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第六章
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「俺の初めてはジュリアンだよ?」
「でも……な、慣れてたよ?」
さっきも僕だけだって言ってくれたけど、そのことはちょっと引っかかる。全てアシュリー任せだったから、もしアシュリーが僕と同じように何も知らなければ、こんなふうに肌を合わせることはなかった。
「キスは…最初は触れるだけだったろ?」
「うん」
「それに、いろんな奴に聞いた。ジュリが辛くないようにって」
えっ?えっ?聞いたの?
そりゃ、誰かに聞かないとわからないだろうけど誰に聞いたか、物凄く気になったけど、それは…聞けなかった。誰の名前を聞いてもこれから会うたびに赤面してしまいそうで怖かったから。
翌日の朝、ケントが教室にいる僕を手招きする。二人で人目につかない階段の踊り場で、うずくまるようにヒソヒソと話し始めた。
「あの…昨日ありがとう。ガイとキ、キスした時びっくりしたんだ。でも、ジュリアンから聞いてたから、ああ、これかって思えた。ガイとアシュリーに怒られちゃったけど、ジュリアンに相談して良かったよ」
見られていたことを気にしていないのか、僕のも見たからお互い様だからなのかそのことは責めなかった。
何てったって、記念すべきファーストキスを他人に見られたんだ。僕だったら嫌だな…。
「それで…アシュリーがその先って言ってたことってさ…し、舌を入れる以上に何かあるってこと?ガイに聞いても教えてくれないんだよ。知ってるみたいだけど、誤魔化すようにキスするだけでさ。アシュリーに渡された物も、何って聞いてもはぐらかすし。俺にあんな態度とるなんて今までなかったのに。ガイは俺のための物だって言うだけで、その使い道を教えてくれないんだよ。ジュリアンなら知ってると思ったんだ」
恥ずかしさからか捲し立てるようにしゃべる。あれから部屋に戻ってまたキスはしたんだね。あんなに悩んでたのにあっさり解決したんだ。まあ、それは良かったんだけど…。
「…あ、あの」
その先って…昨日僕たちがした、あれだよね…。これ、アシュリーが心配してたことだ。
どうしよう…。
でも、僕に相談して良かったって言ってくれた。昨日ケントがそんな相談しないって言ってたのは意味もわからず、その場逃れにただ言っただけなのだろう。
「あのね…どちらでもいいんだけど、僕たちはアシュリーがしてくれるんだけど、あのね…」
はぁ…恥かしい。
「アシュリーが何をするの?」
ええい!男は度胸だ!
「アシュリーのが僕のところに挿入る…」
あぁぁぁっ…ダメ!
「アシュリーの何がジュリアンのどこに入るの?」
僕も知らなかったからケントが知らないのもわかるけど、これはどう説明したらいいんだろう…?
「ほら、昨日ちゃんと教えてやらないからだぞ?キスで誤魔化すなんて」
「でも、まさかこんなに疑問に思ってるなんて知らなかった」
「あれ渡してやったのに。もしかして、もう持ってた?」
「まあ、一応用意はしてたけどな…」
「なんだよ、ちゃんと考えてるんじゃないか。何でしないんだよ?」
「それは…ケントだから」
「まあ、ジュリと同じくらい…いや、ジュリ以上の初心さだな…噂とかもお前が遮断してたんだろ?仕方ないさ。純粋培養だからな。ガイが悪いんだぞ?」
「まあ、ここまでとはな」
「ここが寮の部屋なら裸になってお互いの…いや、想像したらおかしいな」
「そうだな…見てみたい気もするけど」
「俺はやだね。ケントはまあ、許すとして、ガイがジュリアンの裸見るのは…」
「俺だってアシュリーにケントの裸なんて見せない」
うずくまるように座り、暗闇に向けていた身体をギギッと後ろに回す。
アシュリーとガイが笑顔で僕たちを見下ろしていた。
「あ、あの…?」
「相談は終わった?」
アシュリーの含み笑いが怖い。
「ガ、ガイ…聞いてた?」
「そうですね…」
「どこから?」
「多分、全て」
「!……怒ってる?」
「まあ…、昨日は相談しないって言われてたのに」
「だって、ガイが教えてくれないから!」
「そんなに知りたいのですか?」
コクリと頷き、期待に瞳を輝かせる。
「ここでは無理ですよ?」
「そうなの?そう言えば裸になって…とか言ってたな」
「覚悟はありますか?」
「何の覚悟?」
「俺のものになるって覚悟です」
「俺がガイの?」
「そうです。嫌なら…教えてあげられない」
「そんな…」
「脅すわけじゃありません。俺はケントが…」
「俺が?」
「…欲しい」
いつの間にか僕はアシュリーの腕の中でケントはガイと向き合ってる。
「よくわからないけど、俺は…ガイが側に居てくれればそれでいいんだけど。それじゃ、ダメなのか?」
「いえ、十分です」
『アシュ、ごめんね』
『困ってたな』
『だって…恥かしい。でも、ケントは真剣でさ。いつもお世話になってるから、そのご恩返しがしたかったんだ』
『仕方ないな。ワタワタしてるジュリは可愛かったから、いいよ』
翌日、ケントは恥ずかしそうに僕に言った。
「何がどこに挿入るかわかったよ…」
真っ赤な顔をして、耳元で報告してくれた律儀な隊長だった。
「でも……な、慣れてたよ?」
さっきも僕だけだって言ってくれたけど、そのことはちょっと引っかかる。全てアシュリー任せだったから、もしアシュリーが僕と同じように何も知らなければ、こんなふうに肌を合わせることはなかった。
「キスは…最初は触れるだけだったろ?」
「うん」
「それに、いろんな奴に聞いた。ジュリが辛くないようにって」
えっ?えっ?聞いたの?
