君は殺人鬼

仔犬

文字の大きさ
上 下
18 / 19

18

しおりを挟む
誠さんの運転は丁寧でドライブスルーでお昼も買って車内は快適だ。黒の乗用車は4人乗りで新しく見えた。もしかしたら家族のために買ったものかも。

買ったハンバーガーの包みを剥いて食べやすくして誠さんに渡す。いい匂いだ。

「誠さんは1人になってから長いの?あ、あんまり聞かない方が良い?」

「いや。3年ってとこだな」

「ちなみに理由は……」

「仕事人間過ぎるってよ」

「ええ?」


こんなに世話焼きなのに?
ミラー越しに俺の腑に落ちない顔が見えたのか、自分でも思い当たるのかあーとか言いながら話を続ける誠さん。

「いろんな事に足突っ込みやすい上にハマったらとことんやっちまう性格なんだよ。今は仕事変えてからだいぶ落ち着いたけどな、週一で子供にも会ってるし元嫁も今の方が良いってよ」

「じゃあ割と仲良しなんだ!」

「まあ昔よりは良いってくらいだけどな」


家族の形ってそれぞれだ。
じゃあカオはどんな家族だったんだろうか。本当にカオが言ったようにいい人達だったのだろうか、それならどうして殺したのか。何もわからない。


高速に乗れば空が晴れていて今日は一日天気が良さそうだ。こんな日に友人不在で友人の実家に向かっているのが少し不思議。この車にカオも乗っているなら旅行みたいで楽しいのに。

「お前の家族は?」

眩しいのかサングラスをかけた誠さんがミラー越しに問いかける。
窓に向けていた視線を戻すと目があった。


「俺は普通かなあたまーに実家には帰るくらいだけど、仲は普通にいいかな。まあ、俺がマイペースだからいろいろ心配はかけてるかも」

「なんだマイペースの自覚があんのか」

「そうよ!しかもそのマイペースさは気に入ってる」

「お前が図太い理由がよくわかったよ……」


苦笑気味の誠さん。
俺はそう言いながらまたカオの事を考える。多分生まれも育ちも俺とカオは全く違う。だから俺の判断だけで何かを決めるのは違うのだ。だからこそ会って話がしたい。
それに全く違う生まれでもお互いがお互いを気に入ったのは間違いないのだから、ここで諦めるなんてもったいないだろう。


「……ここまで世話焼いてる俺が言うのもなんだが、あまりのめり込むなよ」

「え?」


不意にかけられた言葉に驚いて顔を上げる。自分がいつのまにか俯いていたことにも驚いた。

「何?」

「いや、今のお前見てると自分見てる気持ちになるからな」

「なんだじゃあ俺たち似た者同士?」

「茶化すなよ。お前心折れた時の反動がでかいタイプじゃねえか?」

「反動……」


正直これまで生きてきて何でも割とうまくいったから、何かにハマるとか一心不乱でやる自分はいなかった。人間関係でも去る者追わず来るもの拒まずでこんな風に追いかけたこともない。

ただし決めたらやる、そこだけは強いかも。

「俺、やばそう?」

「今はまだガキの意地」

「んじゃとりあえず大丈夫ってこと?……そうだなあ、もし本当にやばそうなら一応止めてよ誠さん、俺の事さ」

「一応だあ?」

「うん、それでもやるって言ってたら俺の好きにさせてほしい」

「……おい、おい。こんな時に物騒な事約束させんなよ」

「いやあ、どうせ突っ走るような気がしたから。誠さん優しいし俺に何かあったら落ち込むでしょ。だから先に言っとく。全部俺の意思だって」


誠さん巻き込んじゃったなんてのは当然わかっているから、最後は俺で何とかしないと。でもそんなに不安があるわけじゃない。逃げるならそれでいい、追うだけだから。


なんでこんなにカオを掴めるような気がするのか俺にもわからなかった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

異世界に来たのでお兄ちゃんは働き過ぎな宰相様を癒したいと思います

猫屋町
BL
仕事中毒な宰相様×世話好きなお兄ちゃん 弟妹を育てた桜川律は、作り過ぎたマフィンとともに異世界へトリップ。 呆然とする律を拾ってくれたのは、白皙の眉間に皺を寄せ、蒼い瞳の下に隈をつくった麗しくも働き過ぎな宰相 ディーンハルト・シュタイナーだった。 ※第2章、9月下旬頃より開始予定

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

処理中です...