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第四章
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
この頃よく夢を見る。
同じ夢のような気がする。
朝起きると内容は忘れているけど、どこか懐かしい感じがする。そして、思い出したいけど何一つ思い出せない。
今までも、もちろん夢は見たことある。
ギルバートとお花畑でじゃれてる夢とか、まだアシュリーと仲良くなる前からアシュリーが登場して僕を喜ばせたりしてた。僕の夢なんだから、アシュリーが会いに来てくれたんじゃなくて、僕の願望が見せる夢だとしても嬉しいものだよね。
夢を見ていたことはわかってるのに、何故どんな夢だったかを覚えていないのだろう?
「何だったのかな…」
「おはよう、ジュリ。どうした?」
僕の顔を覗き込み、キスとともに抱きしめられた。
「おはよう、アシュ。夢をね…」
「夢?」
「夢を見るの」
「どんな夢」
「忘れちゃうんだ…。でも、いつも同じ夢のような気がするけど、わからない…」
「いい夢かな」
「う~ん、わからない…」
「きっと、いい夢だよ」
不安そうにしていたからか優しいキスで宥めてくれる。
「あっ……んっ…アシュ、好き…」
「ジュリアン、愛してるよ。俺が付いてるから、何かあったら直ぐに言うんだよ」
「うん。ありがと」
アシュリーはいろんな意味で強くなった。
もう誰にもヘタレなんて言われないだろう。僕は最初からそんなことは一度も思ったことないけどね。
兄上たちが守ってくれているからか、魔法の防御が効いているからか手紙が届くことも、渡されることもなくなった。
アシュリーと付き合いだした頃、クラスメイトたちは気持ち悪いからか、いい顔はしなかった。けれど今では応援してくれる。
僕たちは四年生になった。
今年も変わらずアシュリーと同じ部屋で、今も一緒のベッドで寝ている。今日、学園は休みなので、朝のまったりとした時間を堪能していた。
三年生の後期からアシュリーが真剣に勉強に取り組むようになって、僕も負けられないと頑張った。
クラスメイトも煽られるように勉強したから近年稀に見る高成績を修め、全員が同じクラスになれた。全員のレベルが高いらしく授業によっては例年と同じではなく応用や上の学年の教科書を持ってくる先生もいる。
「ジュリ、聞きたいことがあるんだ」
「何?」
「俺に隠してることない?」
「隠してること?」
はて?アシュリーに隠してることは何もない…。
あっ!ある…。
「えっと、…言わなきゃダメ?」
「言って欲しいな」
そう言えば、感謝祭の時さらっと、女装してたとか言ってしまったような気がする…。でも、アシュリーは何の反応もしなかった。
アシュリーの誕生パーティーの時も…久しぶりに見たい…とか言われたような気がするけど、違うよね?…えっっ!
「アシュリーはもしかして知ってるの?僕が女装してたの…」
「どうしたの?知ってるよ」
「や、やっぱり…あ、あのね…アシュリーには入学前に何度も会ってたんだ。助けてもらったこともある…あの時はありがとう」
「どういたしまして。ドレス姿のジュリアンは可愛かったな…。今も充分可愛いけどね。いや、あの頃よりもっと綺麗になった。ダンス踊った時のジュリは最高だったよ」
「じゃあ、後は隠してることはないよ」
あれが僕だったと知られてるならもう怖いものはない。あんな恥ずかしい過去をサラリと言われて拍子抜けしちゃう。
「ほんと?」
「ないよ」
「じゃあ、これは?」
アシュリーはそう言いながら僕の右手の人差し指を撫でる。
普通の目眩しの魔法はその物の質量を変えられるものじゃない。けれど、この指輪は違った。そこにあるのに、他人が触っても触れることは出来ない。
だから、今アシュリーは僕の指を、指だけを撫でる。
「アシュリーには判るの?」
「判る。ここには指輪が、その中には…」
「えっ?」
「俺に見せて」
「じゃあ、アシュも見せて」
「やっぱり、判ってたんだな」
アシュリーも同じように指輪を隠し、同じようにその中には使い魔を飼っていた。
知ってたけど、ギルバートが僕以外の人間を遠ざけるようにアシュリーの使い魔も同じなら無理に会わなくてもいいと思ってた。
いずれは仲良くして欲しいとは思うけど、僕とアシュリーの関係がもっと深くなれば問題なく仲良くなれると思うんだ。
この頃よく夢を見る。
同じ夢のような気がする。
朝起きると内容は忘れているけど、どこか懐かしい感じがする。そして、思い出したいけど何一つ思い出せない。
今までも、もちろん夢は見たことある。
ギルバートとお花畑でじゃれてる夢とか、まだアシュリーと仲良くなる前からアシュリーが登場して僕を喜ばせたりしてた。僕の夢なんだから、アシュリーが会いに来てくれたんじゃなくて、僕の願望が見せる夢だとしても嬉しいものだよね。
夢を見ていたことはわかってるのに、何故どんな夢だったかを覚えていないのだろう?
