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第五章
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
クラレンス兄上が卒業した。
会わせたい人がいるから王宮に来いと言われた。王宮に…と言うだけで誰に会わせたいかはわかった。
ジョナス殿下だろう。
殿下は兄上と同じ学年で、食堂や校舎で何度もお見かけしたことはある。
一、二年生の時は、まだまだ魔力をコントロール出来ていなかったから他人の魔力を極力感じないようにしてた。それでも殿下の魔力は威圧的で近寄りたくなかった。
三年生になるとアシュリーの側にいたから、きっとアシュリーが守ってくれてたんだ。
殿下はさりげなく僕に近寄るけど、僕もさりげなく離れた。不敬罪には当たらないと思う。殿下を目の前にして、挨拶もせずに逃げ出したりしてない。
同じ部屋に入られるだけでその存在はわかるから、避けやすかった…いや、避けたとかは内緒だけど…。
あ、会いたくない。
本能が会いたくないと訴える。
兄上にアシュリーも一緒に行って良いかと聞くとダメだと言われた。王宮に出向くことさえアシュリーには内緒にしておけと言われた。
それに、アシュリーは実家の用事でバタバタとしている。殿下が裏で手を回したとか…?
…怖い。
ギルバートに指輪に戻ってもらい、何かあったら助けてねと頼んだ。指輪に戻る前にギルバートには、マクスウェルに王宮に行くことを伝えておいてと言っておいた。
僕はアシュリーに言ってないから、兄上の命令には背いてない。仕方ないよね…不測の事態に備えるのは身を守るためだよ。
兄上も一緒に会ってくれると思っていたけど、一緒なのは殿下が待っておられる部屋の扉の前までだった。
王宮にはあまり来たことはないから迷ってしまいそう。兄上は何度も来たのかその足取りに迷いはなかった。
殿下の部屋は幾つかあるのか、扉を開けて中に入ると私室のようで、センスの良い飾り棚には高そうな置物やこんな食器は洗うのが大変そうだなと思うほどゴージャスで綺麗なお皿やティーカップ&ソーサー、水差しなどが並ぶ。その中にさりげなく魔法の道具などもありとても興味深かった。
けれど、ジョナス殿下がこちらを見ているのがわかると一気に緊張してしまった。
「こちらへ」
促されて殿下が座っておられるソファーの向かいのソファーの脇に立つと、更に座れと言われた。このソファーも猫足の豪華な物で座り心地は良さそうだ。
きっと、学園で会った時は一生徒として接することも出来ただろうけど、卒業された今となっては王位継承順第三位の殿下とそんなに親しげにすることは出来ない。
学園でも避けてきた僕としては出来るだけ近寄りたくはない。
「そこが嫌なら…俺の膝の上でも良いけど。どちらが好みだ?俺としては是非膝の上に座ってもらいたいけどな」
な、何を考えておいでなのだろう?
「いえ、こちらで…こちらに座らさせて頂きます。失礼します」
「そんなに畏まらなくても良いのに…。一度ゆっくり話してみたいと思ってたんだ。クラレンスにいくら頼んでも在学中に会わせてくれなくてね。俺が食堂に入る前には確かにそこに居たのに君はいつしか消えてるし…あれ、避けてたの?」
「……」
そんなこと聞かれて、はいと答えるわけないじゃないか。
「卒業したからね。クラレンスも、もう俺の願いを無下には出来ないだろう」
「権力を使ったということですか?」
「そんなに大袈裟なことじゃないだろう?」
そりゃそうだろう。
この殿下は王太子である兄君よりある意味国民的人気者で、英雄である。
殿下が何かをした訳じゃない。その存在自体が伝説なのだから。小さな頃から注目を浴び、きっと叶わないことは何一つ無かったのではではないだろうか?
