155 / 173
第七章
24
しおりを挟む
初代さまたちが建てたってことは千五百年前…。
「遺跡だな。王宮より古いってことか…。それでいて古臭くはない」
「歴史的価値が高いですね」
「この魔法凄い!どうなってるんだ?」
ジョナス、イーノック、ダレルがそれぞれ感想を述べる。
アシュリーは緊張しているのかその表情は硬く、僕から離れない。肩を抱いた腕は僕を安心させるけれど、張り詰めた様子も僕に伝える。
『アシュ、大好き』
『どうしたんだ?突然。俺も愛してるよ』
微笑むと笑顔を返してくれた。一階を一通り見て回った。今すぐに使えるように整えられているのに驚いた。
「アルシャントに会いに行きますか?」
シルベスターの言葉にアシュリーから笑顔が消える。あちこち見た時に離れていた身体をサッと引き寄せ、腰を抱いた。
「ここまで来たんだ。一時先に延ばしたって、アルシャントは俺たちがここに着いたことは知ってるんだろ?なら…、行こう」
少し離れた場所にそれは建っていた。
アルシャントの住まいは勇者の館より大きかった。
「こりゃまた、今回はデカイな」
マクシミリアンが呟く声に何かが引っかかる。今回は?どういう意味だろう。毎回違うってこと?
「ここはアルシャントがアレースたちを迎えるために用意したんだ。勇者の館を参考にして建てた。ここは意思が支配した森だって言ったろ?会いたい思いが強ければ大きくなるんだ。勇者の館と同じくらいの大きさの時もあったかな」
マクシミリアンは少し呆れ気味に、大きな館を見上げた。
「こっちです」
レイモンドはその館には入らず、通り過ぎる。
「あっ」
「どうした?」
手を繋ぎ歩いていたアシュリーは、僕が止まったから一緒に止まる。
「ここ知ってる」
「ミシェルさまたちはここにもいたの?」
「違う…旅に出た最初に気を失った時、アルシャントがここにいた。…忘れてた。その時も水の跳ねる音が聞こえたんだ。風が吹いて、青い空だったよ」
「ミシェル!」
「あっ!」
「いらっしゃい。よく来たね。みんなも疲れただろ?ゆっくりしたらいいよ」
そこには大きなドラゴンがいた。
あの時見た姿より大きく迫力がある。シルバーだった体色は黒光りした漆黒で、声も低く、その存在をより強く主張する。身体が弱っていると聞いていたけれど、元気そうだ。
大地に異変をもたらす存在、北の山の神。
神と面会するのは僕たちだけに許されたこと。
アルシャントの後ろには僕たちの身長くらいの洞窟がある。今の姿では到底入れないこの洞窟がアルシャントの住まいなのだろか?想像していた通りの住まいに何故か嬉しくなる。ニコニコと微笑みアシュリーを見ると、少し不機嫌そうな顔をしている。
繋いでいた手はいつの間にか離され、アシュリーに抱きしめられる。
『アシュ、アルシャントが怒らないかな?』
『怒ったって構わない』
『でも…』
『アルシャントに笑顔なんて見せないで』
『……アシュ』
独占欲丸出しのアシュリーにその意味を知り、顔を引き締めた。
『アルシャントに見せたんじゃなくて、アシュリーに、だよ?』
『わ、わかってる。ごめん』
『うん…謝らないで。嬉しいから』
「初めまして、ジョナス・アレースです。少し早いですが、誕生年おめでとうございます」
「うわぁ!ありがとう」
ここに来た目的は、アルシャントを祝うこと。今回はお見舞いも含まれるけれど、何かプレゼントをしようと途中の街で買い求めたものを渡した。
何がいいのかと使い魔に聞くと、何でも…とそっけなく返ってきた。それはわからないとか、何をあげても喜ばないから何を渡しても一緒…と言うことではなく、真逆の意味。アルシャントは僕たちの世界のものを珍しがって喜ぶのだそうだ。
プレゼントはベッド。小さくなったのをダレルが杖でトントンと叩く。たちまちキングサイズの大きなベッドが現れた。でも、この大きさでも今のアルシャントには小さ過ぎたかも。これを買っている時もギルバートたちは何も言わなかったけれど、大丈夫なのだろうか?
