君は殺人鬼

仔犬

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朝起きて美人が横に居るのは心臓に悪い。

「び、びっくりした……」


いつのまにかカオの家で朝を迎えてしまった。真っ白な寝室で目覚めたら目の前に美人の寝姿があると朝からいい気分だ。

黒い髪から覗く真っ白な肌、顔の横にある手は随分と細い。握って包むと掛け布団から出ていたせいか冷たくなっている。


「寝てるのに手が冷たいなんて器用なやつ」


怖い夢でも見てるんじゃ無いだろうか。布団の中に入れて撫でたり広げたり曲げたりしてるうちに暖かくなってきた。最後に指を絡めて繋ぐとぎゅっと握り返された。


「……朝から積極的だね」

「あれ起きてたー?」

「寝かせるつもりもなかったでしょ」


まあ確かにこれだけ指動かしてれば誰だって起きそうだよな。起きてみれば眩しい朝日に体が反応してあくびが出るのはまだ眠いと言うことだろうか。


「ごめんいつのまにか寝てたのか俺」

「可愛い寝顔だったよ」

朝からこいつは相変わらずだな。そんな事可愛い女の子に言えば良いのに。

「はいはい。あー、居心地いいってやばいな。一回泊まったら帰りたく無い気持ちが余計にこう……」

カオは俺のほとんど独り言にもちゃんと考える素振りをした。いやに長くその綺麗な顔で真剣に。


「い、いやそんな考え込まなくたって……」

「住んでも、良いよ」


おれは捨て犬か何かなのだろうか。まるで一つの命を預かるみたいな表情に思わず笑ってしまう。


「実は寝ぼけてる?」

「え、いや……」

これは寝ぼけてるな。美人って寝ぼけると可愛いんだ。これは発見かも。


「じゃあ向こう引き払って明日からこっちきても良い?」

「ベッドを大きいのに変えないと」

「一緒に寝るの確定?」


軽口を叩き合いながらベッドに腰掛けるとカオも起き上がる。寝癖すらついてないサラサラの黒髪、カオ昨日お風呂に入ったのだろうか。

そう思ってきたら自分の体が汚く感じて居ても立っても居られない。

「カオお風呂、借りても良い?」

「どうぞ、タオルとか全部好きに使って良いから。歯磨きも洗面台の下」

「リョーカイ!」

スタッと立ち上がって背伸びすればすっかり気分が良い。リビングは綺麗に片付いていて何かお礼をしなければいけない気分だ。お風呂に上がったらおれが朝食でも作ろう。

「何食べたい?」

「え?」

「朝、作るから考えといて。お風呂借りまーす」

そのまま脱衣所に行って洗面台から歯磨きを探す。棚の中まで整理されていてすぐに発見。どうせ後でご飯食べるけど朝の歯磨きは大事だ。

服を脱いでいざお風呂を開けたらここまで真っ白だ。ジャンプーの容器まで真っ白。

「白好きは徹底してるな」

響いた声は聞こえたかもしれない。まあ、でも好きって言ってたよな。言ってた、ような気がする。赤はなんだっけ、赤は……。


思い出せない。
赤の方が重要な気がするのに。







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