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第七章
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「あのここは?」
「ここはどこなの?」
「えっ?」
逆に同じ質問を返されて驚いた。辺りを見ると実家の庭だ。いつも遊んだ噴水やコテージが見える。青空と、心地よい風はこの庭が本物であるように思わせる。
「実家です」
「あら、あなたアドラム家なのね?わたくしもここで遊んだわ。このコテージは当時とは違うけれどこの噴水は同じ。あの池も…懐かしいわ。お花畑は今も綺麗かしら?」
混乱する。ここが実家ではないのはわかる。精霊の森の勇者の館なのだから。
「ここは、どこでもないの。強いて言うならあなたの…まだ、名前聞いてなかったわね…頭の中」
「あっ、すみません。ジュリアン・アドラムです」
「ジュリアンね、よろしく。何か聞きたいことはある?」
聞きたいことは山ほどある。軽くパニックだ。グルグルと頭を回転させ、この状況を確認する。不安な状況でお互いの部屋に分かれた方が良いと思ったのはこれのためなの?アシュリーもジョナスたちも同じような経験をしているのだろうか?勇者の名前が書かれたプレートはそれぞれが間違いなくここに来るため。ダレルはこの館に掛かる魔法を教えてもらってるんだろうか?この羊皮紙の魔法も興味津々で聞いていそうだ。
「そうね、だいたい同じだと思うわよ。アレースは謁見の間が多く現れるみたいだけどね」
「そうなんですか…。あ、あの…メイヴィスさまは?」
「わたしよ」
一人が僕に近寄り手を握る。
「は、初めまして」
「あら、緊張しなくても良いのよ。あなたもミシェルなのだから」
「はい」
「ジュリアン…と言ったわね?ピーターの事を聞いたのね?」
「はい。アシュリーが…えっと、ミネルヴァですけど…、アシュリーが教えてくれました」
「アレースではないの?では、ハーマンに聞いたのかしら?」
「はい。アシュリーはリンメルに生まれましたから。いろいろ教えてもらったって言ってました」
「ハーマンは長生きしたのね……」
しみじみと呟かれる言葉はただ懐かしいって気持ちだけのような気がしてホッとする。
「陛下が、すまないってアシュリーに」
「まあ、そんなこと…」
ふふっと笑って、男って仕方ないわねと僕を抱きしめる。僕も男ですけど…。
「ねぇ…アレースには誰か側に居てくれる人はいるの?」
「はい。殿下の気持ちをはっきりと聞いたわけではありませんが僕の従姉妹がちょくちょく遊びに行ってるみたいです」
「その子は辛くないのかしら?」
「えっ?」
「わたしは…ミシェルだとわかる前はいろいろ言われてね。殿下にお断りしたこともあったのよ」
そう言えば、そんなこと聞いた…。
「ローザはグレネル公の娘なので王宮で育ったのです。だから、噂にはなっていないと思います」
「そうなの…。良かったわ。ピーターがね、心配してたから」
心からの笑顔は僕を安心させた。お幸せだったんだ。
「えっと…ここでは他の勇者の方には会えないのですか?」
「みんなが?」
「一斉に?」
「それはないわね」
「初代さまがね、次に来る勇者のためにこの魔法の羊皮紙を作られたの。自分たちの役割を見失わないように。今ではきっちり確立されてそのようなことはないみたいだけれど、最初の頃はいろいろ迷いもあったそうだからこの羊皮紙は役に立ったわ」
「今では百年に一度の楽しみね」
「いつも、ここに集まっているわけではないのですか?」
「あら、勇者が来た時だけよ」
「そうでなけりゃ、疲れるわ」
つ、疲れるのですね…。
「あの…初代さまは?」
「俺だよ」
あっ、あの時の人だ!
何故だろう、涙が出てきた。
「可愛いね。何泣いてるの?ひょっとして、あいつが何か企んでるの?」
あいつってアルシャントのことなのだろうか?
