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第七章
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「これから話すことは、この旅が終わり、命が尽きるまで誰にも言わないと約束してほしい」
「どうしたんですか?改まって。今回の封印に関することなのですか?宰相や俺たちの両親も知らないことなのですか?」
アシュリーの質問に殿下が頷く。
「でも、その前に…。敬語やめろ。殿下って呼ぶのもな。素性がバレバレ」
みんなそれぞれ了解の返事をするとジョナスが次に何を言うのかを見守った。
「この旅のことはそれぞれの父親から聞いた通り、封印のためのものだ。国民には儀式的な封印と言ってある。諸外国にはそれに疑問を持つ国もあって隙あらば勇者を亡き者にして…と狙ってる」
ジョナスは僕とアシュリーをちらりと見て、コホンと咳払いをした。
「おまえらが聞いたのはこうだろ?五人の勇者は封印することには成功した。成功したけれど邪悪な力が強すぎて、その封印では百年間しか保てない。百年経ち、封印が破られればまた同じようなことが起こってしまう。だから北の山に住む神の力を借りて百年後、封印が解ける前に再び封印し、百年間の安寧を得る。儀式じゃなく、封印が適切にできないと恐ろしいことになってしまう…」
ジョナスがみんなを見回し、みんなは頷いた。
「これらは極秘事項だ。王家と公爵家、侯爵家だけで守られてきた。この百年ごとに繰り返される奇跡のお陰で、貴族同士の争いはほとんど起きない。このことが重要なんだ」
「どう言うこと?重要って、封印、それが全てだろ?」
ダレルの質問にジョナスがもう一度みんなを見回す。
「違う。封印が重要なんじゃない。貴族同士の争いがないってことが大事なんだ。他国を見てみろ。そりゃ、強い国に攻められて滅びた国もある。でも、それも内政にまとまりがあって一丸となって戦っていれば勝てた戦を落とした国もある。クーデタで滅びた国もある。国の内側に守らなければならない継承と秘密があるからそれに全力を注ぐだろ?実際、俺たち五人がアデルにいることでアデルの、そして国の結界が強くなると言うのは本当だ。俺たちが国を護ってるのは実感してるさ。それが俺たちの存在意義だけど、内側の抑止になってるんだ」
『アシュリー、殿下は何が言いたいの?』
『殿下って呼ぶと怒られるよ』
『あっ、そうだった』
『ジョナスは今、国の秘密を俺たちに教えてるんだ。それは王宮で言うことができなかったんだろうな』
『どうして?』
『どこで、誰に聞かれるかわからないってことなのかな。俺たちの親も知らないってことは、ある意味王族が国の全ての権力を握ってるってことさ』
ジョナスの話は続く。
「そして、封印しなければ恐ろしいことが起こると思っているから、貴族が結託して王族に歯向かうことはない。今までアレースが王族以外に生まれたことはない。公爵家に生まれた例もあることはあるけれど、国王の弟の子だったりと王族にかなり近い血筋だった。だから、王族を排除することはできない。王族も努力して不満が溜まらないように配慮している。だから、建国以来一度も内政が混乱したことはなかったんだ。
アルシャントは長年戦争がないから、軍事力が他国に比べて弱い。近衛兵も実践で戦ったことのある兵はいない。エリオットやライナスでさえない。国境を守ってる兵は多少の小競り合いは経験しているが、殺し合いの真剣勝負をしてどれだけ勝ち目があるかは火を見るより明らかだ。そんな状態で国内が不安定になってみろ、直ぐに攻め落とされる。今回の旅の目的は…」
みんながジョナスを見つめる。
「封印じゃない」
「じゃあ、この旅は無駄なのか?」
「それに、各地で異変が起こってるっていうのも、情報操作なの?」
アシュリーと僕の質問にジョナスが顔の前に手を挙げて、落ち着けとお茶を淹れ直した。
「この旅は無意味じゃない。シルベスターが言ったというのも事実だ。ただ、難しい封印……じゃないということだ。でもな…今回はどうも様子がおかしらしいんだ。各地で起こる異変もそうだし、十年も早いのもそう」
