君は殺人鬼

仔犬

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「起きろ!!仕事はいいのか!」

でっかい声でバッチリ目が覚めた。リビングで寝ていたと言うのに敷かれていた布団に包まっていた。誠さん、最初おっさん呼ばわりしてマジごめん。

「おはようございます!パパ!!」

「ああ?!」

そして俺は速攻でスマホを開く。当然カオからの連絡は無い。誠さんが何も言わず仁王立ちしている横で俺は会社に向けてメールを打った。


「えーと、お疲れ様です。成谷です。体調が優れないため本日お休みします。また後ほどご連絡致します……と、送信!!」

「まだ体調悪……いようには見えねぇわ」

立ち上がってブンブン腕振る俺はもちろん元気いっぱいだ。そりゃ食って寝たら元気にもなる。有給ならたくさんあるし、休みは割と取りやすい会社で助かった。

「季節の変わり目の風邪ってことにしといて……さてと今日俺はカオを探す!」

「またずいぶんアバウトな予定だな、その前に顔洗え!歯を磨け!つーか風呂入れ、汚ねぇやつは追い出す」


流石にお風呂に走った。

誠さん男らしいのに趣味ガーデニングの上綺麗好きらしい。洗濯機も使って良いって事なので服を放り込む。

俺のアパートの風呂少し小さいからこう言う一軒家は広くて快適。シャワー横の鏡に映る俺、今日もそれなりで良い感じ。こうやってなんでも良いから理由をつけて気分を上げていく。


「100回逃げられても200回追いかける……」


俺は、諦めが悪いというか、決めた事は曲げないのだ。
シャワーを頭に浴びて全身洗って体拭いてリビングに戻る。


「誠さん!服貸して下さい!」

「せめて前を隠せよ……」


気合いが十分すぎて朝から怒られたが誠パパは優しいので朝ごはんをくれるのだ。シャケと目玉焼きとお味噌汁なんて最高だ。


「で、どうすんだ」

「んーー、カオの荷物そんなに持っていったようには見えなかったからたまには戻ってくるんじゃないかなって。だから取り敢えず置き手紙する。あとはここから1番近い駅ビルら辺のホテルとか……それから、カオの実家に行ってみようかなって」

「実家?」

「調べたら載ってた。まだ家があるみたいだしそこに行ってみる、何が見たいとかじゃないし、カオも居ないとは思うけど……何となく」

「……まあ、良いじゃねえの」

「こっから2時間だから……んー昨日の今日じゃ、ホテルに居るならまだ帰ってこないだろうし、カオの家に置き手紙だけして取り敢えず実家突撃しようかな」

「何で行くんだ?」

「え、車ないし新幹線乗って……んー……」


行儀悪いけどご飯食べながらカオの実家のマップを出してみる。本当はニュースで話題の家なんて住所載ってるのどうかと思うけど、俺としては手がかりの一つなので今回ばかりは助かった。カオの実家近くに駅が無いのが少し痛手だ。


「向こうでレンタカーでも借りよっかな」

「なんだ運転できるのか」

「免許あるよー」


ちゃんと男の夢マニュアルで取ったのだ。
朝ごはんを綺麗に平らげて手を合わせる。

「ごちそうさまでした!美味かった!」

「そらどうも。綺麗に食ったなあ」

ひょいとお皿を拾い上げた誠さんがキッチンに行くのでテーブルのお片付けを手伝う。キッチンで誠さんが皿洗いを始めたところで洗濯機から洗濯完了の音が聞こえた。

「誠さんのも入ってたのも洗っちゃったけど干す?」

「ああ、洗濯バサミとかもその辺にあるから頼む」


洗面所に戻ると洗濯カゴの中に物干しハンガー発見、服を取り出して洗濯バサミに挟んでいく。男同士だし何が入ってても気にならないとこは楽だ。

一階の窓にかけてくれと言われたのでリビングに持っていくと誠さんがありがとなと洗い物しながら言ってくる。
窓の外は晴天で良い気持ちだ。



「それにしても車かあ。5年乗ってないけどどうにかなるっしょ」




ガシャン!とキッチンから音がして振り返ったら、般若みたいな顔をした誠さんが居た。


「な、何?」

「……5年だ?」

「うん、免許取ってからちょっと乗ってたんだけど。それからは車持ってる友達に任せっきりでさあ」


お皿割れてないかなっと思ってキッチンを覗き込む。
パッと見大丈夫そう。誠さん固まったまま動かないので流しっぱなしの水道を止めてみる。

絞り出した低い声が聞こえてきた。


「俺も行く……」

「え?いいよ、だって誠さんも仕事あるっしょ?」

「有給だわくそ!!!」





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