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景色はだんだんと緑が多くなってきた。とは言っても住宅が少ない訳じゃない。ここは別荘が多いのだ。土地一つ一つが大きくて家もそれに見合ったような大きさ、しかもいい家ばかり。
そこで一際異彩を放つ古い洋館がカオの実家だった。
これならネットに住所が残っても仕方がない。この家だけ別次元にでかいし、デザインだって普通の家とはかけ離れている。父親が画家と言うがその関係もあるのだろうか。ある意味カオの家も変わっていたし。
「この辺じゃ今や幽霊屋敷って呼ばれてるらしいぜ」
さすがお父さんと言ったところか、近くでサッカーをしていた見知らぬ男の子に声をかけるとあーだーこーだ盛り上がりながら誠さんが情報を仕入れてきた。彼は子供に好かれそうだ。
大きな洋館は所々ヒビが入っていて時の流れに逆らわず朽ちていくのを待つように立っている。この建物の今の所有者はカオなのだろうか。
「幽霊かあ……誠さんがいてくれて良かったわー」
「まさか幽霊が怖いとか言うなよ」
「いやー、うーん、大丈夫っしょ」
「にーちゃんユーレイ怖いの?ダッサー」
子供は容赦が無い。
そもそも入れるのか。そこが問題だ。
「君達ここに入った事ある?」
「ある訳無いじゃん、母さんがイワクツキ?だから近寄るなって。だいたいカギもかかってるし入れないよー」
まだ小さいのに曰く付きなんて言葉を知ってるのか。
もう興味もないのか持っていたサッカーボールに意識のほとんどがいっている。俺達が家の周りを一周する頃には子供達は居なくなっていた。
「……うーん、家の周りを回っても木があるだけ。窓も開いてないしなあ」
「まあ、そうだな」
誠さんもしょうがないと言った風に腕を組んで立ち止まる。
玄関まで戻ってきたが、このまま帰るのもどうなのか。
「なんかある気がしたんだけどなぁ……ドア蹴ったら開いたりしない?」
「物騒だなおい」
「いやだってさあ」
玄関の大きなドアにもたれ掛かったその時だ。
バキっと音がして俺はそのまま後ろに倒れた。
「え」
ガン!と大きな音がして身体が地面に打ち付けられた。びっくりしてそのまま固まる。
「おい!大丈夫か?!」
「へ、え?あー大丈夫。いてて、ちょっと頭は打ったけど」
完全に体預けてたからたんこぶくらいはできた気がする。
頭をさすりながら立ち上がると部屋の中は思ったほど荒れてはいなかった。暗い大きなリビングはやっぱり和風とは程遠い洋館そのものだった。アンティークの家具に雑貨。小ぶりで金色のシャンデリア。
「すんごい家だなぁ」
「……ドアのラッチでも弱くなってたのか?また随分とタイミングいいな」
「まあでもここまで来たら、行くしかない、よなぁ」
不法侵入バンザイ。
友達の家だからと言っても誰も許してくれないだろう。
「誠さん、誰かに見つかったらあれだし車にいても」
「怖くて引っ付いてるやつがよく言う」
すみませんね、ホラー映画1人で見れないタイプで。
結局誠さんは付いて来てくれて、まずはリビングを探索。パッと目につくものと言えば写真だ。リビングのソファに対面してテレビがある。その横の赤茶の棚にいくつかの写真が置かれていた。
まず手に取ったのは一人で座っている綺麗な男の子写真。
「……カオだ」
その表情は俺人格のものだ。
まさか、家でもずっとこの大人びた性格で過ごしていたのだろうか、子供として無邪気に遊べる時間はあったのだろうか。棚の上には家族らしき写真もある。おそらくお父さんとお母さんなのだろう。色褪せてはいるがカオの綺麗な顔が生まれた理由がよくわかるほど美人の両親だった。
「性格キツそうだな親……家族写真でこんなに笑わないなんてあるか?」
「え?」
確かに誰も笑っていない。食事中もピクニックらしき写真も笑顔なのはカオだけだ。
「お、俺のハートが痛くなるからそんなこと言わないで誠さん……」
「なんで泣きそうな顔してんだよ!まあ、ほら、写真が苦手ななだけかもしれねぇだろ」
「そう、だよな!だって撮るし、飾ってるしな!!」
泣きそうなのは実は部屋が怖いからってものあるんだけどそれは言わないでおこう。でもそうだ、撮るし飾るんだ。あれ、だけど誰が撮ってるんだ。
