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しおりを挟む「やっぱり帰ってきてないかー」
ひとまず誠さんの運転でカオの家まで来た。相変わらずドアは開けっ放し。部屋も片付いてない。物が動いた感じもなし。
「とりあえず手紙書こ」
「なんて書くんだよ、戻ってこいってか?」
「まさか」
そんな可愛いこと書いたってあのへそ曲がりがどうにかなるとは思えない。迷うことなく書き出した俺の文に誠さんはついに黙ってしまった。
「首洗って待っとけよ、ハート……っと」
「…………空野も得体が知れないがお前も結構やばいな」
「だってーこのまんまは嫌だもん俺。もう弱気になるより攻め込むしかないじゃん。あと部屋片付けとくのと……ご飯食べてない気がするからなんか作って冷蔵庫に置いとくって、そのことも書いとこ」
「そりゃまた献身的だな……」
もうどうでも良くなったのか手紙は見ずに部屋を見渡す誠さん。見渡しても白と赤しかないことはもう分かっている。
「にしても庭も中も変わんねぇな。白と赤。お前よくここで寛いでたな、落ち着かねえよ」
「そう?俺は特に気になんなかったんだよね。カオ、白は好きな色で赤は……なんだっけ?」
「知るか」
言い回しは冷たいが誠さんは結局部屋の片付けを手伝ってくれた。しまいには掃除機までかけてくれていた。まじで良いパパだ。
俺は冷蔵庫にある食材でオムライスとハンバーグと唐揚げを作った。かなりの力作である。食べてくれると良いけど。
「なんか子供のご馳走みたいなメニューだな……」
「実はこっち寄りなんじゃないかなと踏んで」
「は?」
「いや、カオ意外と子供っぽいとこあったからさ」
誠さんにはそう言ったが本当はカオの僕人格がかなり幼く感じたせいだった。普段の余裕な俺人格はおしゃれな料理をたくさん作ってくれたけど、もしかしたら僕人格の味覚は違うかもしれないと思ったのだ。
「本当に仲良かったんだな」
「違うよ、今も仲良いから」
追い出されて音信不通の上これから見つけ出そうとしている人間が何言ってんだと誠さんの顔に書いてある。実際その通りなんだけど、正直なところカオに嫌われたという感覚は全くない。強いて言うなら……。
「好き避けかなぁ」
「……お前ら、聞かなかったけど。デキてんのか?」
「え、いや?」
その答えを聞く前にカオが消えたわけだ。
この関係もよく分かんないし、カオのことすらよく分からない状況で誠さんに伝えるのはまだ早い気がした。今はとにかく、カオを見つけるのが優先だ。俺の顔から何かを読み取ったのかため息をつく誠さん。
「お前らの訳あり事に首突っ込んじまったかな……」
「大丈夫大丈夫、誠さんは俺のパパだから」
「やめろそれ!お前みたいなでっけえガキいたら俺が年寄りみたいだろ」
年寄りみたいじゃ無かったら良いの?
悪寒が走ったように身震いする誠さんに思わず吹き出した。
部屋も片付いたし合鍵を見つけたので不用心な開けっ放しドアもこれで解決。手紙にも合鍵は貰ってやったと人質風に付け足した。俺らしさ満点のふざけた手紙だ。
「行こっか」
こんな事で少しでも笑ってくれたら良いのに。
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