そりゃ、誰かに聞かないとわからないだろうけど誰に聞いたか、物凄く気になったけど、それは…聞けなかった。誰の名前を聞いてもこれから会うたびに赤面してしまいそうで怖かったから。
翌日の朝、ケントが教室にいる僕を手招きする。二人で人目につかない階段の踊り場で、うずくまるようにヒソヒソと話し始めた。
「あの…昨日ありがとう。ガイとキ、キスした時びっくりしたんだ。でも、ジュリアンから聞いてたから、ああ、これかって思えた。ガイとアシュリーに怒られちゃったけど、ジュリアンに相談して良かったよ」
見られていたことを気にしていないのか、僕のも見たからお互い様だからなのかそのことは責めなかった。
何てったって、記念すべきファーストキスを他人に見られたんだ。僕だったら嫌だな…。
「それで…アシュリーがその先って言ってたことってさ…し、舌を入れる以上に何かあるってこと?ガイに聞いても教えてくれないんだよ。知ってるみたいだけど、誤魔化すようにキスするだけでさ。アシュリーに渡された物も、何って聞いてもはぐらかすし。俺にあんな態度とるなんて今までなかったのに。ガイは俺のための物だって言うだけで、その使い道を教えてくれないんだよ。ジュリアンなら知ってると思ったんだ」
恥ずかしさからか捲し立てるようにしゃべる。あれから部屋に戻ってまたキスはしたんだね。あんなに悩んでたのにあっさり解決したんだ。まあ、それは良かったんだけど…。
「…あ、あの」
その先って…昨日僕たちがした、あれだよね…。これ、アシュリーが心配してたことだ。
どうしよう…。
でも、僕に相談して良かったって言ってくれた。昨日ケントがそんな相談しないって言ってたのは意味もわからず、その場逃れにただ言っただけなのだろう。
「あのね…どちらでもいいんだけど、僕たちはアシュリーがしてくれるんだけど、あのね…」
はぁ…恥かしい。
「アシュリーが何をするの?」
ええい!男は度胸だ!
「アシュリーのが僕のところに挿入る…」
あぁぁぁっ…ダメ!
「アシュリーの何がジュリアンのどこに入るの?」
僕も知らなかったからケントが知らないのもわかるけど、これはどう説明したらいいんだろう…?
「ほら、昨日ちゃんと教えてやらないからだぞ?キスで誤魔化すなんて」
「でも、まさかこんなに疑問に思ってるなんて知らなかった」
「あれ渡してやったのに。もしかして、もう持ってた?」
「まあ、一応用意はしてたけどな…」
「なんだよ、ちゃんと考えてるんじゃないか。何でしないんだよ?」
「それは…ケントだから」
「まあ、ジュリと同じくらい…いや、ジュリ以上の初心さだな…噂とかもお前が遮断してたんだろ?仕方ないさ。純粋培養だからな。ガイが悪いんだぞ?」
「まあ、ここまでとはな」
「ここが寮の部屋なら裸になってお互いの…いや、想像したらおかしいな」
「そうだな…見てみたい気もするけど」
「俺はやだね。ケントはまあ、許すとして、ガイがジュリアンの裸見るのは…」
「俺だってアシュリーにケントの裸なんて見せない」
うずくまるように座り、暗闇に向けていた身体をギギッと後ろに回す。
アシュリーとガイが笑顔で僕たちを見下ろしていた。
「あ、あの…?」
「相談は終わった?」
アシュリーの含み笑いが怖い。
「ガ、ガイ…聞いてた?」
「そうですね…」
「どこから?」
「多分、全て」
「!……怒ってる?」
「まあ…、昨日は相談しないって言われてたのに」
「だって、ガイが教えてくれないから!」
「そんなに知りたいのですか?」
コクリと頷き、期待に瞳を輝かせる。
「ここでは無理ですよ?」
「そうなの?そう言えば裸になって…とか言ってたな」
「覚悟はありますか?」
「何の覚悟?」
「俺のものになるって覚悟です」
「俺がガイの?」
「そうです。嫌なら…教えてあげられない」
「そんな…」
「脅すわけじゃありません。俺はケントが…」
「俺が?」
「…欲しい」
いつの間にか僕はアシュリーの腕の中でケントはガイと向き合ってる。
「よくわからないけど、俺は…ガイが側に居てくれればそれでいいんだけど。それじゃ、ダメなのか?」
「いえ、十分です」
『アシュ、ごめんね』
『困ってたな』
『だって…恥かしい。でも、ケントは真剣でさ。いつもお世話になってるから、そのご恩返しがしたかったんだ』
『仕方ないな。ワタワタしてるジュリは可愛かったから、いいよ』
翌日、ケントは恥ずかしそうに僕に言った。
「何がどこに挿入るかわかったよ…」
真っ赤な顔をして、耳元で報告してくれた律儀な隊長だった。
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