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第五章
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
は、恥ずかしい。
やっぱりこんなことするんじゃなかった。アシュリーはまだ、帰ってこない。着替えよう。イーノックと剣の稽古するから先に部屋に戻っててと言ってたからまだ帰ってこないはず…。
「……!…ジュリ…?」
「あっ…」
帰ってきた!
「お、おか、えり…。は、早かったね。僕、ちょっと着替えるから…ははっ…待っててね?」
「待って!それ、俺に見せるために着てくれたんだろう?」
「あっ…、う、うん…でも、…」
「綺麗だよ。持ってきてたの?このドレスとウイッグ」
「母上がね…」
「俺のためじゃないんだ…」
「ア、アシュのために着たんだよ?ずっとトランクの中にあったんだ。今度の誕生日はパーティーがないだろうから、着られないと思ったから…アシュにだけ見せようかなって…喜んでくれるかなって思ったんだ」
「嬉しいよ。でも、着替えようとしてたの?」
アシュリーは僕を責めるわけじゃないけど、少し寂しそうに…ちょっと拗ねた感じで、帰ってくるのがもうちょっと遅かったら見られなかったんだな…って呟くから申し訳なくなった。
「だって…待ってる間に恥ずかしくなって」
そうなんだ。
いつかは見せたいと思っていたから、ふと思い立ってドレスを着た。だけど待ってる間に恥ずかしくなってきて…。そんなに時間経ってないと思ってたけど、随分迷っていたみたい。
今日、化粧はしていない。道具も持ってないし、アシュリーは素顔の方が好きって言ってくれた。ただ、パーティーでドレスを着た最初の時はなるべく僕だとわからないようにと思ったから化粧をしてもらった。次の年もイライザさまは僕を飾り立てようと待ち構えていて、化粧をした僕を見て凄く満足そうな笑顔だった。
ウイッグは付けたから、部屋に入って来たアシュリーの足はドアのところで一瞬止まった。今は僕を抱きしめ、少し腕を伸ばして全身を見ようとしている。
「綺麗だよ。パーティーの時のように化粧してるのは、それはそれでいつもとは違うジュリになって、唆るけど…やっぱり、素顔の方がジュリらしいから好きだな。まあ、俺にとって、どんなジュリでも、ジュリならそれで良いんだけど…。…少し、踊ろうか?」
「うん…」
音楽はないけれど、簡単なステップでゆったりと踊る。
「ジュリ、愛してるよ。ありがとう」
ステップを踏みながら触れるだけのキスをする。しばらくそうしていたけれど、逞しいアシュリーの腕が僕の腰を支え上げ、顔の高さを合わせた。
目を見て微笑み合い、額同士を合わせる。
「アシュリー、大好き」
「ジュリアン、可愛い」
今年、母上がこっそり……入れていたドレスはフリルがふんだんに使われた可愛い感じのドレスだった。
着なかったけど、この四年間トランクに入っていたのは十歳を少し超えたばかりの子には大人びたものだったけど、パーティーであのドレスを着た僕を見てやっぱりフリフリが似合うって思ったみたい。
パーティーの後、興奮気味にローザと話してるのを聞いた。勘弁して欲しいよ…。母上やローザに似合うと言われて嬉しいわけないけど、アシュリーに可愛いと言われるのは…好き。
淡い水色で、膝丈くらいの動きやすいドレスはアシュリーにクルクルと回されてひらひらと舞う蝶のように踊る。
「おいで…」
「うん」
アシュリーに抱きしめられる。横抱きにされてそのままダンスを踊るようにテーブルの周りを回る。途中でキスをするのも忘れない。
首に腕を回しこの頃ますます男らしくなった、大好きな人の顔を見る。碧い瞳がキラキラ輝き見惚れてしまう。声も低くなり、僕を呼び寄せる囁く声は、それだけで身体の奥がピクンとなる。
「ジュリ…」
「あぁっ…んっ…」
「声で感じるの?」
「やん…」
耳元で名前を呼ばれるだけで背中にピリピリと震えが走る。いつの間にか抱かれたままベッドに座っていた。アシュリーに跨がって首に縋り付く。膝丈のフリルはいつもは隠れている足を晒してしまう。
アシュリーの手がその晒された足を撫でる。タイツは履いてない。脹脛から踵、指先にマッサージでもするように丁寧に触れる指に甘い声が漏れてしまう。
右手で触れるのは僕の左足だけなのに、右足がモゾモゾとする。
「あんっ…」
足先に神経が集中して爪を揉むように押されるだけで恥ずかしいくらい声が漏れる。勿論初めて触られたわけじゃないけど、いつの間にかフリルに隠れる太ももに触れられるとピクンと身体が跳ねる。
膝の上に股がる僕が倒れないように支えていた左腕は僕がアシュリーに抱きついているから落っこちないと安心したのか両手で、両方の太ももをサワサワする。
は、恥ずかしい。
やっぱりこんなことするんじゃなかった。アシュリーはまだ、帰ってこない。着替えよう。イーノックと剣の稽古するから先に部屋に戻っててと言ってたからまだ帰ってこないはず…。
「……!…ジュリ…?」
「あっ…」
帰ってきた!