この人は強い。
僕はアシュリーと離れるなんて無理だ。
たとえ国が滅びても…。
「僕とあなたは似ていますか?」
涙を手で拭い、ミシェルを見る。
「みんなはどう思う?」
すると様々な声がする。
「似てるわ」
「身長は違うけどね」
「ここにいるみんな、どことなく似てるからね」
言われて見回すと似ているかもしない。女の人が多いから僕と似ているとは思わないけれど、ミシェルも他の男の人も美人さんだ。
「ここはどこなの?」
「えっ?」
逆に同じ質問を返されて驚いた。辺りを見ると実家の庭だ。いつも遊んだ噴水やコテージが見える。青空と、心地よい風はこの庭が本物であるように思わせる。
「実家です」
「あら、あなたアドラム家なのね?わたくしもここで遊んだわ。このコテージは当時とは違うけれどこの噴水は同じ。あの池も…懐かしいわ。お花畑は今も綺麗かしら?」
混乱する。ここが実家ではないのはわかる。精霊の森の勇者の館なのだから。
「ここは、どこでもないの。強いて言うならあなたの…まだ、名前聞いてなかったわね…頭の中」
「あっ、すみません。ジュリアン・アドラムです」
「ジュリアンね、よろしく。何か聞きたいことはある?」
聞きたいことは山ほどある。軽くパニックだ。グルグルと頭を回転させ、この状況を確認する。不安な状況でお互いの部屋に分かれた方が良いと思ったのはこれのためなの?アシュリーもジョナスたちも同じような経験をしているのだろうか?勇者の名前が書かれたプレートはそれぞれが間違いなくここに来るため。ダレルはこの館に掛かる魔法を教えてもらってるんだろうか?この羊皮紙の魔法も興味津々で聞いていそうだ。
「そうね、だいたい同じだと思うわよ。アレースは謁見の間が多く現れるみたいだけどね」
「そうなんですか…。あ、あの…メイヴィスさまは?」
「わたしよ」
一人が僕に近寄り手を握る。
「は、初めまして」
「あら、緊張しなくても良いのよ。あなたもミシェルなのだから」
「はい」
「ジュリアン…と言ったわね?ピーターの事を聞いたのね?」
「はい。アシュリーが…えっと、ミネルヴァですけど…、アシュリーが教えてくれました」
「アレースではないの?では、ハーマンに聞いたのかしら?」
「はい。アシュリーはリンメルに生まれましたから。いろいろ教えてもらったって言ってました」
「ハーマンは長生きしたのね……」
しみじみと呟かれる言葉はただ懐かしいって気持ちだけのような気がしてホッとする。
「陛下が、すまないってアシュリーに」
「まあ、そんなこと…」
ふふっと笑って、男って仕方ないわねと僕を抱きしめる。僕も男ですけど…。
「ねぇ…アレースには誰か側に居てくれる人はいるの?」
「はい。殿下の気持ちをはっきりと聞いたわけではありませんが僕の従姉妹がちょくちょく遊びに行ってるみたいです」
「その子は辛くないのかしら?」
「えっ?」
「わたしは…ミシェルだとわかる前はいろいろ言われてね。殿下にお断りしたこともあったのよ」
そう言えば、そんなこと聞いた…。
「ローザはグレネル公の娘なので王宮で育ったのです。だから、噂にはなっていないと思います」
「そうなの…。良かったわ。ピーターがね、心配してたから」
心からの笑顔は僕を安心させた。お幸せだったんだ。
「えっと…ここでは他の勇者の方には会えないのですか?」
「みんなが?」
「一斉に?」
「それはないわね」
「初代さまがね、次に来る勇者のためにこの魔法の羊皮紙を作られたの。自分たちの役割を見失わないように。今ではきっちり確立されてそのようなことはないみたいだけれど、最初の頃はいろいろ迷いもあったそうだからこの羊皮紙は役に立ったわ」
「今では百年に一度の楽しみね」
「いつも、ここに集まっているわけではないのですか?」
「あら、勇者が来た時だけよ」
「そうでなけりゃ、疲れるわ」
つ、疲れるのですね…。
「あの…初代さまは?」
「俺だよ」
あっ、あの時の人だ!
何故だろう、涙が出てきた。
「可愛いね。何泣いてるの?ひょっとして、あいつが何か企んでるの?」
あいつってアルシャントのことなのだろうか?
この人は強い。
僕はアシュリーと離れるなんて無理だ。
たとえ国が滅びても…。
「僕とあなたは似ていますか?」
涙を手で拭い、ミシェルを見る。
「みんなはどう思う?」
すると様々な声がする。
「似てるわ」
「身長は違うけどね」
「ここにいるみんな、どことなく似てるからね」
言われて見回すと似ているかもしない。女の人が多いから僕と似ているとは思わないけれど、ミシェルも他の男の人も美人さんだ。
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