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誠さんの運転は丁寧でドライブスルーでお昼も買って車内は快適だ。黒の乗用車は4人乗りで新しく見えた。もしかしたら家族のために買ったものかも。
買ったハンバーガーの包みを剥いて食べやすくして誠さんに渡す。いい匂いだ。
「誠さんは1人になってから長いの?あ、あんまり聞かない方が良い?」
「いや。3年ってとこだな」
「ちなみに理由は……」
「仕事人間過ぎるってよ」
「ええ?」
こんなに世話焼きなのに?
ミラー越しに俺の腑に落ちない顔が見えたのか、自分でも思い当たるのかあーとか言いながら話を続ける誠さん。
「いろんな事に足突っ込みやすい上にハマったらとことんやっちまう性格なんだよ。今は仕事変えてからだいぶ落ち着いたけどな、週一で子供にも会ってるし元嫁も今の方が良いってよ」
「じゃあ割と仲良しなんだ!」
「まあ昔よりは良いってくらいだけどな」
家族の形ってそれぞれだ。
じゃあカオはどんな家族だったんだろうか。本当にカオが言ったようにいい人達だったのだろうか、それならどうして殺したのか。何もわからない。
高速に乗れば空が晴れていて今日は一日天気が良さそうだ。こんな日に友人不在で友人の実家に向かっているのが少し不思議。この車にカオも乗っているなら旅行みたいで楽しいのに。
「お前の家族は?」
眩しいのかサングラスをかけた誠さんがミラー越しに問いかける。
窓に向けていた視線を戻すと目があった。
「俺は普通かなあたまーに実家には帰るくらいだけど、仲は普通にいいかな。まあ、俺がマイペースだからいろいろ心配はかけてるかも」
「なんだマイペースの自覚があんのか」
「そうよ!しかもそのマイペースさは気に入ってる」
「お前が図太い理由がよくわかったよ……」
苦笑気味の誠さん。
俺はそう言いながらまたカオの事を考える。多分生まれも育ちも俺とカオは全く違う。だから俺の判断だけで何かを決めるのは違うのだ。だからこそ会って話がしたい。
それに全く違う生まれでもお互いがお互いを気に入ったのは間違いないのだから、ここで諦めるなんてもったいないだろう。
「……ここまで世話焼いてる俺が言うのもなんだが、あまりのめり込むなよ」
「え?」
不意にかけられた言葉に驚いて顔を上げる。自分がいつのまにか俯いていたことにも驚いた。
「何?」
「いや、今のお前見てると自分見てる気持ちになるからな」
「なんだじゃあ俺たち似た者同士?」
「茶化すなよ。お前心折れた時の反動がでかいタイプじゃねえか?」
「反動……」
正直これまで生きてきて何でも割とうまくいったから、何かにハマるとか一心不乱でやる自分はいなかった。人間関係でも去る者追わず来るもの拒まずでこんな風に追いかけたこともない。
ただし決めたらやる、そこだけは強いかも。
「俺、やばそう?」
「今はまだガキの意地」
「んじゃとりあえず大丈夫ってこと?……そうだなあ、もし本当にやばそうなら一応止めてよ誠さん、俺の事さ」
「一応だあ?」
「うん、それでもやるって言ってたら俺の好きにさせてほしい」
「……おい、おい。こんな時に物騒な事約束させんなよ」
「いやあ、どうせ突っ走るような気がしたから。誠さん優しいし俺に何かあったら落ち込むでしょ。だから先に言っとく。全部俺の意思だって」
誠さん巻き込んじゃったなんてのは当然わかっているから、最後は俺で何とかしないと。でもそんなに不安があるわけじゃない。逃げるならそれでいい、追うだけだから。
なんでこんなにカオを掴めるような気がするのか俺にもわからなかった。
買ったハンバーガーの包みを剥いて食べやすくして誠さんに渡す。いい匂いだ。
「誠さんは1人になってから長いの?あ、あんまり聞かない方が良い?」
「いや。3年ってとこだな」
「ちなみに理由は……」
「仕事人間過ぎるってよ」
「ええ?」
こんなに世話焼きなのに?
ミラー越しに俺の腑に落ちない顔が見えたのか、自分でも思い当たるのかあーとか言いながら話を続ける誠さん。
「いろんな事に足突っ込みやすい上にハマったらとことんやっちまう性格なんだよ。今は仕事変えてからだいぶ落ち着いたけどな、週一で子供にも会ってるし元嫁も今の方が良いってよ」
「じゃあ割と仲良しなんだ!」
「まあ昔よりは良いってくらいだけどな」
家族の形ってそれぞれだ。
じゃあカオはどんな家族だったんだろうか。本当にカオが言ったようにいい人達だったのだろうか、それならどうして殺したのか。何もわからない。
高速に乗れば空が晴れていて今日は一日天気が良さそうだ。こんな日に友人不在で友人の実家に向かっているのが少し不思議。この車にカオも乗っているなら旅行みたいで楽しいのに。
「お前の家族は?」
眩しいのかサングラスをかけた誠さんがミラー越しに問いかける。
窓に向けていた視線を戻すと目があった。
「俺は普通かなあたまーに実家には帰るくらいだけど、仲は普通にいいかな。まあ、俺がマイペースだからいろいろ心配はかけてるかも」
「なんだマイペースの自覚があんのか」
「そうよ!しかもそのマイペースさは気に入ってる」
「お前が図太い理由がよくわかったよ……」
苦笑気味の誠さん。
俺はそう言いながらまたカオの事を考える。多分生まれも育ちも俺とカオは全く違う。だから俺の判断だけで何かを決めるのは違うのだ。だからこそ会って話がしたい。
それに全く違う生まれでもお互いがお互いを気に入ったのは間違いないのだから、ここで諦めるなんてもったいないだろう。
「……ここまで世話焼いてる俺が言うのもなんだが、あまりのめり込むなよ」
「え?」
不意にかけられた言葉に驚いて顔を上げる。自分がいつのまにか俯いていたことにも驚いた。
「何?」
「いや、今のお前見てると自分見てる気持ちになるからな」
「なんだじゃあ俺たち似た者同士?」
「茶化すなよ。お前心折れた時の反動がでかいタイプじゃねえか?」
「反動……」
正直これまで生きてきて何でも割とうまくいったから、何かにハマるとか一心不乱でやる自分はいなかった。人間関係でも去る者追わず来るもの拒まずでこんな風に追いかけたこともない。
ただし決めたらやる、そこだけは強いかも。
「俺、やばそう?」
「今はまだガキの意地」
「んじゃとりあえず大丈夫ってこと?……そうだなあ、もし本当にやばそうなら一応止めてよ誠さん、俺の事さ」
「一応だあ?」
「うん、それでもやるって言ってたら俺の好きにさせてほしい」
「……おい、おい。こんな時に物騒な事約束させんなよ」
「いやあ、どうせ突っ走るような気がしたから。誠さん優しいし俺に何かあったら落ち込むでしょ。だから先に言っとく。全部俺の意思だって」
誠さん巻き込んじゃったなんてのは当然わかっているから、最後は俺で何とかしないと。でもそんなに不安があるわけじゃない。逃げるならそれでいい、追うだけだから。
なんでこんなにカオを掴めるような気がするのか俺にもわからなかった。
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