「お、おか、えり…。は、早かったね。僕、ちょっと着替えるから…ははっ…待っててね?」
「待って!それ、俺に見せるために着てくれたんだろう?」
「あっ…、う、うん…でも、…」
「綺麗だよ。持ってきてたの?このドレスとウイッグ」
「母上がね…」
「俺のためじゃないんだ…」
「ア、アシュのために着たんだよ?ずっとトランクの中にあったんだ。今度の誕生日はパーティーがないだろうから、着られないと思ったから…アシュにだけ見せようかなって…喜んでくれるかなって思ったんだ」
「嬉しいよ。でも、着替えようとしてたの?」
アシュリーは僕を責めるわけじゃないけど、少し寂しそうに…ちょっと拗ねた感じで、帰ってくるのがもうちょっと遅かったら見られなかったんだな…って呟くから申し訳なくなった。
「だって…待ってる間に恥ずかしくなって」
そうなんだ。
いつかは見せたいと思っていたから、ふと思い立ってドレスを着た。だけど待ってる間に恥ずかしくなってきて…。そんなに時間経ってないと思ってたけど、随分迷っていたみたい。
今日、化粧はしていない。道具も持ってないし、アシュリーは素顔の方が好きって言ってくれた。ただ、パーティーでドレスを着た最初の時はなるべく僕だとわからないようにと思ったから化粧をしてもらった。次の年もイライザさまは僕を飾り立てようと待ち構えていて、化粧をした僕を見て凄く満足そうな笑顔だった。
ウイッグは付けたから、部屋に入って来たアシュリーの足はドアのところで一瞬止まった。今は僕を抱きしめ、少し腕を伸ばして全身を見ようとしている。
「綺麗だよ。パーティーの時のように化粧してるのは、それはそれでいつもとは違うジュリになって、唆るけど…やっぱり、素顔の方がジュリらしいから好きだな。まあ、俺にとって、どんなジュリでも、ジュリならそれで良いんだけど…。…少し、踊ろうか?」
「うん…」
音楽はないけれど、簡単なステップでゆったりと踊る。
「ジュリ、愛してるよ。ありがとう」
ステップを踏みながら触れるだけのキスをする。しばらくそうしていたけれど、逞しいアシュリーの腕が僕の腰を支え上げ、顔の高さを合わせた。
目を見て微笑み合い、額同士を合わせる。
「アシュリー、大好き」
「ジュリアン、可愛い」
今年、母上がこっそり……入れていたドレスはフリルがふんだんに使われた可愛い感じのドレスだった。
着なかったけど、この四年間トランクに入っていたのは十歳を少し超えたばかりの子には大人びたものだったけど、パーティーであのドレスを着た僕を見てやっぱりフリフリが似合うって思ったみたい。
パーティーの後、興奮気味にローザと話してるのを聞いた。勘弁して欲しいよ…。母上やローザに似合うと言われて嬉しいわけないけど、アシュリーに可愛いと言われるのは…好き。
淡い水色で、膝丈くらいの動きやすいドレスはアシュリーにクルクルと回されてひらひらと舞う蝶のように踊る。
「おいで…」
「うん」
アシュリーに抱きしめられる。横抱きにされてそのままダンスを踊るようにテーブルの周りを回る。途中でキスをするのも忘れない。
首に腕を回しこの頃ますます男らしくなった、大好きな人の顔を見る。碧い瞳がキラキラ輝き見惚れてしまう。声も低くなり、僕を呼び寄せる囁く声は、それだけで身体の奥がピクンとなる。
「ジュリ…」
「あぁっ…んっ…」
「声で感じるの?」
「やん…」
耳元で名前を呼ばれるだけで背中にピリピリと震えが走る。いつの間にか抱かれたままベッドに座っていた。アシュリーに跨がって首に縋り付く。膝丈のフリルはいつもは隠れている足を晒してしまう。
アシュリーの手がその晒された足を撫でる。タイツは履いてない。脹脛から踵、指先にマッサージでもするように丁寧に触れる指に甘い声が漏れてしまう。
右手で触れるのは僕の左足だけなのに、右足がモゾモゾとする。
「あんっ…」
足先に神経が集中して爪を揉むように押されるだけで恥ずかしいくらい声が漏れる。勿論初めて触られたわけじゃないけど、いつの間にかフリルに隠れる太ももに触れられるとピクンと身体が跳ねる。
膝の上に股がる僕が倒れないように支えていた左腕は僕がアシュリーに抱きついているから落っこちないと安心したのか両手で、両方の太ももをサワサワする。
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