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第三章
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『どう?話してみて?』
『わ、わからない……アシュ…できてる?』
『ああ、完璧!』
するとまた、キスをする。
触れるだけの唇は直ぐに離れた。
「もうわかったよ?」
「嫌か?」
「…嫌じゃないけど…どうして?」
『どうしてって…わからないの?』
「またその質問?テレパシーだよね」
『違う…キスする理由』
「…好きだから?」
『そうだよ』
碧い瞳が僕を捉え瞬きすら出来ない。触れる唇が熱い。少しの間、アシュリーからのキスで思考が麻痺してしまった。
「アシュリー、大丈夫?」
「何が?」
「僕の気がアシュリーにまとわりついてる」
「ジュリアンの気は癒しだ。身体の調子が良くなったり、俺の魔力が増えるだけだから問題ない」
「僕、そんな力ないよ」
「今は、わからなくて良い。順番に理解していけば」
これからこの部屋以外では僕たちの会話は基本テレパシーで話せとアシュリーに言われた。
少しずつ慣れれば良いと言われてもやっぱり疲れる。けれど、アシュリーの側にいると辛さは少なくなる。アシュリーは僕に癒されると言っていたけど、僕はアシュリーに癒される。
僕は重大なことを忘れていた。
自分の恋心を公開羞恥プレイでバラしてしまったことを…。アシュリーは「気にするな」と言ってくれたけど、気になるものは気になる。みんなの視線が突き刺さるような気がするのは、気のせいなんかじゃない。
翌日の朝食の席一つとっても昨日までとは違う。僕とアシュリーの間にいつも空いていた席はなかった。いつものように一つ席を空けると、『こっち座って?』と目を見て、(脳に直接)言われたら抗うことはできない。
だから、昨日あの場にいなくて噂だけを聞いた人たちは、確かめるように遠巻きながらこちらをチラチラと見てくる。
は、恥ずかしい…。
兄上たちも入れ替わりでやってくる。
「ジュリ、本当なのか?」
一番最初に朝食の時にやって来たロドニー兄上は、隣のアシュリーを睨むけれど僕が頷くとギュッと抱きしめた。
「酷いことされたら俺に言うんだよ」と耳元で囁いて離れた。
昼の休み時間はルシアン兄上が来た。ブロンドの髪を揺らしながら、綺麗な兄上の顔が曇り、心配そうに僕を見てる。
「ジュリ、聞いたよ。良いのか?」
「な、何が?」
「好きなのか?」
「うん…。兄さま…怒るの?反対する?」
「いや、ジュリが良いなら応援するよ」
何かあったら必ず相談するんだよと言い残して、友だちのところに戻った。そして、その夜クラレンス兄上が僕たちの部屋に来た。
「ジュリアン、おいで」
部屋に備えてあるテーブルセットの椅子に座り、隣の椅子を指差す。アシュリーをチラリと見ると頷いているので素直に座った。
何を言われるかと緊張する。クラレンス兄上はいつも優しかった。他の二人の兄上ももちろん優しかったけれど、包み込むように全てを受け入れてくれていることにいつも落ち着いた。
「アシュリーもこちらへ」
僕の後ろに立ち『大丈夫だから』と心に伝えてくれた。
「先ずはアシュリー…もう伝えたのか?」
「いや、未だです」
「そう…これは義務か?」
「違う!俺は真剣に…」
「わかった。信じよう」
「な、何のこと?」
「ジュリアン、俺からは言えないんだ。アシュリーの事が好きなのか?」
みんな同じ質問をする。
異常なことなのかな?
僕の周りにもチラホラと男同士のカップルはいる。それでも…ダメ、なのかな…?
「兄さま…」
…いけないことなの?言葉には出来なかった。
クラレンス兄上に認められなければ、いくら好きでも諦めなきゃいけない。
『ちゃんと自分の気持ちを言うんだよ。大丈夫だから』
後ろを振り返りアシュリーを見ると肩をトントンと叩かれた。その温もりに勇気をもらいクラレンス兄上を見た。
「僕はアシュリーが好き。小さな時からずっとアシュリーを見てきたんだ。入学してからもずっと…」
「わかった。アシュリー、ジュリアンの事は頼んだよ。何かあれば、我が家が動く。父上にも報告しておくから」
「えっ、父さまにも言うの?」
「そうだよジュリアン。何かあればアドラム家が全力で守るから」
「あ、あの…そんな大袈裟なことなの?」
父上に報告して、家を挙げてアシュリーと付き合うことを応援してくれるってこと?兄さまの反応が意外すぎて、驚く。
昨日気持ちを確かめ合って付き合い始めたばかりなのに展開が早すぎてどう返事していいかわからない。
アシュリーの父君にも報告するのかな?大丈夫なのかな…。
『ジュリアン』
『何?アシュリー』
『祝福してくれてるんだ。心配しなくてもいいよ』
『…うん』
「ありがとう、兄さま」
兄上が帰った後、アシュリーはいつまでも僕を離さなかった。
膝の上に座らせてずっと僕の髪に指を絡めて遊んでいるみたいだ。
「アシュ?どうしたの」
「ジュリアン…ありがとう。嬉しかったよ」
「……?何のこと?」
「ほら、さっきクラレンスに…小さな時から俺の事好きって…」
「うん…本当だよ」
碧い瞳が僕を見つめる。
「それにしても…ジュリアンは兄貴たちに愛されてるんだな」
「過保護なだけだよ。女の子みたいに思ってるんだよ…きっと」
「そうかな…。ジュリ…キスしていい?」
