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第六章
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『アシュ…どうしよう?』
『聞いてみるか?』
「何かあったのか?」
返事をしない僕たちを見て、マシューの事だと確信したようだ。アシュリーがガイに頷いて返事する。
「マシューって、凄いモテてるって話は聞いた。俺の友だちも告白したけど、あっさりお断りされたって項垂れてたな。後は、断られたそいつはそんなことないって言ってたけど、いつも一緒にいるリオン・コレットと付き合ってるんじゃないかって噂があるくらいかなぁ」
ランディーが思い出しながら言う。マシューってモテるんだ。可愛いもんね。
「それだけ?」
「何か知ってるのか?」
アシュリーが手掛かりの無さに呟いた一言に、ガイが逆に質問する。
「流石、ガイだな。お前に嘘はつけない」
「そりゃ、今のアシュリーはわかりやすい。何か焦ってるのか?」
「今日の昼に食堂で聞いたんだ。虐められてるって。その話が嘘でも本当でも、イーノックの耳に入る前に消したい」
「……了解した。ランディーさま、手伝って頂けますか?」
「おう!何すれば良い?」
作戦会議が開かれた。ガイはテキパキと指示を出す。
「先ずは、このことは無闇に聞き回らないでください」
「なんでだよ?」
「虐められてるかと聞き回れば、その噂が広まるからです」
「わかった。何人かは良いだろ?俺だけじゃ限界がある」
「そうですね。信用できる人を」
ランディーが頷いて目星をつけているのか何人かの名前を挙げる。
「それから、昼食会を学年ごとに開催しよう。一年生から順番に」
「なんでだよ?」
今度はアシュリーが質問する。食事会は受付順で、特に学年を分けていない。
「二年生を集めて、話を聞けば何か引っかかるかなと思ったんだ。八年生からだと時間がかかり過ぎるからな。一年生からだと、その間に何か情報が集まるかもしれない」
食事会は毎日行われるわけじゃない。なるべく不満が出ないように何かの規則性がある方が良いだろうとガイが言う。不定期に開催されるその日程は隊長が決めている。
ダレルとニコラス、ザカリー両隊長にはマシューが虐められてるかもと伝えた。当たり前だが、イーノックには内緒で。
「勿論、協力するよ。こちらこそ感謝する。イーノックはマシューの事、凄く可愛がってる。この前も部屋に弟を呼びたいからって、わざわざ頭下げて外して欲しいって言うんだ。そんなことしなくても、イーノックの願いなら喜んで聞くのにさ」
ザカリーが言うにはイーノックに変わった様子はなく、むしろ機嫌が良いらしい。そう言えば、最近は笑顔率が高い気がする。恐らく噂は知らないのだろう。イーノックにはより親睦を深めるためと、わかったようなわからないような理由で学年ごとに食事会をすると伝えた。イーノックに反対する理由はないだろう。
「どうだった?」
再び五人で僕たちの部屋に集まった。
あれからランディーが信頼できる同級生と共に、マシューを見張ったり、噂を集めたりしてくれた。ランディーの報告を受けてから二年生との食事会を開く予定だ。
「あいつらも来たがったんだけど、遠慮してもらった」
胸を張り、自慢げに言うケントにペチッと頭を叩かれて痛っとうずくまった。
「兄さん、酷い」
「お前が悪いんだ。それで、何かわかったか?」
「そうそう!手紙いっぱい届いてた」
僕も二年生の時もらってたけど、同じような内容の手紙なのだろうか?
「他には?ラブレターがいっぱいでも、それは虐めじゃないだろ?」
「それがさ…違うんだな…」
勿体ぶった言い方で、少し顔を歪めた。
「どう言うことですか?」
ガイがランディーに聞く。
「手紙の束を持ってるマシューに後ろから近付いて、わざと肩にぶつかって、その手紙が落ちたとこを拾うふりして……あっ、ごめんって謝ったからね!そして、二、三通抜いたんだ」
大胆なことをする。
「そしたら、その内の一通に…悪口いっぱい書いてあってさ…」
これなんだけどと渡された封筒には不審な感じはしない。そこには、勇者の弟だって良い気になるな、可愛くない、勇者の弟だからみんな構うだけだと子どもっぽい悪口が書いてある。
そして、その手紙には憎悪の感情は無いように感じられた。微かに感じるこれは?