「何だったのかな…」
「おはよう、ジュリ。どうした?」
僕の顔を覗き込み、キスとともに抱きしめられた。
「おはよう、アシュ。夢をね…」
「夢?」
「夢を見るの」
「どんな夢」
「忘れちゃうんだ…。でも、いつも同じ夢のような気がするけど、わからない…」
「いい夢かな」
「う~ん、わからない…」
「きっと、いい夢だよ」
不安そうにしていたからか優しいキスで宥めてくれる。
「あっ……んっ…アシュ、好き…」
「ジュリアン、愛してるよ。俺が付いてるから、何かあったら直ぐに言うんだよ」
「うん。ありがと」
アシュリーはいろんな意味で強くなった。
もう誰にもヘタレなんて言われないだろう。僕は最初からそんなことは一度も思ったことないけどね。
兄上たちが守ってくれているからか、魔法の防御が効いているからか手紙が届くことも、渡されることもなくなった。
アシュリーと付き合いだした頃、クラスメイトたちは気持ち悪いからか、いい顔はしなかった。けれど今では応援してくれる。
僕たちは四年生になった。
今年も変わらずアシュリーと同じ部屋で、今も一緒のベッドで寝ている。今日、学園は休みなので、朝のまったりとした時間を堪能していた。
三年生の後期からアシュリーが真剣に勉強に取り組むようになって、僕も負けられないと頑張った。
クラスメイトも煽られるように勉強したから近年稀に見る高成績を修め、全員が同じクラスになれた。全員のレベルが高いらしく授業によっては例年と同じではなく応用や上の学年の教科書を持ってくる先生もいる。
「ジュリ、聞きたいことがあるんだ」
「何?」
「俺に隠してることない?」
「隠してること?」
はて?アシュリーに隠してることは何もない…。
あっ!ある…。
「えっと、…言わなきゃダメ?」
「言って欲しいな」
そう言えば、感謝祭の時さらっと、女装してたとか言ってしまったような気がする…。でも、アシュリーは何の反応もしなかった。
アシュリーの誕生パーティーの時も…久しぶりに見たい…とか言われたような気がするけど、違うよね?…えっっ!
「アシュリーはもしかして知ってるの?僕が女装してたの…」
「どうしたの?知ってるよ」
「や、やっぱり…あ、あのね…アシュリーには入学前に何度も会ってたんだ。助けてもらったこともある…あの時はありがとう」
「どういたしまして。ドレス姿のジュリアンは可愛かったな…。今も充分可愛いけどね。いや、あの頃よりもっと綺麗になった。ダンス踊った時のジュリは最高だったよ」
「じゃあ、後は隠してることはないよ」
あれが僕だったと知られてるならもう怖いものはない。あんな恥ずかしい過去をサラリと言われて拍子抜けしちゃう。
「ほんと?」
「ないよ」
「じゃあ、これは?」
アシュリーはそう言いながら僕の右手の人差し指を撫でる。
普通の目眩しの魔法はその物の質量を変えられるものじゃない。けれど、この指輪は違った。そこにあるのに、他人が触っても触れることは出来ない。
だから、今アシュリーは僕の指を、指だけを撫でる。
「アシュリーには判るの?」
「判る。ここには指輪が、その中には…」
「えっ?」
「俺に見せて」
「じゃあ、アシュも見せて」
「やっぱり、判ってたんだな」
アシュリーも同じように指輪を隠し、同じようにその中には使い魔を飼っていた。
知ってたけど、ギルバートが僕以外の人間を遠ざけるようにアシュリーの使い魔も同じなら無理に会わなくてもいいと思ってた。
いずれは仲良くして欲しいとは思うけど、僕とアシュリーの関係がもっと深くなれば問題なく仲良くなれると思うんだ。
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