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第七章
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二重の虚構で守られる国。
衝撃の事実を聞いて、僕たちは混乱した。それでも、北の山に行かなければならないことは変わらない。難しい封印がないのなら逆に気は楽になった。…複雑な気はするけれど、失敗する心配はないのだから。
「俺たちここで寝るからさ、ジュリアンはアシュリーのベッドで寝てくれよ」
あの後、五匹は指輪から出たまま、もう戻らなかった。小さな手乗りサイズならベッド一つで十分だけど何故僕のベッドなのさ?
「ジュリアンもその方がいいだろう?」
僕の耳元でそう囁くと頬をペロペロ舐める。ギルバートにそう言われたから、仕方なくアシュリーと一緒に寝るって言えるってこと?この旅の間は別々のベッドで寝るつもりだったから、僕としても嬉しい。ずっと続く不安に押しつぶされそうだったから。でも…みんなの反応が気になる。
「いいんじゃないですか?アンたちもゆっくりしたいでしょうし。ジュリアンさえ良いなら、そうしてあげてください」
イーノックは五匹のためにベッドを空け渡してあげてって言ってくれた。ダレルとジョナスも少しニヤニヤしているように見えるけれど、頷いてくれる。
「アシュ、抱きしめて」
二人でベッドに横になり甘える。アシュリーの腕の中は僕を癒してくれる。出発してからの緊張と、ジョナスと使い魔たちから聞いた建国以来守り続けられてきた本当の伝承を聞いて心が落ち着かない。
ドキドキとした嫌な動悸が抱きしめられることにより、落ち着いていくのがわかる。
『びっくりしたな』
『うん。想像もしてなかった。これから、どうしたら良いんだろ?』
『旅は続ける。その先はアルシャント…なんか変だな、これの名前が国名なんて』
「ぁっ…んっ…」
そう言って服の中に手を差し入れ、アザをなぞる。
『ふふっ…可愛いジュリ。アルシャントに会って、お祝いをして、あと百年もよろしくって言って直ぐに帰る』
『でも…』
『一緒に帰るよ』
『うん』
『ジュリアン、愛してるよ』
『僕も、愛してる。アシュリーだけだよ……』
「ジュリ?…ジュリ!
ギル!マックス!誰か!ジュリが…」
◇◇◇◇◇
周りは暗く、ここがどこだかわからない。
アシュリーはいないのかな?さっきまで抱きしめていてくれたのに…。温もりはまだ僕の身体に残るのに大好きな人はいない。腕を伸ばして辺りを探すけど、腕は虚しく空を切る。
寂しい。
嫌だ、抱きしめて…。
「やっと会えるんだね」
いつか聞いたことのある声がする。
「君は…もしかして、アルシャント?」
「そうだよ」
途端に明るくなり目の前にドラゴンが現れた。いつか見た夢の中。じゃあ、これも夢?
森の中だ。水の跳ねる音が聞こえ、爽やかな風が吹いている。見上げれば青い空が広がっていた。
アシュリーと僕の胸にあるアザや黄金の剣に彫金されているドラゴンとは違い、やはり迫力がある。目は赤く、身体はシルバーに光り輝いて見える。けれど、こんなに小さいんだ。僕と同じくらいの大きさのアルシャントは、強く大きいっていうドラゴンのイメージとは違い可愛らしい。
「ねえ、アルシャントももっと大きくなれるの?」
「そうだよ」
やっぱり!ギルバートたちが手乗りサイズから、僕を乗せられるくらいの大きさになれるんだからアルシャントも大きくなれるかもって思ったんだ。
「綺麗な色だね」
「ミシェルは僕のことを忘れてしまったの?」
「あっ、あの…ごめんね、僕はミシェルじゃないんだ」
「ああ、そうだね。知ってるんだけどね。人間って、なんでそんなに直ぐに死んじゃうんだ?僕が力をあげても、次々に死んじゃうんだ。ミシェルも最後は弱っちゃって…かわいそうだったな…」
「僕はジュリアンって言うんだ。よろしくね」
アルシャントがあまりにも悲しそうな雰囲気なので、何を言ったのかちゃんと聞いてなかった。
「ここは綺麗なところだね」
「そうだよ。気に入った?」
「えっ?ああ、うん。凄く、素敵なところだよ」
「良かった。気に入ってくれて。待ってるからね。早く来てね。いっぱい、遊ぼうね」
「うん……」
衝撃の事実を聞いて、僕たちは混乱した。それでも、北の山に行かなければならないことは変わらない。難しい封印がないのなら逆に気は楽になった。…複雑な気はするけれど、失敗する心配はないのだから。
「俺たちここで寝るからさ、ジュリアンはアシュリーのベッドで寝てくれよ」
あの後、五匹は指輪から出たまま、もう戻らなかった。小さな手乗りサイズならベッド一つで十分だけど何故僕のベッドなのさ?
