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第六章
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
「こんなことなら、去年無理してでも出場しとけば良かったな」
教室でつまらなそうにダレルが呟いた。明日は収穫祭が開かれる。手紙移転に続いて移転魔法を頑張っていた去年の今頃はみんなそれどころじゃなかったから仕方ないけれど、今年ダレルが出場することはできないだろう。何たって勇者がそんなところに出ていたら会場が混乱してしまう。行くことさえ、近衛兵を従えた去年のジョナス殿下のようにすることはできない。僕たちに護衛はいないので難しいだろう。
移転魔法は教室で復習してから学園外での実践的な授業があった。アシュリーも僕も、勿論イーノックも難なくできた。魔力が増えて、できることが増えた。安定感があり強くなった。僕の癒しの力も強くなりクラスメイトには喜ばれている。無理をしても身体に不調を来すことはないそうだ。移転魔法はクラスメイトも教室でしっかり復習してからだったので、次々に成功させていく。
七年生は、今年は競争だ、一学年下の奴らには負けるなと敵意むき出しには言ってこなかった。ジミーやハリソンのお陰か食事会にもポツポツと参加者が増え、険悪な関係は解消している。
イーノックとハリソンはたまに会っているそうだ。僕たちが同席することもある。なるべく二人きりでは会わないように心がけているみたいだ。ギャリーとマシュー、リオンにも紹介したんだと嬉しそうに報告してくれた。アンブローズは許したのだろうか?もしかしたら三人にもハリソンと同じ魔法を掛けたのかもしれない。
マシューとはたまに寮の部屋でデートしてるみたい。七年生になれば一人部屋になるのでもう少し会いやすくなるから、今は我慢しますと言っていた。表立って言えない秘密の関係は二人の絆をより強いものにした。食堂でも兄と弟の距離感を今まで以上に気を使っている。好きって気持ちを抑えようとして抑えられなかった思いは、お互いの気持ちを確かめられたことで落ち着いたのだろう。逆に喧嘩したのかと心配されるんですとマシューが笑ってた。
◇◇◇◇◇
「なあ、フード被って行かないか?」
ダレルは諦めきれない様子だ。
「クラス全員でフード被って行くか?」
ニコラスも行きたいのだろう。でも、ダレルが行かないなら自分も行かないと決めていたみたいだ。健気だな…。
「そんなことしたら、余計目立つんじゃない?」
「そのまま行くほうがダメだろ?」
「じゃあさ、ダミーも作って何組かのグループで行くってのはどう?」
「そうだな。隊長もクラスで分けた分担も全部グチャグチャに混ぜて、で、全員がフードを被る」
次々にクラスメイトが案を出す。収穫祭に行くウキウキとした気持ちよりも、クラス全体で悪巧みをしているようなドキドキとワクワク感が教室を包む。
学園の生徒は僕たちが日常になりつつあるけれど、収穫祭に集まる人たちにとってはまだまだ珍しい存在だから用心に越したことはない。
先生にも報告して出かける準備をした。ロドニー兄上やそれぞれの副隊長にも伝えた。反対されると思っていたけれど、面白がって自分たちもフードを被って行くと言ってくれた。
『アシュ、随分大掛かりなことになったね』
『まあ、何かあれば俺たちが出て行けばなんとかなるだろ?』
『そんなことしたら、余計混乱するんじゃない』
『騒ぎにはなるだろうけど、その騒ぎを鎮めることができるのはやっぱりそうするしかないだろ?』
当日は爽やかな風が吹くお祭り日和だった。全員がフードを被りゾロゾロ歩いて行く。学園から王都の中心にある広場までは石畳の道が続き、歩くには少し遠いけれどみんなと話しながらの道は苦にならない。
僕とアシュリーは同じグループでみんなの真ん中にいる。ケントとガイは違うグループで、僕たちと同じようにみんなの真ん中でくっ付いている。あれって、僕とアシュリーのつもりなのかな?ケントが照れて顔を赤くしながらガイの顔を見上げる仕草が幸せそうだから、色々言いたいこともあるけど、まあ、…いいか。
周りを見ると、下級生の集団も上級生の集団もみんなフードを被ってる。まだお祭りの会場には遠いからフードは被らないまでもローブをしっかり着て、いつでも被れるって感じだ。今回のことがここまで広がっているとは思ってなかったのでびっくりした。