「誠さんカオの家族って両親だけ?」
「そのはずだけどな……ん、確かにこれ、誰が撮ってんだ」
そこで一際異彩を放つ古い洋館がカオの実家だった。
これならネットに住所が残っても仕方がない。この家だけ別次元にでかいし、デザインだって普通の家とはかけ離れている。父親が画家と言うがその関係もあるのだろうか。ある意味カオの家も変わっていたし。
「この辺じゃ今や幽霊屋敷って呼ばれてるらしいぜ」
さすがお父さんと言ったところか、近くでサッカーをしていた見知らぬ男の子に声をかけるとあーだーこーだ盛り上がりながら誠さんが情報を仕入れてきた。彼は子供に好かれそうだ。
大きな洋館は所々ヒビが入っていて時の流れに逆らわず朽ちていくのを待つように立っている。この建物の今の所有者はカオなのだろうか。
「幽霊かあ……誠さんがいてくれて良かったわー」
「まさか幽霊が怖いとか言うなよ」
「いやー、うーん、大丈夫っしょ」
「にーちゃんユーレイ怖いの?ダッサー」
子供は容赦が無い。
そもそも入れるのか。そこが問題だ。
「君達ここに入った事ある?」
「ある訳無いじゃん、母さんがイワクツキ?だから近寄るなって。だいたいカギもかかってるし入れないよー」
まだ小さいのに曰く付きなんて言葉を知ってるのか。
もう興味もないのか持っていたサッカーボールに意識のほとんどがいっている。俺達が家の周りを一周する頃には子供達は居なくなっていた。
「……うーん、家の周りを回っても木があるだけ。窓も開いてないしなあ」
「まあ、そうだな」
誠さんもしょうがないと言った風に腕を組んで立ち止まる。
玄関まで戻ってきたが、このまま帰るのもどうなのか。
「なんかある気がしたんだけどなぁ……ドア蹴ったら開いたりしない?」
「物騒だなおい」
「いやだってさあ」
玄関の大きなドアにもたれ掛かったその時だ。
バキっと音がして俺はそのまま後ろに倒れた。
「え」
ガン!と大きな音がして身体が地面に打ち付けられた。びっくりしてそのまま固まる。
「おい!大丈夫か?!」
「へ、え?あー大丈夫。いてて、ちょっと頭は打ったけど」
完全に体預けてたからたんこぶくらいはできた気がする。
頭をさすりながら立ち上がると部屋の中は思ったほど荒れてはいなかった。暗い大きなリビングはやっぱり和風とは程遠い洋館そのものだった。アンティークの家具に雑貨。小ぶりで金色のシャンデリア。
「すんごい家だなぁ」
「……ドアのラッチでも弱くなってたのか?また随分とタイミングいいな」
「まあでもここまで来たら、行くしかない、よなぁ」
不法侵入バンザイ。
友達の家だからと言っても誰も許してくれないだろう。
「誠さん、誰かに見つかったらあれだし車にいても」
「怖くて引っ付いてるやつがよく言う」
すみませんね、ホラー映画1人で見れないタイプで。
結局誠さんは付いて来てくれて、まずはリビングを探索。パッと目につくものと言えば写真だ。リビングのソファに対面してテレビがある。その横の赤茶の棚にいくつかの写真が置かれていた。
まず手に取ったのは一人で座っている綺麗な男の子写真。
「……カオだ」
その表情は俺人格のものだ。
まさか、家でもずっとこの大人びた性格で過ごしていたのだろうか、子供として無邪気に遊べる時間はあったのだろうか。棚の上には家族らしき写真もある。おそらくお父さんとお母さんなのだろう。色褪せてはいるがカオの綺麗な顔が生まれた理由がよくわかるほど美人の両親だった。
「性格キツそうだな親……家族写真でこんなに笑わないなんてあるか?」
「え?」
確かに誰も笑っていない。食事中もピクニックらしき写真も笑顔なのはカオだけだ。
「お、俺のハートが痛くなるからそんなこと言わないで誠さん……」
「なんで泣きそうな顔してんだよ!まあ、ほら、写真が苦手ななだけかもしれねぇだろ」
「そう、だよな!だって撮るし、飾ってるしな!!」
泣きそうなのは実は部屋が怖いからってものあるんだけどそれは言わないでおこう。でもそうだ、撮るし飾るんだ。あれ、だけど誰が撮ってるんだ。
「誠さんカオの家族って両親だけ?」
「そのはずだけどな……ん、確かにこれ、誰が撮ってんだ」
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