「ジュリアンもその方がいいだろう?」
僕の耳元でそう囁くと頬をペロペロ舐める。ギルバートにそう言われたから、仕方なくアシュリーと一緒に寝るって言えるってこと?この旅の間は別々のベッドで寝るつもりだったから、僕としても嬉しい。ずっと続く不安に押しつぶされそうだったから。でも…みんなの反応が気になる。
「いいんじゃないですか?アンたちもゆっくりしたいでしょうし。ジュリアンさえ良いなら、そうしてあげてください」
イーノックは五匹のためにベッドを空け渡してあげてって言ってくれた。ダレルとジョナスも少しニヤニヤしているように見えるけれど、頷いてくれる。
「アシュ、抱きしめて」
二人でベッドに横になり甘える。アシュリーの腕の中は僕を癒してくれる。出発してからの緊張と、ジョナスと使い魔たちから聞いた建国以来守り続けられてきた本当の伝承を聞いて心が落ち着かない。
ドキドキとした嫌な動悸が抱きしめられることにより、落ち着いていくのがわかる。
『びっくりしたな』
『うん。想像もしてなかった。これから、どうしたら良いんだろ?』
『旅は続ける。その先はアルシャント…なんか変だな、これの名前が国名なんて』
「ぁっ…んっ…」
そう言って服の中に手を差し入れ、アザをなぞる。
『ふふっ…可愛いジュリ。アルシャントに会って、お祝いをして、あと百年もよろしくって言って直ぐに帰る』
『でも…』
『一緒に帰るよ』
『うん』
『ジュリアン、愛してるよ』
『僕も、愛してる。アシュリーだけだよ……』
「ジュリ?…ジュリ!
ギル!マックス!誰か!ジュリが…」
◇◇◇◇◇
周りは暗く、ここがどこだかわからない。
アシュリーはいないのかな?さっきまで抱きしめていてくれたのに…。温もりはまだ僕の身体に残るのに大好きな人はいない。腕を伸ばして辺りを探すけど、腕は虚しく空を切る。
寂しい。
嫌だ、抱きしめて…。
「やっと会えるんだね」
いつか聞いたことのある声がする。
「君は…もしかして、アルシャント?」
「そうだよ」
途端に明るくなり目の前にドラゴンが現れた。いつか見た夢の中。じゃあ、これも夢?
森の中だ。水の跳ねる音が聞こえ、爽やかな風が吹いている。見上げれば青い空が広がっていた。
アシュリーと僕の胸にあるアザや黄金の剣に彫金されているドラゴンとは違い、やはり迫力がある。目は赤く、身体はシルバーに光り輝いて見える。けれど、こんなに小さいんだ。僕と同じくらいの大きさのアルシャントは、強く大きいっていうドラゴンのイメージとは違い可愛らしい。
「ねえ、アルシャントももっと大きくなれるの?」
「そうだよ」
やっぱり!ギルバートたちが手乗りサイズから、僕を乗せられるくらいの大きさになれるんだからアルシャントも大きくなれるかもって思ったんだ。
「綺麗な色だね」
「ミシェルは僕のことを忘れてしまったの?」
「あっ、あの…ごめんね、僕はミシェルじゃないんだ」
「ああ、そうだね。知ってるんだけどね。人間って、なんでそんなに直ぐに死んじゃうんだ?僕が力をあげても、次々に死んじゃうんだ。ミシェルも最後は弱っちゃって…かわいそうだったな…」
「僕はジュリアンって言うんだ。よろしくね」
アルシャントがあまりにも悲しそうな雰囲気なので、何を言ったのかちゃんと聞いてなかった。
「ここは綺麗なところだね」
「そうだよ。気に入った?」
「えっ?ああ、うん。凄く、素敵なところだよ」
「良かった。気に入ってくれて。待ってるからね。早く来てね。いっぱい、遊ぼうね」
「うん……」
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