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第七章
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初代さまたちが建てたってことは千五百年前…。
「遺跡だな。王宮より古いってことか…。それでいて古臭くはない」
「歴史的価値が高いですね」
「この魔法凄い!どうなってるんだ?」
ジョナス、イーノック、ダレルがそれぞれ感想を述べる。
アシュリーは緊張しているのかその表情は硬く、僕から離れない。肩を抱いた腕は僕を安心させるけれど、張り詰めた様子も僕に伝える。
『アシュ、大好き』
『どうしたんだ?突然。俺も愛してるよ』
微笑むと笑顔を返してくれた。一階を一通り見て回った。今すぐに使えるように整えられているのに驚いた。
「アルシャントに会いに行きますか?」
シルベスターの言葉にアシュリーから笑顔が消える。あちこち見た時に離れていた身体をサッと引き寄せ、腰を抱いた。
「ここまで来たんだ。一時先に延ばしたって、アルシャントは俺たちがここに着いたことは知ってるんだろ?なら…、行こう」
少し離れた場所にそれは建っていた。
アルシャントの住まいは勇者の館より大きかった。
「こりゃまた、今回はデカイな」
マクシミリアンが呟く声に何かが引っかかる。今回は?どういう意味だろう。毎回違うってこと?
「ここはアルシャントがアレースたちを迎えるために用意したんだ。勇者の館を参考にして建てた。ここは意思が支配した森だって言ったろ?会いたい思いが強ければ大きくなるんだ。勇者の館と同じくらいの大きさの時もあったかな」
マクシミリアンは少し呆れ気味に、大きな館を見上げた。
「こっちです」
レイモンドはその館には入らず、通り過ぎる。
「あっ」
「どうした?」
手を繋ぎ歩いていたアシュリーは、僕が止まったから一緒に止まる。
「ここ知ってる」
「ミシェルさまたちはここにもいたの?」
「違う…旅に出た最初に気を失った時、アルシャントがここにいた。…忘れてた。その時も水の跳ねる音が聞こえたんだ。風が吹いて、青い空だったよ」
「ミシェル!」
「あっ!」
「いらっしゃい。よく来たね。みんなも疲れただろ?ゆっくりしたらいいよ」
そこには大きなドラゴンがいた。
あの時見た姿より大きく迫力がある。シルバーだった体色は黒光りした漆黒で、声も低く、その存在をより強く主張する。身体が弱っていると聞いていたけれど、元気そうだ。
大地に異変をもたらす存在、北の山の神。
神と面会するのは僕たちだけに許されたこと。
アルシャントの後ろには僕たちの身長くらいの洞窟がある。今の姿では到底入れないこの洞窟がアルシャントの住まいなのだろか?想像していた通りの住まいに何故か嬉しくなる。ニコニコと微笑みアシュリーを見ると、少し不機嫌そうな顔をしている。
繋いでいた手はいつの間にか離され、アシュリーに抱きしめられる。
『アシュ、アルシャントが怒らないかな?』
『怒ったって構わない』
『でも…』
『アルシャントに笑顔なんて見せないで』
『……アシュ』
独占欲丸出しのアシュリーにその意味を知り、顔を引き締めた。
『アルシャントに見せたんじゃなくて、アシュリーに、だよ?』
『わ、わかってる。ごめん』
『うん…謝らないで。嬉しいから』
「初めまして、ジョナス・アレースです。少し早いですが、誕生年おめでとうございます」
「うわぁ!ありがとう」
ここに来た目的は、アルシャントを祝うこと。今回はお見舞いも含まれるけれど、何かプレゼントをしようと途中の街で買い求めたものを渡した。
何がいいのかと使い魔に聞くと、何でも…とそっけなく返ってきた。それはわからないとか、何をあげても喜ばないから何を渡しても一緒…と言うことではなく、真逆の意味。アルシャントは僕たちの世界のものを珍しがって喜ぶのだそうだ。
プレゼントはベッド。小さくなったのをダレルが杖でトントンと叩く。たちまちキングサイズの大きなベッドが現れた。でも、この大きさでも今のアルシャントには小さ過ぎたかも。これを買っている時もギルバートたちは何も言わなかったけれど、大丈夫なのだろうか?