「うん…」
触れるだけの優しいキスはお互いを慰め、お互いを癒した。
『わ、わからない……アシュ…できてる?』
『ああ、完璧!』
するとまた、キスをする。
触れるだけの唇は直ぐに離れた。
「もうわかったよ?」
「嫌か?」
「…嫌じゃないけど…どうして?」
『どうしてって…わからないの?』
「またその質問?テレパシーだよね」
『違う…キスする理由』
「…好きだから?」
『そうだよ』
碧い瞳が僕を捉え瞬きすら出来ない。触れる唇が熱い。少しの間、アシュリーからのキスで思考が麻痺してしまった。
「アシュリー、大丈夫?」
「何が?」
「僕の気がアシュリーにまとわりついてる」
「ジュリアンの気は癒しだ。身体の調子が良くなったり、俺の魔力が増えるだけだから問題ない」
「僕、そんな力ないよ」
「今は、わからなくて良い。順番に理解していけば」
これからこの部屋以外では僕たちの会話は基本テレパシーで話せとアシュリーに言われた。
少しずつ慣れれば良いと言われてもやっぱり疲れる。けれど、アシュリーの側にいると辛さは少なくなる。アシュリーは僕に癒されると言っていたけど、僕はアシュリーに癒される。
僕は重大なことを忘れていた。
自分の恋心を公開羞恥プレイでバラしてしまったことを…。アシュリーは「気にするな」と言ってくれたけど、気になるものは気になる。みんなの視線が突き刺さるような気がするのは、気のせいなんかじゃない。
翌日の朝食の席一つとっても昨日までとは違う。僕とアシュリーの間にいつも空いていた席はなかった。いつものように一つ席を空けると、『こっち座って?』と目を見て、(脳に直接)言われたら抗うことはできない。
だから、昨日あの場にいなくて噂だけを聞いた人たちは、確かめるように遠巻きながらこちらをチラチラと見てくる。
は、恥ずかしい…。
兄上たちも入れ替わりでやってくる。
「ジュリ、本当なのか?」
一番最初に朝食の時にやって来たロドニー兄上は、隣のアシュリーを睨むけれど僕が頷くとギュッと抱きしめた。
「酷いことされたら俺に言うんだよ」と耳元で囁いて離れた。
昼の休み時間はルシアン兄上が来た。ブロンドの髪を揺らしながら、綺麗な兄上の顔が曇り、心配そうに僕を見てる。
「ジュリ、聞いたよ。良いのか?」
「な、何が?」
「好きなのか?」
「うん…。兄さま…怒るの?反対する?」
「いや、ジュリが良いなら応援するよ」
何かあったら必ず相談するんだよと言い残して、友だちのところに戻った。そして、その夜クラレンス兄上が僕たちの部屋に来た。
「ジュリアン、おいで」
部屋に備えてあるテーブルセットの椅子に座り、隣の椅子を指差す。アシュリーをチラリと見ると頷いているので素直に座った。
何を言われるかと緊張する。クラレンス兄上はいつも優しかった。他の二人の兄上ももちろん優しかったけれど、包み込むように全てを受け入れてくれていることにいつも落ち着いた。
「アシュリーもこちらへ」
僕の後ろに立ち『大丈夫だから』と心に伝えてくれた。
「先ずはアシュリー…もう伝えたのか?」
「いや、未だです」
「そう…これは義務か?」
「違う!俺は真剣に…」
「わかった。信じよう」
「な、何のこと?」
「ジュリアン、俺からは言えないんだ。アシュリーの事が好きなのか?」
みんな同じ質問をする。
異常なことなのかな?
僕の周りにもチラホラと男同士のカップルはいる。それでも…ダメ、なのかな…?
「兄さま…」
…いけないことなの?言葉には出来なかった。
クラレンス兄上に認められなければ、いくら好きでも諦めなきゃいけない。
『ちゃんと自分の気持ちを言うんだよ。大丈夫だから』
後ろを振り返りアシュリーを見ると肩をトントンと叩かれた。その温もりに勇気をもらいクラレンス兄上を見た。
「僕はアシュリーが好き。小さな時からずっとアシュリーを見てきたんだ。入学してからもずっと…」
「わかった。アシュリー、ジュリアンの事は頼んだよ。何かあれば、我が家が動く。父上にも報告しておくから」
「えっ、父さまにも言うの?」
「そうだよジュリアン。何かあればアドラム家が全力で守るから」
「あ、あの…そんな大袈裟なことなの?」
父上に報告して、家を挙げてアシュリーと付き合うことを応援してくれるってこと?兄さまの反応が意外すぎて、驚く。
昨日気持ちを確かめ合って付き合い始めたばかりなのに展開が早すぎてどう返事していいかわからない。
アシュリーの父君にも報告するのかな?大丈夫なのかな…。
『ジュリアン』
『何?アシュリー』
『祝福してくれてるんだ。心配しなくてもいいよ』
『…うん』
「ありがとう、兄さま」
兄上が帰った後、アシュリーはいつまでも僕を離さなかった。
膝の上に座らせてずっと僕の髪に指を絡めて遊んでいるみたいだ。
「アシュ?どうしたの」
「ジュリアン…ありがとう。嬉しかったよ」
「……?何のこと?」
「ほら、さっきクラレンスに…小さな時から俺の事好きって…」
「うん…本当だよ」
碧い瞳が僕を見つめる。
「それにしても…ジュリアンは兄貴たちに愛されてるんだな」
「過保護なだけだよ。女の子みたいに思ってるんだよ…きっと」
「そうかな…。ジュリ…キスしていい?」
「うん…」
触れるだけの優しいキスはお互いを慰め、お互いを癒した。
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