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しおりを挟む「家で仕事する日あるんだけど1人だといまいち集中出来ないんだよなぁ。カオももしかして家でやってるの?いつも家にいるから」
「うん、webデザインの仕事だから……あ、ならうちでやれば?PCが持ち込めるならネットに繋げられるし」
「え、マジですか。良いんですか」
「どうして敬語になるの」
がっついた俺をカオが可笑しそうに笑った。
カオと話すのは楽しくてあれ以来よく遊びに行くようになっていた。今日も行こうかななんて思ってしまうくらいには俺も懐いた訳だ。必ず嬉しそうに微笑む所とか、俺がふざけても全部受け止めてくれる友達に気分を良くしない方が可笑しい。
もうすっかり慣れてしまった白い家は庭ではなくて部屋の中で過ごすことが増えた。何せ春も過ぎ気温が上がってきたからだ。たまには良いけど屋根のない所で長居はきつい。そんな中、今日は初めて夕方から遊びに来た。
カオの家の中はやっぱり中も白い家具が多くて花壇で育てていた花が花飾ってあったりとたまに赤があるところも外と変わらない。男の家にしては綺麗すぎてそれにオシャレだ。ローテーブルがひとつ、その前に2人がけの皮張りで白いソファがひとつ。それは沈むほど気持ちがいいから家に入って手を洗いリビングに行くといつもそこに座ってしまう。
「本当に犬みたい」
笑われても好きなものは好きだ。
嫌いなものは嫌いだし、分かりやすくて単純明快が好き。
「こんなに頻繁に同じ人に会うの、俺久しぶりでさ。しかもまたソファが最高だと居座っちゃうわ」
「いくらでも居て良いよ」
またくすくす笑いながら紅茶を差し出すカオ。
暑かくなってきてからはアイスに変わった紅茶。いろんな種類があるけど最近はダージリンが好きらしい。俺はもうカオが淹れる紅茶は全部美味しいので何でも大歓迎。
「好今日はせっかくだから夕飯食べていかない?お昼に美味しそうな魚を買ったんだ」
「なに、カオ料理も作れるんだ。良いんですかねぇご馳走になってばかりで」
「あ、たしかお酒飲めたよね。いつも1人だから付き合ってよ」
まさか飲み友達としてもカオが立候補するとは。
なんかもう当分カオがいれば遊びには困らなそうだ。こんなに気が合う友達に誘われて断る理由もない、二つ返事で頷いた。
そしてやっぱりというか、見た目が綺麗で部屋も綺麗なら手先も器用そう、だったら料理も上手だろうとか勝手に決めつけてもカオは裏切らない。
どこかで見たレストランのような夕飯が並び、当然美味しいし、お酒も進む。
「んまー!しかも酒強いのな、そこは顔に似合わず」
「そう、かな。最近1人だから普通が分からなくなってるかも」
ケロッとしているカオはすでにワインを一本空けている。俺はサワー系が好きだから炭酸で遅くなる気もするけど、ペースはカオの方が倍くらい早い。
「好もわんこみたいだけど、普通に飲めてる」
「それはもう、悪口じゃん」
「いや、白い犬って感じなんだよね本当に。イメージがさ。嬉しいと尻尾と耳が見えるし」
「白いのはカオでしょ」
たしかに俺も日焼けしても赤くなるだけでなかなか黒くならないし、運動は好きだけどインドア行事も好きだからそこまで日に当たらないおかげで白いとは言われる。けどカオはもう本当に透き通る白さだ。
「……遺伝かな、もともと家族も白い人達だから」
「へえ」
返事をしながら俺は初めてカオから家族の話題を聞いたなと気付く。あまり自分の話を自分からしないから、タイミングがなかった。この家も写真は一枚も飾られていないから話題を振るきっかけも少ない。
「カオは友達呼んだりしないの?こここんなに綺麗なのに」
カオは俺の隣で座っていたが次のお酒の用意と立ち上がると思い出すように首を傾げたまま冷蔵庫を開いた。
「人を入れたのこの家では初めてかも……?」
「じゃあ俺が珍しいわけか、と言って俺も友達を頻繁に呼ぶ訳じゃないし同じようなものかなー」
「へえ、意外だ。君には友達がたくさん居そうだから」
「うーん、遊ぶやつはいるけど俺の家からみんな遠くて、だから会うなら事前に合わせるしかないだろ?そうなると連絡取らない期間とかもあるから、タイミングとか気分に任せてる」
ソファの隣に戻ってきたカオは俺の言葉に笑ってまた意外だと口にする。カオには懐いているからまた違った風に俺が見えているのだろう。
いつもこんなどうでも良い話でさえもにこやかに聞いてくれるカオと今日も変わらず穏やかな時間が流れる。
夜も更けてお酒が回ってくると泊まっていきなよとの言葉に甘えてしまった。今度は手土産を持ってお返ししようなんて考えているうちに眠くなってくる。隣に座っているカオの膝に足を投げソファに横になると俺の足の上にカオの手が乗る。ポン、ポンとまるで寝かせるようなリズム。
何か話さないと寝てしまうと思い、目についた色を聞く。
「……カオは、赤と白が好きなの?」
珍しく返事がなかった。
もう目は閉じていた。だからもしかしたらこれは夢なのかもしれない。しばらくして返事が返ってきたがその頃には半分くらいの意識でそれを聞いていた。
「……白は好きな色で」
「うん……?」
「赤は……忘れてはいけない色」
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