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第五章
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「ありがとうございます。でもそれは、勇者であるとわかる前の対応です。何者かがわかった今、重い罰が下ってもわたしは受け入れます。どうか…」
「何度も言いますが、あの時、ガイはジョナス殿下に引き渡したし、殿下にも尋問されたはず。俺たちはその時はそうであると知っていたし、ガイが気付いたと思ってたよ。発表まではまだ時間があったけど、口止めしなかったのに口外しないでくれてありがたかった。混乱するからね…、色々と」
「ガイ、どうなんだ?」
テッドが驚いてガイに詰め寄る。
「俺は……、そうかもしれないとは思ったけど、発表までは自分がそうであることも知らないはずだから違うと思い込んでた。いや…違っていてくれと思ったんだ。アシュリーがそうであってもジュリアンは違うと…」
「お前…」
弟の胸ぐらを掴み今にも殴りかかりそうになるのをアシュリーが制した。
「テッド、手を離せ!ガイも!ガイに対する今回のことは何もなかった。殿下にもそう言われたんだろ?ガイ」
「ジュリアンが一緒に行ってくれて、殿下に頼んでくれたから」
ケントが申し訳なさそうに言う。
あっ、アシュリーには内緒だったのに。
『ジュリ!行ったの?』
『ごめん…、アシュリー。…少し顔だして、殿下にお願いして、直ぐに帰ったよ?』
『仕方ないな…お仕置きだな』
『えっと…はい』
下を向いて赤くなってるだろう顔を隠す。
僕とアシュリーの会話を知らない三人は突然下を向いた僕を不審に思ったかもしれないな。
「俺たちの周りの対応はこれから変わってしまう。こんなふうに…な。だから、今まで通り接して欲しいんだ。特にケントはジュリアンの友だちとして今まで以上に仲良くして欲しい。今回のこともジュリアンの希望だから。だからテッドが気にやむことは何もないよ」
「ありがとうございます」
テッドはヘナヘナとその場に座り込んでしまった。勇者を拐かした罪なんてどんな恐ろしいことになるかと、発表からこっち生きてる心地がしなかったと呟くと、ようやく弱々しく笑った。
ガイに支えられ僕とアシュリーにいつまでも頭を下げながら離れた。
◇◇◇◇◇
本日、最初の授業はバーンズ先生の魔法学。
「みなさん、もうとっくに知っているとは思うけど、このクラスになんと勇者が四人も居る」
「先生は知ってたんですか?」
クラスメイトが色々聞きたいことがあるとウズウズしている。
「勿論、知っていましたよ」
「いつから?いつから知ってたんですか?」
「そうだね…、先生が成人した時かな」
「え~、教えてくれても良いのに」
そうだ、そうだと大合唱が始まった。
「こらこら、本人でさえ知らないことだぞ?」
先生がアシュリーと僕にウインクする。
「君たちはこれから勇者を支えていくんだよ。学園がざわつき、落ち着いて勉強できなくなる。今まで、四人に引っ張られて頑張ったよね。五年生まで誰も脱落せずに同じクラスに在籍し続けてる学年は初めてだそうだ。これからも一緒に成長して欲しい。そして、それは学園を卒業してからもだ」
「「「はい!」」」
「でもね、君たちだけの勇者じゃない」
「当たり前じゃないですか?」
「どう言う意味ですか?」
「勇者に触れたいと無闇に近寄ろうとする人もいるだろう。でも、その人を力で遠ざけるだけじゃダメなんだ」
「でも、守るためには力も必要です」
「では、君たちが…例えば学年が違ったりしたら、挨拶くらいしたいと思わないかい?」
「そりゃ、名前とか覚えてもらいたい」
「声なんか掛けられたら泣いて喜ぶよ」
「俺も!」
「じゃあ、たまたま同じクラスになっただけの勇者のクラスメイトに邪魔されたらどう思う?」
「それは…でも、たまたまじゃないです!」
「頑張ったんだ!」
「そうだね。先生方はみんなの努力は知っています。上級生の中にも、私のクラスの頑張りを認めてくれる人もいます。でも、下級生や頑張りを知らない人は、やはり、たまたまなのですよ。たまたま同じ年に生まれた。たまたま魔力が大きかった。それはやっかみもあるでしょう」
「では、どうすればいいのですか?」
「それは、皆さんで考えてください。正解は一つではありません。皆さんがもっと高みに行くための試練だと思って、勇者とともに成長してください」
「「「はい!」」」
「何度も言いますが、あの時、ガイはジョナス殿下に引き渡したし、殿下にも尋問されたはず。俺たちはその時はそうであると知っていたし、ガイが気付いたと思ってたよ。発表まではまだ時間があったけど、口止めしなかったのに口外しないでくれてありがたかった。混乱するからね…、色々と」
「ガイ、どうなんだ?」
テッドが驚いてガイに詰め寄る。
「俺は……、そうかもしれないとは思ったけど、発表までは自分がそうであることも知らないはずだから違うと思い込んでた。いや…違っていてくれと思ったんだ。アシュリーがそうであってもジュリアンは違うと…」
「お前…」
弟の胸ぐらを掴み今にも殴りかかりそうになるのをアシュリーが制した。
「テッド、手を離せ!ガイも!ガイに対する今回のことは何もなかった。殿下にもそう言われたんだろ?ガイ」
「ジュリアンが一緒に行ってくれて、殿下に頼んでくれたから」
ケントが申し訳なさそうに言う。
あっ、アシュリーには内緒だったのに。
『ジュリ!行ったの?』
『ごめん…、アシュリー。…少し顔だして、殿下にお願いして、直ぐに帰ったよ?』
『仕方ないな…お仕置きだな』
『えっと…はい』
下を向いて赤くなってるだろう顔を隠す。
僕とアシュリーの会話を知らない三人は突然下を向いた僕を不審に思ったかもしれないな。
「俺たちの周りの対応はこれから変わってしまう。こんなふうに…な。だから、今まで通り接して欲しいんだ。特にケントはジュリアンの友だちとして今まで以上に仲良くして欲しい。今回のこともジュリアンの希望だから。だからテッドが気にやむことは何もないよ」
「ありがとうございます」
テッドはヘナヘナとその場に座り込んでしまった。勇者を拐かした罪なんてどんな恐ろしいことになるかと、発表からこっち生きてる心地がしなかったと呟くと、ようやく弱々しく笑った。
ガイに支えられ僕とアシュリーにいつまでも頭を下げながら離れた。
◇◇◇◇◇
本日、最初の授業はバーンズ先生の魔法学。
「みなさん、もうとっくに知っているとは思うけど、このクラスになんと勇者が四人も居る」
「先生は知ってたんですか?」
クラスメイトが色々聞きたいことがあるとウズウズしている。
「勿論、知っていましたよ」
「いつから?いつから知ってたんですか?」
「そうだね…、先生が成人した時かな」
「え~、教えてくれても良いのに」
そうだ、そうだと大合唱が始まった。
「こらこら、本人でさえ知らないことだぞ?」
先生がアシュリーと僕にウインクする。
「君たちはこれから勇者を支えていくんだよ。学園がざわつき、落ち着いて勉強できなくなる。今まで、四人に引っ張られて頑張ったよね。五年生まで誰も脱落せずに同じクラスに在籍し続けてる学年は初めてだそうだ。これからも一緒に成長して欲しい。そして、それは学園を卒業してからもだ」
「「「はい!」」」
「でもね、君たちだけの勇者じゃない」
「当たり前じゃないですか?」
「どう言う意味ですか?」
「勇者に触れたいと無闇に近寄ろうとする人もいるだろう。でも、その人を力で遠ざけるだけじゃダメなんだ」
「でも、守るためには力も必要です」
「では、君たちが…例えば学年が違ったりしたら、挨拶くらいしたいと思わないかい?」
「そりゃ、名前とか覚えてもらいたい」
「声なんか掛けられたら泣いて喜ぶよ」
「俺も!」
「じゃあ、たまたま同じクラスになっただけの勇者のクラスメイトに邪魔されたらどう思う?」
「それは…でも、たまたまじゃないです!」
「頑張ったんだ!」
「そうだね。先生方はみんなの努力は知っています。上級生の中にも、私のクラスの頑張りを認めてくれる人もいます。でも、下級生や頑張りを知らない人は、やはり、たまたまなのですよ。たまたま同じ年に生まれた。たまたま魔力が大きかった。それはやっかみもあるでしょう」
「では、どうすればいいのですか?」
「それは、皆さんで考えてください。正解は一つではありません。皆さんがもっと高みに行くための試練だと思って、勇者とともに成長してください」
「「「はい!」」」
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