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第四章
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浄化の魔法をかけたのか抱き寄せて、髪を梳く手は濡れていなくて恥ずかしさがちょっとだけ和らいだ。
「ジュリアン、大丈夫?」
ぼんやりしていたからか、心配そうな顔は碧い瞳が揺らいでいる。嫌がったと思ったのか寂しそうな、いつもは自信に溢れている顔が不安気で、そんな不安な顔をさせてしまったことに申し訳なくなった。
「アシュ、大好き」
裸で抱きつくのは慣れないけど、手に触れるアシュリーの肌は気持ち良く、腰に抱きついてアザにキスをした。
「嫌じゃなかった?」
「嫌なわけないよ。は、恥ずかしいだけだから」
アシュリーの逞しい身体に、アザだけじゃなくいろんなところにキスをする。胸、鎖骨、腕…舌を這わすとピクッと身体が跳ねる。
「んっ…」
漏れる吐息が僕を煽る。
しばらくはしたいようにさせていてくれたのに、いつの間にかアシュリーの身体の下にいてキスを受ける。
真上にいる大好きな人の首に手を回し、キスをせがんだ。ふっと微笑んだ顔が見えたけど、いつもより激しいキスで目を閉じてしまう。
舌が歯列をなぞるように動き、根元から絡ませる。閉じられない口から漏れる唾液が頬を伝って首に落ちる。アシュリーの顔が見たいのに…。けれど、与えられる甘い刺激に次第にそんなことは考えられなくなっていく。
「あっ…ふっ……っん」
二人ともまだ服は着ていないから、アシュリーと僕のおちんちんがお互いに触れる。わざと擦れるようにしているのか、アシュリーの腰が揺れる。すでに硬さを取り戻したお互いのものがもどかしくすれ違ったりする。
「あんっ…」
さっき、浄化されたはずなのに先走りでヌルヌルになって滑り、焦ったくなって僕の腰も自然と揺れてしまう。
「ア、アシュ…嫌だ…」
「…止める?」
止めると聞いてくれる間もアシュリーの腰はゆるゆると動く。
「あっ…やっ…ち、違くて……さ、触って…欲し…」
「……っ…ジュリ…」
「ダ、ダメだった?」
「いや、嬉しいよ」
笑顔で答えてくれたから、大丈夫。きっと僕の顔は真っ赤になってるだろうけど精一杯の笑顔を返した。
その日の夜、僕はベッドに座ったアシュリーの前に座っている。
両脚はアシュリーの太ももの上で、僕の脚がアシュリーの腰に回り、アシュリーの腕が僕の腰を抱く。
「ジュリアン、朝言ったこと覚えてる?」
「朝?」
朝は色々あった。
あり過ぎた。
ギルバートとマクシミリアンの事から始まり、人生で初めての経験をした。
あれから、アシュリーが作ってくれた遅い朝食を二人で食べた。ここにキッチンがあって、アシュリーが作ってくれて本当に良かった。誰も僕たちが何をしていたかなんてわかるはずもないけど一人でニヤけて、赤面して…きっと不審者に見えてしまうだろう。
「朝、僕変なこと言った?」
自覚はある。
数々の痴態を思い出すと後悔はないけど恥ずかしい。
「やっぱり覚えてないか…。俺の事、何て呼んだ?」
「アシュリーはアシュリーだよ?」
「ミネルヴァ…愛してるって言ったの忘れた?」
「ミネルヴァ……?」
その言葉と一緒にいろんなものが頭の中を駆け巡る。
夢のようだけど、違う。
僕は起きているし、自分の意識もしっかりとある。
これは記憶…僕の前にはアシュリーにどことなく似ている、でももっと歳上の…二十代後半くらいの精悍な男の人が、僕を抱きしめている。
でも僕も僕じゃない。
『ミシェル…』
全てを包むような囁きは僕じゃない僕に愛を告げる。
『愛してる』
アシュリーに抱き付き胸に顔を埋めて、頭の中に広がる空を見上げた。
森の中で、近くに滝があるのか水音が激しく聞こえる。雲が棚引き心地よい風が吹いている。小鳥の鳴く声が聞こえ、風に揺れる葉の音がカサカサと微かな音を立てる。
季節は初夏なのか青々とした木々に囲まれ、下草が茂り、ここはあまり人が入らない場所なのかもしれない。
ミシェルと呼ばれた僕は嬉しそうに……ミネルヴァにキスをする。
僕はその人なのか、上から二人を見ているのかいろいろな情報は同時に流れ込み混乱する。
「思い出した?」