『聞いてみるか?』
「何かあったのか?」
返事をしない僕たちを見て、マシューの事だと確信したようだ。アシュリーがガイに頷いて返事する。
「マシューって、凄いモテてるって話は聞いた。俺の友だちも告白したけど、あっさりお断りされたって項垂れてたな。後は、断られたそいつはそんなことないって言ってたけど、いつも一緒にいるリオン・コレットと付き合ってるんじゃないかって噂があるくらいかなぁ」
ランディーが思い出しながら言う。マシューってモテるんだ。可愛いもんね。
「それだけ?」
「何か知ってるのか?」
アシュリーが手掛かりの無さに呟いた一言に、ガイが逆に質問する。
「流石、ガイだな。お前に嘘はつけない」
「そりゃ、今のアシュリーはわかりやすい。何か焦ってるのか?」
「今日の昼に食堂で聞いたんだ。虐められてるって。その話が嘘でも本当でも、イーノックの耳に入る前に消したい」
「……了解した。ランディーさま、手伝って頂けますか?」
「おう!何すれば良い?」
作戦会議が開かれた。ガイはテキパキと指示を出す。
「先ずは、このことは無闇に聞き回らないでください」
「なんでだよ?」
「虐められてるかと聞き回れば、その噂が広まるからです」
「わかった。何人かは良いだろ?俺だけじゃ限界がある」
「そうですね。信用できる人を」
ランディーが頷いて目星をつけているのか何人かの名前を挙げる。
「それから、昼食会を学年ごとに開催しよう。一年生から順番に」
「なんでだよ?」
今度はアシュリーが質問する。食事会は受付順で、特に学年を分けていない。
「二年生を集めて、話を聞けば何か引っかかるかなと思ったんだ。八年生からだと時間がかかり過ぎるからな。一年生からだと、その間に何か情報が集まるかもしれない」
食事会は毎日行われるわけじゃない。なるべく不満が出ないように何かの規則性がある方が良いだろうとガイが言う。不定期に開催されるその日程は隊長が決めている。
ダレルとニコラス、ザカリー両隊長にはマシューが虐められてるかもと伝えた。当たり前だが、イーノックには内緒で。
「勿論、協力するよ。こちらこそ感謝する。イーノックはマシューの事、凄く可愛がってる。この前も部屋に弟を呼びたいからって、わざわざ頭下げて外して欲しいって言うんだ。そんなことしなくても、イーノックの願いなら喜んで聞くのにさ」
ザカリーが言うにはイーノックに変わった様子はなく、むしろ機嫌が良いらしい。そう言えば、最近は笑顔率が高い気がする。恐らく噂は知らないのだろう。イーノックにはより親睦を深めるためと、わかったようなわからないような理由で学年ごとに食事会をすると伝えた。イーノックに反対する理由はないだろう。
「どうだった?」
再び五人で僕たちの部屋に集まった。
あれからランディーが信頼できる同級生と共に、マシューを見張ったり、噂を集めたりしてくれた。ランディーの報告を受けてから二年生との食事会を開く予定だ。
「あいつらも来たがったんだけど、遠慮してもらった」
胸を張り、自慢げに言うケントにペチッと頭を叩かれて痛っとうずくまった。
「兄さん、酷い」
「お前が悪いんだ。それで、何かわかったか?」
「そうそう!手紙いっぱい届いてた」
僕も二年生の時もらってたけど、同じような内容の手紙なのだろうか?
「他には?ラブレターがいっぱいでも、それは虐めじゃないだろ?」
「それがさ…違うんだな…」
勿体ぶった言い方で、少し顔を歪めた。
「どう言うことですか?」
ガイがランディーに聞く。
「手紙の束を持ってるマシューに後ろから近付いて、わざと肩にぶつかって、その手紙が落ちたとこを拾うふりして……あっ、ごめんって謝ったからね!そして、二、三通抜いたんだ」
大胆なことをする。
「そしたら、その内の一通に…悪口いっぱい書いてあってさ…」
これなんだけどと渡された封筒には不審な感じはしない。そこには、勇者の弟だって良い気になるな、可愛くない、勇者の弟だからみんな構うだけだと子どもっぽい悪口が書いてある。
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