「アンたちは知らないのですか?」
イーノックの言葉に使い魔が五匹揃ってテーブルの上に現れる。
「どうしたんですか?改まって。今回の封印に関することなのですか?宰相や俺たちの両親も知らないことなのですか?」
アシュリーの質問に殿下が頷く。
「でも、その前に…。敬語やめろ。殿下って呼ぶのもな。素性がバレバレ」
みんなそれぞれ了解の返事をするとジョナスが次に何を言うのかを見守った。
「この旅のことはそれぞれの父親から聞いた通り、封印のためのものだ。国民には儀式的な封印と言ってある。諸外国にはそれに疑問を持つ国もあって隙あらば勇者を亡き者にして…と狙ってる」
ジョナスは僕とアシュリーをちらりと見て、コホンと咳払いをした。
「おまえらが聞いたのはこうだろ?五人の勇者は封印することには成功した。成功したけれど邪悪な力が強すぎて、その封印では百年間しか保てない。百年経ち、封印が破られればまた同じようなことが起こってしまう。だから北の山に住む神の力を借りて百年後、封印が解ける前に再び封印し、百年間の安寧を得る。儀式じゃなく、封印が適切にできないと恐ろしいことになってしまう…」
ジョナスがみんなを見回し、みんなは頷いた。
「これらは極秘事項だ。王家と公爵家、侯爵家だけで守られてきた。この百年ごとに繰り返される奇跡のお陰で、貴族同士の争いはほとんど起きない。このことが重要なんだ」
「どう言うこと?重要って、封印、それが全てだろ?」
ダレルの質問にジョナスがもう一度みんなを見回す。
「違う。封印が重要なんじゃない。貴族同士の争いがないってことが大事なんだ。他国を見てみろ。そりゃ、強い国に攻められて滅びた国もある。でも、それも内政にまとまりがあって一丸となって戦っていれば勝てた戦を落とした国もある。クーデタで滅びた国もある。国の内側に守らなければならない継承と秘密があるからそれに全力を注ぐだろ?実際、俺たち五人がアデルにいることでアデルの、そして国の結界が強くなると言うのは本当だ。俺たちが国を護ってるのは実感してるさ。それが俺たちの存在意義だけど、内側の抑止になってるんだ」
『アシュリー、殿下は何が言いたいの?』
『殿下って呼ぶと怒られるよ』
『あっ、そうだった』
『ジョナスは今、国の秘密を俺たちに教えてるんだ。それは王宮で言うことができなかったんだろうな』
『どうして?』
『どこで、誰に聞かれるかわからないってことなのかな。俺たちの親も知らないってことは、ある意味王族が国の全ての権力を握ってるってことさ』
ジョナスの話は続く。
「そして、封印しなければ恐ろしいことが起こると思っているから、貴族が結託して王族に歯向かうことはない。今までアレースが王族以外に生まれたことはない。公爵家に生まれた例もあることはあるけれど、国王の弟の子だったりと王族にかなり近い血筋だった。だから、王族を排除することはできない。王族も努力して不満が溜まらないように配慮している。だから、建国以来一度も内政が混乱したことはなかったんだ。
アルシャントは長年戦争がないから、軍事力が他国に比べて弱い。近衛兵も実践で戦ったことのある兵はいない。エリオットやライナスでさえない。国境を守ってる兵は多少の小競り合いは経験しているが、殺し合いの真剣勝負をしてどれだけ勝ち目があるかは火を見るより明らかだ。そんな状態で国内が不安定になってみろ、直ぐに攻め落とされる。今回の旅の目的は…」
みんながジョナスを見つめる。
「封印じゃない」
「じゃあ、この旅は無駄なのか?」
「それに、各地で異変が起こってるっていうのも、情報操作なの?」
アシュリーと僕の質問にジョナスが顔の前に手を挙げて、落ち着けとお茶を淹れ直した。
「この旅は無意味じゃない。シルベスターが言ったというのも事実だ。ただ、難しい封印……じゃないということだ。でもな…今回はどうも様子がおかしらしいんだ。各地で起こる異変もそうだし、十年も早いのもそう」
「アンたちは知らないのですか?」
イーノックの言葉に使い魔が五匹揃ってテーブルの上に現れる。
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