ぼんやりとしてアシュリーを見ると心配そうな眼が覗き込む。
「うん。僕は…」
……僕はそのまま気絶してしまった。
「ジュリアン、大丈夫?」
ぼんやりしていたからか、心配そうな顔は碧い瞳が揺らいでいる。嫌がったと思ったのか寂しそうな、いつもは自信に溢れている顔が不安気で、そんな不安な顔をさせてしまったことに申し訳なくなった。
「アシュ、大好き」
裸で抱きつくのは慣れないけど、手に触れるアシュリーの肌は気持ち良く、腰に抱きついてアザにキスをした。
「嫌じゃなかった?」
「嫌なわけないよ。は、恥ずかしいだけだから」
アシュリーの逞しい身体に、アザだけじゃなくいろんなところにキスをする。胸、鎖骨、腕…舌を這わすとピクッと身体が跳ねる。
「んっ…」
漏れる吐息が僕を煽る。
しばらくはしたいようにさせていてくれたのに、いつの間にかアシュリーの身体の下にいてキスを受ける。
真上にいる大好きな人の首に手を回し、キスをせがんだ。ふっと微笑んだ顔が見えたけど、いつもより激しいキスで目を閉じてしまう。
舌が歯列をなぞるように動き、根元から絡ませる。閉じられない口から漏れる唾液が頬を伝って首に落ちる。アシュリーの顔が見たいのに…。けれど、与えられる甘い刺激に次第にそんなことは考えられなくなっていく。
「あっ…ふっ……っん」
二人ともまだ服は着ていないから、アシュリーと僕のおちんちんがお互いに触れる。わざと擦れるようにしているのか、アシュリーの腰が揺れる。すでに硬さを取り戻したお互いのものがもどかしくすれ違ったりする。
「あんっ…」
さっき、浄化されたはずなのに先走りでヌルヌルになって滑り、焦ったくなって僕の腰も自然と揺れてしまう。
「ア、アシュ…嫌だ…」
「…止める?」
止めると聞いてくれる間もアシュリーの腰はゆるゆると動く。
「あっ…やっ…ち、違くて……さ、触って…欲し…」
「……っ…ジュリ…」
「ダ、ダメだった?」
「いや、嬉しいよ」
笑顔で答えてくれたから、大丈夫。きっと僕の顔は真っ赤になってるだろうけど精一杯の笑顔を返した。
その日の夜、僕はベッドに座ったアシュリーの前に座っている。
両脚はアシュリーの太ももの上で、僕の脚がアシュリーの腰に回り、アシュリーの腕が僕の腰を抱く。
「ジュリアン、朝言ったこと覚えてる?」
「朝?」
朝は色々あった。
あり過ぎた。
ギルバートとマクシミリアンの事から始まり、人生で初めての経験をした。
あれから、アシュリーが作ってくれた遅い朝食を二人で食べた。ここにキッチンがあって、アシュリーが作ってくれて本当に良かった。誰も僕たちが何をしていたかなんてわかるはずもないけど一人でニヤけて、赤面して…きっと不審者に見えてしまうだろう。
「朝、僕変なこと言った?」
自覚はある。
数々の痴態を思い出すと後悔はないけど恥ずかしい。
「やっぱり覚えてないか…。俺の事、何て呼んだ?」
「アシュリーはアシュリーだよ?」
「ミネルヴァ…愛してるって言ったの忘れた?」
「ミネルヴァ……?」
その言葉と一緒にいろんなものが頭の中を駆け巡る。
夢のようだけど、違う。
僕は起きているし、自分の意識もしっかりとある。
これは記憶…僕の前にはアシュリーにどことなく似ている、でももっと歳上の…二十代後半くらいの精悍な男の人が、僕を抱きしめている。
でも僕も僕じゃない。
『ミシェル…』
全てを包むような囁きは僕じゃない僕に愛を告げる。
『愛してる』
アシュリーに抱き付き胸に顔を埋めて、頭の中に広がる空を見上げた。
森の中で、近くに滝があるのか水音が激しく聞こえる。雲が棚引き心地よい風が吹いている。小鳥の鳴く声が聞こえ、風に揺れる葉の音がカサカサと微かな音を立てる。
季節は初夏なのか青々とした木々に囲まれ、下草が茂り、ここはあまり人が入らない場所なのかもしれない。
ミシェルと呼ばれた僕は嬉しそうに……ミネルヴァにキスをする。
僕はその人なのか、上から二人を見ているのかいろいろな情報は同時に流れ込み混乱する。
「思い出した?」
ぼんやりとしてアシュリーを見ると心配そうな眼が覗き込む。
「うん。僕は…」
……僕はそのまま気絶してしまった。
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