う。

「今度見せてやる」

それを見ていた豹原先輩が面白そうに声を上げた。

「ひー散々日本人じゃないのかって聞かれるの嫌がってたからそれしてんのにさ、唯ちんには甘いネー」

「ええ!?無理して染めなくても」

「いや、お前が見たいなら染める」


思わずおれは優を見るも、こっちじゃないでしょと言われて無理矢理顔を戻される。今ケーキ食べてんだからと付け加えられた。そう言う問題?

「えっと、じゃあ、タイミングが合ったらがいいです!そしたら絶対その時呼んでください!」

「わかった」

王者の雰囲気から一転、なんて優しい爽やかなないい笑顔だろう。心臓がぎゅっとなった。

「えええ、ずるくない?先輩達みんなずるくない?」

「先輩達が死ぬほどかっこいいのなんて前から知ってたじゃん」

項垂れたおれに秋も優も、はいはいカッコいいね優しいね素晴らしいねとドライだ。さすがにおれがうるさいのに慣れている。

「みんなで雑誌見るの?ファッションが好きなのかな」

にこにことおれたちのやりとりを見ながら雑誌を指差して天音蛇先輩が聞いてきた。

「優は服が好きで買ってるんですけど、秋も服好きだから一緒に見てて、おれは服も好きですけど特に美容がすごい好きで」

「美容?」

「ヘアケア、メイク、ボディケア、ダイエットとかとにかく、美容が楽しいんですよね」


そうなのだ、それは女の子の物だろ、とよく言われるが保湿は男子だって必要だ。メイクだって最近ではしている男の子も増えてきた。いろんなものをたくさん試して、いいものを勧めたりすると女の子も喜ぶ。

デザートにティラミスを選んだ秋が頰をほころばせながら補足を入れた。

「俺たちも唯が勧めてくれたシャンプーとか、ボディクリームとか使ってますよ。先輩達も欲しいのあったら唯に聞くときっとあの青いロボットのように教えてくれます」

「言い方よ……」

いや、確かにおれの今日持っているリュックにもいろんなものが入っている。保湿系から香水。口紅とかもある。女の子にいつでも紹介出来るように。見た目可愛いのも最高だし、男だってやったほうがいい、少しだけつけてナチュラルに血色アップ。



「ちなみに香水とかも好きなので、先輩達の香水全部当てられます……」

「唯ちん……犬だったか……」


ぽかんとした顔なのにそれでも豹原先輩は的外れな事を言って笑わせてくる。そんなこと言っても先輩が本当は頭いいの知ってますからね。試験トップスリーで貼り出されるの先輩達ですからね。

「すげえな唯斗、下にいるやつら多分超助かるぜ」

「なんでも聞いてください」

自信満々で胸を叩いた。
おれが褒められてにやにしていると、またもやドアがノックされる。今度は赤羽さんではなく見たこともない人だった。少し早口で男の人が獅之宮先輩に告げるとすぐに振り返った。


「瑠衣、暮刃、少し顔出せ」

「えーー!」


あんなに綺麗な顔を膨らませてかなりの不満顔だ。それでも文句をいいながら豹原先輩は立ち上がる。天音蛇先輩もやれやれとゆっくり腰を上げた。

ドアの横で獅之宮先輩がおれ達にお留守番する子供のように言い聞かせる。

「少し良い子にしてろよ。部屋にあるものはなんでも使っていいからな。赤羽を……いやあいつも居た方がいいな……」

「何処よりも良い子にするのでお構いなく」

「そうか」

少し甘く笑われては照れてしまうではないか。隠すように手をブンブン振って先輩を見送る。ドアが閉められて一気に部屋が静かになった。
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