「どこに置きます?」
ジョナスの質問に考え込むアルシャント。
「ここじゃダメなの?」
「雨が降れば濡れてしまいます。マットレスがダメになってしまう」
「それは大丈夫。水に濡らさなければ良いんだね?」
そうか…ここはアルシャントの意志が支配する森。濡らしたくないと思えば濡れないのか。
「遺跡だな。王宮より古いってことか…。それでいて古臭くはない」
「歴史的価値が高いですね」
「この魔法凄い!どうなってるんだ?」
ジョナス、イーノック、ダレルがそれぞれ感想を述べる。
アシュリーは緊張しているのかその表情は硬く、僕から離れない。肩を抱いた腕は僕を安心させるけれど、張り詰めた様子も僕に伝える。
『アシュ、大好き』
『どうしたんだ?突然。俺も愛してるよ』
微笑むと笑顔を返してくれた。一階を一通り見て回った。今すぐに使えるように整えられているのに驚いた。
「アルシャントに会いに行きますか?」
シルベスターの言葉にアシュリーから笑顔が消える。あちこち見た時に離れていた身体をサッと引き寄せ、腰を抱いた。
「ここまで来たんだ。一時先に延ばしたって、アルシャントは俺たちがここに着いたことは知ってるんだろ?なら…、行こう」
少し離れた場所にそれは建っていた。
アルシャントの住まいは勇者の館より大きかった。
「こりゃまた、今回はデカイな」
マクシミリアンが呟く声に何かが引っかかる。今回は?どういう意味だろう。毎回違うってこと?
「ここはアルシャントがアレースたちを迎えるために用意したんだ。勇者の館を参考にして建てた。ここは意思が支配した森だって言ったろ?会いたい思いが強ければ大きくなるんだ。勇者の館と同じくらいの大きさの時もあったかな」
マクシミリアンは少し呆れ気味に、大きな館を見上げた。
「こっちです」
レイモンドはその館には入らず、通り過ぎる。
「あっ」
「どうした?」
手を繋ぎ歩いていたアシュリーは、僕が止まったから一緒に止まる。
「ここ知ってる」
「ミシェルさまたちはここにもいたの?」
「違う…旅に出た最初に気を失った時、アルシャントがここにいた。…忘れてた。その時も水の跳ねる音が聞こえたんだ。風が吹いて、青い空だったよ」
「ミシェル!」
「あっ!」
「いらっしゃい。よく来たね。みんなも疲れただろ?ゆっくりしたらいいよ」
そこには大きなドラゴンがいた。
あの時見た姿より大きく迫力がある。シルバーだった体色は黒光りした漆黒で、声も低く、その存在をより強く主張する。身体が弱っていると聞いていたけれど、元気そうだ。
大地に異変をもたらす存在、北の山の神。
神と面会するのは僕たちだけに許されたこと。
アルシャントの後ろには僕たちの身長くらいの洞窟がある。今の姿では到底入れないこの洞窟がアルシャントの住まいなのだろか?想像していた通りの住まいに何故か嬉しくなる。ニコニコと微笑みアシュリーを見ると、少し不機嫌そうな顔をしている。
繋いでいた手はいつの間にか離され、アシュリーに抱きしめられる。
『アシュ、アルシャントが怒らないかな?』
『怒ったって構わない』
『でも…』
『アルシャントに笑顔なんて見せないで』
『……アシュ』
独占欲丸出しのアシュリーにその意味を知り、顔を引き締めた。
『アルシャントに見せたんじゃなくて、アシュリーに、だよ?』
『わ、わかってる。ごめん』
『うん…謝らないで。嬉しいから』
「初めまして、ジョナス・アレースです。少し早いですが、誕生年おめでとうございます」
「うわぁ!ありがとう」
ここに来た目的は、アルシャントを祝うこと。今回はお見舞いも含まれるけれど、何かプレゼントをしようと途中の街で買い求めたものを渡した。
何がいいのかと使い魔に聞くと、何でも…とそっけなく返ってきた。それはわからないとか、何をあげても喜ばないから何を渡しても一緒…と言うことではなく、真逆の意味。アルシャントは僕たちの世界のものを珍しがって喜ぶのだそうだ。
プレゼントはベッド。小さくなったのをダレルが杖でトントンと叩く。たちまちキングサイズの大きなベッドが現れた。でも、この大きさでも今のアルシャントには小さ過ぎたかも。これを買っている時もギルバートたちは何も言わなかったけれど、大丈夫なのだろうか?
「どこに置きます?」
ジョナスの質問に考え込むアルシャント。
「ここじゃダメなの?」
「雨が降れば濡れてしまいます。マットレスがダメになってしまう」
「それは大丈夫。水に濡らさなければ良いんだね?」
そうか…ここはアルシャントの意志が支配する森。濡らしたくないと思えば濡れないのか。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)


禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる