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第五章
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コンコンとノック音がしてそれぞれの兄弟が入ってきた。これは宰相さまの配慮だろう。
今日の予定はまだ詰まってる。少しの間、息抜きをさせてやろうという優しさだ。
「ダレル、大丈夫か?」
「兄貴…ダメ…泣きそう」
兄君と姉君に頭を撫で回されて勇者形無しだ。
「しゃんとなさい。これからが本番よ」
「わかってるよ、姉貴」
「まあ、外ではお姉さまと呼びなさいと何度言えばわかるの?」
「いいだろ?ここにはこいつらしかいないんだから」
「仕方ないわね…」
いつも見せない末っ子の顔は、ダレルが二人に愛されているのがよくわかる。
「俺は吐きそう」
自分の弟を抱きしめて弱音を吐くイーノックはいつもの大らかさは欠片もなく、弱々しい。
「兄さま、しっかり!バルコニーで手を振る兄さま、かっこよかったよ」
今年一年生の弟に慰められてるイーノックは最早勇者ではない。
「イーノックでもこんなに動揺することあるんだな」
「兄上、よしてくださいよ。俺だって緊張くらいします」
「何を言ってる。剣術大会の決勝でさえ、余裕の笑みを浮かべてただろう?お前の剣の腕は知っていたけれど、挑発するようなことをして、気が気じゃなかったぞ?」
「あっ、ズルい!また、僕の知らない話する!」
「また、ゆっくりしてやるからな」
弟の頭を撫でながら、いつも僕に向かう笑顔を見せる。ああ、僕はイーノックにとって弟のような存在だったんだな。あれやこれやと世話を焼いてくれたのは実家にいるこの弟と被っていたのだろうか?四歳も違うのに…。僕って…よっぽど頼りなく思われてたんだな…。
アシュリーのところにもフランクさまが来られた。
「兄上…ありがとう」
僕の手を握りしめていた手を離し、フランクさまに挨拶する。
「いいよ、そのままで」
「いえ…だいぶ落ち着いたから」
僕に微笑みかけてからフランクさまを見る。
「ジュリアン、今日は一段と綺麗だね」
「ありがとうございます」
「兄上、俺に会いに来てくれたんじゃないの?」
「お前はジュリアンが側にいれば、それだけで良いんだろ?俺なんか邪魔だろ?」
拗ねたようにふざけて、アシュリーを揶揄うフランクさまは楽しそうだ。
僕の所には兄上たちがみんな来てくれた。ルシアン兄上に抱っこされたセシリアは輝く瞳をウルウルさせて、僕に飛びつく。
「ジュリ兄さま!」
「セシリア来てくれたんだね」
「兄さま凄いね。このローブが秘宝のローブなの?」
「いや、違うよ」
秘宝はそれぞれの指輪に戻してある。バルコニーに出た時は秘宝のローブだったけど、今椅子にかけてあるのは、今回昔話になぞらえて作られた儀式用の物だ。みんなの椅子にもそれぞれの色のローブがかかってる。そのローブのポケットからギルバートたちは可愛い姿を覗かせる。
消えて無くなったと思ったけれど、秘宝を指輪に戻すと自然とそれまでのローブが現れてびっくりした。アシュリーたちはバルコニーに出る時から剣や杖を指輪に戻していた。パレードの時はそれぞれ腰に帯刀するけれどバルコニーからは見えないし、剣を振るわけにはいかないからね。
「そうなんだ…残念」
「後で見せてあげるよ」
「うん!ありがとう。ジュリ兄さま、大好き」
この頃益々おしゃまさんになったセシリアは我が家のアイドルだ。
「セシリア、お兄ちゃんたちにも挨拶させておくれ」
椅子に座る僕の膝の上にちょこんと座りまるで仕方ないわね、いいわよと言いたげなセシリアは僕を見て可愛く笑う。
「ジュリ、疲れてない?」
「大丈夫だよ、ロドニー兄さま」
「凄く綺麗だったよ」
「ルシアン兄さま…、そこは、かっこ良かったの方が嬉しいな…」
「いや、綺麗だったよ。心配になるくらいさ。俺の隣で見てた人がミシェルさまは男だって聞いたけど女じゃないのか、とか嫁に欲しいな、なんて言っててさ殴ってやろうかと思ったよ」
綺麗な顔を歪めて物騒なことを言うルシアン兄上の方こそ女顔負けの麗しさだけど、本人は気付いていないのかな?
「ジュリアン、勇者であっても俺たちの弟であることには変わりないんだから、何かあったら言っておいで」
「はい、クラレンス兄さま」
「俺たちはジュリの事は全力で守るから」
改めてことの重大さに気付いたように、今まで繰り返し言われたことを自分自身が確かめるように言われた。それから、会ったことのないダレルの姉君やイーノックの弟くんに挨拶したり賑やかに過ごした。
今日の予定はまだ詰まってる。少しの間、息抜きをさせてやろうという優しさだ。
「ダレル、大丈夫か?」
「兄貴…ダメ…泣きそう」
兄君と姉君に頭を撫で回されて勇者形無しだ。
「しゃんとなさい。これからが本番よ」
「わかってるよ、姉貴」
「まあ、外ではお姉さまと呼びなさいと何度言えばわかるの?」
「いいだろ?ここにはこいつらしかいないんだから」
「仕方ないわね…」
いつも見せない末っ子の顔は、ダレルが二人に愛されているのがよくわかる。
「俺は吐きそう」
自分の弟を抱きしめて弱音を吐くイーノックはいつもの大らかさは欠片もなく、弱々しい。
「兄さま、しっかり!バルコニーで手を振る兄さま、かっこよかったよ」
今年一年生の弟に慰められてるイーノックは最早勇者ではない。
「イーノックでもこんなに動揺することあるんだな」
「兄上、よしてくださいよ。俺だって緊張くらいします」
「何を言ってる。剣術大会の決勝でさえ、余裕の笑みを浮かべてただろう?お前の剣の腕は知っていたけれど、挑発するようなことをして、気が気じゃなかったぞ?」
「あっ、ズルい!また、僕の知らない話する!」
「また、ゆっくりしてやるからな」
弟の頭を撫でながら、いつも僕に向かう笑顔を見せる。ああ、僕はイーノックにとって弟のような存在だったんだな。あれやこれやと世話を焼いてくれたのは実家にいるこの弟と被っていたのだろうか?四歳も違うのに…。僕って…よっぽど頼りなく思われてたんだな…。
アシュリーのところにもフランクさまが来られた。
「兄上…ありがとう」
僕の手を握りしめていた手を離し、フランクさまに挨拶する。
「いいよ、そのままで」
「いえ…だいぶ落ち着いたから」
僕に微笑みかけてからフランクさまを見る。
「ジュリアン、今日は一段と綺麗だね」
「ありがとうございます」
「兄上、俺に会いに来てくれたんじゃないの?」
「お前はジュリアンが側にいれば、それだけで良いんだろ?俺なんか邪魔だろ?」
拗ねたようにふざけて、アシュリーを揶揄うフランクさまは楽しそうだ。
僕の所には兄上たちがみんな来てくれた。ルシアン兄上に抱っこされたセシリアは輝く瞳をウルウルさせて、僕に飛びつく。
「ジュリ兄さま!」
「セシリア来てくれたんだね」
「兄さま凄いね。このローブが秘宝のローブなの?」
「いや、違うよ」
秘宝はそれぞれの指輪に戻してある。バルコニーに出た時は秘宝のローブだったけど、今椅子にかけてあるのは、今回昔話になぞらえて作られた儀式用の物だ。みんなの椅子にもそれぞれの色のローブがかかってる。そのローブのポケットからギルバートたちは可愛い姿を覗かせる。
消えて無くなったと思ったけれど、秘宝を指輪に戻すと自然とそれまでのローブが現れてびっくりした。アシュリーたちはバルコニーに出る時から剣や杖を指輪に戻していた。パレードの時はそれぞれ腰に帯刀するけれどバルコニーからは見えないし、剣を振るわけにはいかないからね。
「そうなんだ…残念」
「後で見せてあげるよ」
「うん!ありがとう。ジュリ兄さま、大好き」
この頃益々おしゃまさんになったセシリアは我が家のアイドルだ。
「セシリア、お兄ちゃんたちにも挨拶させておくれ」
椅子に座る僕の膝の上にちょこんと座りまるで仕方ないわね、いいわよと言いたげなセシリアは僕を見て可愛く笑う。
「ジュリ、疲れてない?」
「大丈夫だよ、ロドニー兄さま」
「凄く綺麗だったよ」
「ルシアン兄さま…、そこは、かっこ良かったの方が嬉しいな…」
「いや、綺麗だったよ。心配になるくらいさ。俺の隣で見てた人がミシェルさまは男だって聞いたけど女じゃないのか、とか嫁に欲しいな、なんて言っててさ殴ってやろうかと思ったよ」
綺麗な顔を歪めて物騒なことを言うルシアン兄上の方こそ女顔負けの麗しさだけど、本人は気付いていないのかな?
「ジュリアン、勇者であっても俺たちの弟であることには変わりないんだから、何かあったら言っておいで」
「はい、クラレンス兄さま」
「俺たちはジュリの事は全力で守るから」
改めてことの重大さに気付いたように、今まで繰り返し言われたことを自分自身が確かめるように言われた。それから、会ったことのないダレルの姉君やイーノックの弟くんに挨拶したり賑やかに過ごした。
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