君は殺人鬼

仔犬

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成谷 好なりや こう。27歳。性別男。一人暮らし。
性格は能天気。人見知りはしないほう。趣味は散歩。

自分なりのプロフィールなんてのを意味も無くぼんやり考えながらアパートを出る。このアパートは最寄りの駅から少し離れていて車の通りも少ないから静かで気に入っている。駅に近い方がもちろん便利だが家にいる時間の方が大切にしたかった。なによりも歩きやすい環境が大事だ。

少しだけ入り組んだ道をなんとなく覚えながら新たな道を開拓していくのが楽しいのだ。帰り道がわからなくなったらマップを見れば良いだけだし、なんて便利な世の中だろう。

見上げた空は青くて少し風が冷たいが歩くには丁度いい。ワイヤレスイヤホンから流れるミュージックは最近ようやくサブスクに追加されてすごく嬉しかったバンドである。休日となればこうして音楽を聴きながらゆるい考え事をするのだ。友達は多くもなく少なくもなく、適度に遊んで連絡しない時もある。それくらいが丁度いい。そんなふうにゆるく過ごしていく毎日が割と気に入っている。


数分歩いていくとまだ通った事のない道を見つけた。左側は手の付いていないただ雑草の広がる私有地。右側には年季の入った民家。奥は誰かの敷地になってしまうのかと思ったがしばらく真っ直ぐ進んでも一向にゴールがない。そのまま草木が広がる道に出た。

「こんなところあったんだ」

声が響くほど静かで葉の擦れる音が代わりに返事をした。ここは散歩にいいかもしれない。ただ電灯がないから夜は少し不便かも。

歩き続けて10分ほどで1人だけ老人とすれ違った。この道を知っている人すら少なそうだ。木と木の間から遠くに大きな建物が見えてようやく場所が把握できた。意外にも駅が近いのだ。ここだけが切り離された空間のように草木ばかりだけど。

それに頭だけが見えている大型ショッピングモールは家からかなり距離がある。少し歩き過ぎた。


「引き返そ」


誰もいないと独り言を発してしまうのは一人暮らしを始めてからだ。
この道に出た場所まで戻ると今きた道とは逆の先に門のようなものが見えた。基本的にはこの道は木があるせいで塀を経て家が建っているが、一軒だけこの道に直接つながる家があったのだ。

その家の前までいくと門はアンティークのような形をしていることに気がつく。白に塗られているが所々はげて黒が見えている。それなりに長く住んでいるのだろう。
門の横は柵がつながっているがそれも腰ぐらいで中の様子はよく見える。芝生の上に白い丸テーブルと椅子がふたつ。良く手入れがされている花壇。門が白なら家も白、白い屋根、そのせいで余計に目立つのだ。
種類の違う花が全部赤いから。


思わずまた飛び出た独り言。


「すご……赤、好きなのかな」

「……誰かいるの?」



誰もいないって思ってた。







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