まあ、兄上は願いを聞かず僕との面会は却下し続けてくれていたようだから、兄上には感謝である。今日も付いて来てくれれば良かったのに…。
ジョナス殿下は五人の勇者の一人…アレースの生まれ変わりだ。
僕たちは英雄の成人年齢の15歳(今は18歳がそうであるけど昔は15歳が成人年齢だったらしくその名残)に達するまで公表はされないけれど、王族に生まれるアレースさまの生まれ変わりだけは誕生と共に発表されて主役不在のまま祝賀行事が行われると聞いた。
クラレンス兄上が卒業した。
会わせたい人がいるから王宮に来いと言われた。王宮に…と言うだけで誰に会わせたいかはわかった。
ジョナス殿下だろう。
殿下は兄上と同じ学年で、食堂や校舎で何度もお見かけしたことはある。
一、二年生の時は、まだまだ魔力をコントロール出来ていなかったから他人の魔力を極力感じないようにしてた。それでも殿下の魔力は威圧的で近寄りたくなかった。
三年生になるとアシュリーの側にいたから、きっとアシュリーが守ってくれてたんだ。
殿下はさりげなく僕に近寄るけど、僕もさりげなく離れた。不敬罪には当たらないと思う。殿下を目の前にして、挨拶もせずに逃げ出したりしてない。
同じ部屋に入られるだけでその存在はわかるから、避けやすかった…いや、避けたとかは内緒だけど…。
あ、会いたくない。
本能が会いたくないと訴える。
兄上にアシュリーも一緒に行って良いかと聞くとダメだと言われた。王宮に出向くことさえアシュリーには内緒にしておけと言われた。
それに、アシュリーは実家の用事でバタバタとしている。殿下が裏で手を回したとか…?
…怖い。
ギルバートに指輪に戻ってもらい、何かあったら助けてねと頼んだ。指輪に戻る前にギルバートには、マクスウェルに王宮に行くことを伝えておいてと言っておいた。
僕はアシュリーに言ってないから、兄上の命令には背いてない。仕方ないよね…不測の事態に備えるのは身を守るためだよ。
兄上も一緒に会ってくれると思っていたけど、一緒なのは殿下が待っておられる部屋の扉の前までだった。
王宮にはあまり来たことはないから迷ってしまいそう。兄上は何度も来たのかその足取りに迷いはなかった。
殿下の部屋は幾つかあるのか、扉を開けて中に入ると私室のようで、センスの良い飾り棚には高そうな置物やこんな食器は洗うのが大変そうだなと思うほどゴージャスで綺麗なお皿やティーカップ&ソーサー、水差しなどが並ぶ。その中にさりげなく魔法の道具などもありとても興味深かった。
けれど、ジョナス殿下がこちらを見ているのがわかると一気に緊張してしまった。
「こちらへ」
促されて殿下が座っておられるソファーの向かいのソファーの脇に立つと、更に座れと言われた。このソファーも猫足の豪華な物で座り心地は良さそうだ。
きっと、学園で会った時は一生徒として接することも出来ただろうけど、卒業された今となっては王位継承順第三位の殿下とそんなに親しげにすることは出来ない。
学園でも避けてきた僕としては出来るだけ近寄りたくはない。
「そこが嫌なら…俺の膝の上でも良いけど。どちらが好みだ?俺としては是非膝の上に座ってもらいたいけどな」
な、何を考えておいでなのだろう?
「いえ、こちらで…こちらに座らさせて頂きます。失礼します」
「そんなに畏まらなくても良いのに…。一度ゆっくり話してみたいと思ってたんだ。クラレンスにいくら頼んでも在学中に会わせてくれなくてね。俺が食堂に入る前には確かにそこに居たのに君はいつしか消えてるし…あれ、避けてたの?」
「……」
そんなこと聞かれて、はいと答えるわけないじゃないか。
「卒業したからね。クラレンスも、もう俺の願いを無下には出来ないだろう」
「権力を使ったということですか?」
「そんなに大袈裟なことじゃないだろう?」
そりゃそうだろう。
この殿下は王太子である兄君よりある意味国民的人気者で、英雄である。
殿下が何かをした訳じゃない。その存在自体が伝説なのだから。小さな頃から注目を浴び、きっと叶わないことは何一つ無かったのではではないだろうか?
まあ、兄上は願いを聞かず僕との面会は却下し続けてくれていたようだから、兄上には感謝である。今日も付いて来てくれれば良かったのに…。
ジョナス殿下は五人の勇者の一人…アレースの生まれ変わりだ。
僕たちは英雄の成人年齢の15歳(今は18歳がそうであるけど昔は15歳が成人年齢だったらしくその名残)に達するまで公表はされないけれど、王族に生まれるアレースさまの生まれ変わりだけは誕生と共に発表されて主役不在のまま祝賀行事が行われると聞いた。
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