「どこに置きます?」
ジョナスの質問に考え込むアルシャント。
「ここじゃダメなの?」
「雨が降れば濡れてしまいます。マットレスがダメになってしまう」
「それは大丈夫。水に濡らさなければ良いんだね?」
そうか…ここはアルシャントの意志が支配する森。濡らしたくないと思えば濡れないのか。
「遺跡だな。王宮より古いってことか…。それでいて古臭くはない」
「歴史的価値が高いですね」
「この魔法凄い!どうなってるんだ?」
ジョナス、イーノック、ダレルがそれぞれ感想を述べる。
アシュリーは緊張しているのかその表情は硬く、僕から離れない。肩を抱いた腕は僕を安心させるけれど、張り詰めた様子も僕に伝える。
『アシュ、大好き』
『どうしたんだ?突然。俺も愛してるよ』
微笑むと笑顔を返してくれた。一階を一通り見て回った。今すぐに使えるように整えられているのに驚いた。
「アルシャントに会いに行きますか?」
シルベスターの言葉にアシュリーから笑顔が消える。あちこち見た時に離れていた身体をサッと引き寄せ、腰を抱いた。
「ここまで来たんだ。一時先に延ばしたって、アルシャントは俺たちがここに着いたことは知ってるんだろ?なら…、行こう」
少し離れた場所にそれは建っていた。
アルシャントの住まいは勇者の館より大きかった。
「こりゃまた、今回はデカイな」
マクシミリアンが呟く声に何かが引っかかる。今回は?どういう意味だろう。毎回違うってこと?
「ここはアルシャントがアレースたちを迎えるために用意したんだ。勇者の館を参考にして建てた。ここは意思が支配した森だって言ったろ?会いたい思いが強ければ大きくなるんだ。勇者の館と同じくらいの大きさの時もあったかな」
マクシミリアンは少し呆れ気味に、大きな館を見上げた。
「こっちです」
レイモンドはその館には入らず、通り過ぎる。
「あっ」
「どうした?」
手を繋ぎ歩いていたアシュリーは、僕が止まったから一緒に止まる。
「ここ知ってる」
「ミシェルさまたちはここにもいたの?」
「違う…旅に出た最初に気を失った時、アルシャントがここにいた。…忘れてた。その時も水の跳ねる音が聞こえたんだ。風が吹いて、青い空だったよ」
「ミシェル!」
「あっ!」
「いらっしゃい。よく来たね。みんなも疲れただろ?ゆっくりしたらいいよ」
そこには大きなドラゴンがいた。
あの時見た姿より大きく迫力がある。シルバーだった体色は黒光りした漆黒で、声も低く、その存在をより強く主張する。身体が弱っていると聞いていたけれど、元気そうだ。
大地に異変をもたらす存在、北の山の神。
神と面会するのは僕たちだけに許されたこと。
アルシャントの後ろには僕たちの身長くらいの洞窟がある。今の姿では到底入れないこの洞窟がアルシャントの住まいなのだろか?想像していた通りの住まいに何故か嬉しくなる。ニコニコと微笑みアシュリーを見ると、少し不機嫌そうな顔をしている。
繋いでいた手はいつの間にか離され、アシュリーに抱きしめられる。
『アシュ、アルシャントが怒らないかな?』
『怒ったって構わない』
『でも…』
『アルシャントに笑顔なんて見せないで』
『……アシュ』
独占欲丸出しのアシュリーにその意味を知り、顔を引き締めた。
『アルシャントに見せたんじゃなくて、アシュリーに、だよ?』
『わ、わかってる。ごめん』
『うん…謝らないで。嬉しいから』
「初めまして、ジョナス・アレースです。少し早いですが、誕生年おめでとうございます」
「うわぁ!ありがとう」
ここに来た目的は、アルシャントを祝うこと。今回はお見舞いも含まれるけれど、何かプレゼントをしようと途中の街で買い求めたものを渡した。
何がいいのかと使い魔に聞くと、何でも…とそっけなく返ってきた。それはわからないとか、何をあげても喜ばないから何を渡しても一緒…と言うことではなく、真逆の意味。アルシャントは僕たちの世界のものを珍しがって喜ぶのだそうだ。
プレゼントはベッド。小さくなったのをダレルが杖でトントンと叩く。たちまちキングサイズの大きなベッドが現れた。でも、この大きさでも今のアルシャントには小さ過ぎたかも。これを買っている時もギルバートたちは何も言わなかったけれど、大丈夫なのだろうか?
「どこに置きます?」
ジョナスの質問に考え込むアルシャント。
「ここじゃダメなの?」
「雨が降れば濡れてしまいます。マットレスがダメになってしまう」
「それは大丈夫。水に濡らさなければ良いんだね?」
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