「こんなことなら、去年無理してでも出場しとけば良かったな」
教室でつまらなそうにダレルが呟いた。明日は収穫祭が開かれる。手紙移転に続いて移転魔法を頑張っていた去年の今頃はみんなそれどころじゃなかったから仕方ないけれど、今年ダレルが出場することはできないだろう。何たって勇者がそんなところに出ていたら会場が混乱してしまう。行くことさえ、近衛兵を従えた去年のジョナス殿下のようにすることはできない。僕たちに護衛はいないので難しいだろう。
移転魔法は教室で復習してから学園外での実践的な授業があった。アシュリーも僕も、勿論イーノックも難なくできた。魔力が増えて、できることが増えた。安定感があり強くなった。僕の癒しの力も強くなりクラスメイトには喜ばれている。無理をしても身体に不調を来すことはないそうだ。移転魔法はクラスメイトも教室でしっかり復習してからだったので、次々に成功させていく。
七年生は、今年は競争だ、一学年下の奴らには負けるなと敵意むき出しには言ってこなかった。ジミーやハリソンのお陰か食事会にもポツポツと参加者が増え、険悪な関係は解消している。
イーノックとハリソンはたまに会っているそうだ。僕たちが同席することもある。なるべく二人きりでは会わないように心がけているみたいだ。ギャリーとマシュー、リオンにも紹介したんだと嬉しそうに報告してくれた。アンブローズは許したのだろうか?もしかしたら三人にもハリソンと同じ魔法を掛けたのかもしれない。
マシューとはたまに寮の部屋でデートしてるみたい。七年生になれば一人部屋になるのでもう少し会いやすくなるから、今は我慢しますと言っていた。表立って言えない秘密の関係は二人の絆をより強いものにした。食堂でも兄と弟の距離感を今まで以上に気を使っている。好きって気持ちを抑えようとして抑えられなかった思いは、お互いの気持ちを確かめられたことで落ち着いたのだろう。逆に喧嘩したのかと心配されるんですとマシューが笑ってた。
◇◇◇◇◇
「なあ、フード被って行かないか?」
ダレルは諦めきれない様子だ。
「クラス全員でフード被って行くか?」
ニコラスも行きたいのだろう。でも、ダレルが行かないなら自分も行かないと決めていたみたいだ。健気だな…。
「そんなことしたら、余計目立つんじゃない?」
「そのまま行くほうがダメだろ?」
「じゃあさ、ダミーも作って何組かのグループで行くってのはどう?」
「そうだな。隊長もクラスで分けた分担も全部グチャグチャに混ぜて、で、全員がフードを被る」
次々にクラスメイトが案を出す。収穫祭に行くウキウキとした気持ちよりも、クラス全体で悪巧みをしているようなドキドキとワクワク感が教室を包む。
学園の生徒は僕たちが日常になりつつあるけれど、収穫祭に集まる人たちにとってはまだまだ珍しい存在だから用心に越したことはない。
先生にも報告して出かける準備をした。ロドニー兄上やそれぞれの副隊長にも伝えた。反対されると思っていたけれど、面白がって自分たちもフードを被って行くと言ってくれた。
『アシュ、随分大掛かりなことになったね』
『まあ、何かあれば俺たちが出て行けばなんとかなるだろ?』
『そんなことしたら、余計混乱するんじゃない』
『騒ぎにはなるだろうけど、その騒ぎを鎮めることができるのはやっぱりそうするしかないだろ?』
当日は爽やかな風が吹くお祭り日和だった。全員がフードを被りゾロゾロ歩いて行く。学園から王都の中心にある広場までは石畳の道が続き、歩くには少し遠いけれどみんなと話しながらの道は苦にならない。
僕とアシュリーは同じグループでみんなの真ん中にいる。ケントとガイは違うグループで、僕たちと同じようにみんなの真ん中でくっ付いている。あれって、僕とアシュリーのつもりなのかな?ケントが照れて顔を赤くしながらガイの顔を見上げる仕草が幸せそうだから、色々言いたいこともあるけど、まあ、…いいか。
周りを見ると、下級生の集団も上級生の集団もみんなフードを被ってる。まだお祭りの会場には遠いからフードは被らないまでもローブをしっかり着て、いつでも被れるって感じだ。今回のことがここまで広がっているとは思ってなかったのでびっくりした。
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