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第二章
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
二年生に上がったくらいに虐めがプツリとなくなった。
今まで散々仲間外れにしていた子たちは、今までのことがなかったかのようにクラスでグループを作る時には先を争って「一緒に」と言ってくる。
ローブはたまに行方不明になるけど、回数は随分減ったと思う。他の物は隠されたりしなくなって本当に良かった。
教室を移動する時に、僕の席に置いてある教科書をさりげなく持ってくれたりする。
何だよ、とっても優しいじゃないか。
鞄を持とうとしてくれたり、食堂でも料理を取ってきてくれたりする。
あまりの変化に兄上たちが僕への虐めを知って、みんなを叱ってくれたのかなと思った。
けれど、さりげなくロドニー兄上に聞いてみても、
「おお、仲良くしてるんだな?ジュリアンは可愛いからな。でも、虐められたりしたら、ちゃんと言うんだぞ。
まあ、お前を虐める奴なんてこの世に一人もいないと思うけどな」
こんなことを言われたら僕の頭は混乱してしまう。気にしないようにしていたけれど、かなり傷付いていたから心から受け入れることはできなかった。
それでも、みんなは優しくしてくれて一緒に過ごすことにも徐々に慣れていった。
二年生になって変わったことと言えば、度々手紙を渡されるようになったことだ。
朝早い時間の教室で、授業が終わって寮への道を歩いている時に、寮の食堂へ行く途中の階段の踊り場で。
大抵が一人になった時に渡される。
僕より大きな身体をなるべく小さく見せる競争でもしているかのようにみんな縮こまって「ちょっと…」と手招きする。
赤い顔をしている子や青い顔をしている子まで居て、医務室に連れて行ってあげなきゃって焦ってしまう。
それでも「これ、読んで下さい」と差し出される手紙を受け取ると、今度はどれだけ早く僕から遠ざかるかの競争をしているように急いで離れてしまうから、医務室は良かったのかと更に心配になった。
渡された手紙にはダラダラと何かを褒め称えていたり、ポエムが書いてある時もある。たまには絵が書いてあったりと自分の才能をこれでもかとアピールしている。またある子は魔法が得意なんだろう、封筒を開けると花や蝶々が出てきたりしてびっくりしたこともある。
…これは、僕に編纂して出版して欲しいということなのかな?そんな受け付けはしてないのに次々に渡される手紙にはほとほと困ってしまう。
手紙の束を持って寮の部屋で頭を抱える僕にイーノックが「どうしたのですか?」と聞いてくれた。
イーノックに相談すると「ジュリアン?本気で言ってるの?」と呆れられてしまった。
「本気も何も困ってるんだけど…。みんなには本にするつもりはないですって言えばいいかな?」
「止めておきなさい…」
「じゃあ、どうすればいいの?ちゃんと出版してあげればいいの?」
「それも止めなさい。…ジュリアンはそれ読んで、どう思いました?」
「えっ?そうだな…上手くかけてるのもあるけど、文法が間違ってるのもあったし…。
ポエムにはもう少し季節感が入っていた方が読み手としては想像力が掻き立てられると思うんだ。やっぱり、部屋の中で縮こまったポエムより、庭で風に吹かれ、噴水の水が玉になって跳ねるさまや四季折々の花に囲まれてい…」
「わかった…もういいよ」
「いや、ポエムには…」
「ジュリアン、もういいよ」
まだ言い足りないのにイーノックはそれ以上は言わせてくれなかった。
おまけに可哀想にと呟いて、僕の頭を撫でる。
イーノックは「可愛いね、ジュリアンは」とか言いながら何も解決していないのに「ふふっ」っと笑いだしてしまった。
僕は真剣なのに…。
ダレルにも相談したけれど、イーノックと同じような反応だった。
違うと言えば「もし出版するならぜひ全員の実名で」と大笑いで言われて、これはきっと違うのだと理解した。
二年生に上がったくらいに虐めがプツリとなくなった。
今まで散々仲間外れにしていた子たちは、今までのことがなかったかのようにクラスでグループを作る時には先を争って「一緒に」と言ってくる。
ローブはたまに行方不明になるけど、回数は随分減ったと思う。他の物は隠されたりしなくなって本当に良かった。
教室を移動する時に、僕の席に置いてある教科書をさりげなく持ってくれたりする。
何だよ、とっても優しいじゃないか。
鞄を持とうとしてくれたり、食堂でも料理を取ってきてくれたりする。
あまりの変化に兄上たちが僕への虐めを知って、みんなを叱ってくれたのかなと思った。
けれど、さりげなくロドニー兄上に聞いてみても、
「おお、仲良くしてるんだな?ジュリアンは可愛いからな。でも、虐められたりしたら、ちゃんと言うんだぞ。
まあ、お前を虐める奴なんてこの世に一人もいないと思うけどな」
こんなことを言われたら僕の頭は混乱してしまう。気にしないようにしていたけれど、かなり傷付いていたから心から受け入れることはできなかった。
それでも、みんなは優しくしてくれて一緒に過ごすことにも徐々に慣れていった。
二年生になって変わったことと言えば、度々手紙を渡されるようになったことだ。
朝早い時間の教室で、授業が終わって寮への道を歩いている時に、寮の食堂へ行く途中の階段の踊り場で。
大抵が一人になった時に渡される。
僕より大きな身体をなるべく小さく見せる競争でもしているかのようにみんな縮こまって「ちょっと…」と手招きする。
赤い顔をしている子や青い顔をしている子まで居て、医務室に連れて行ってあげなきゃって焦ってしまう。
それでも「これ、読んで下さい」と差し出される手紙を受け取ると、今度はどれだけ早く僕から遠ざかるかの競争をしているように急いで離れてしまうから、医務室は良かったのかと更に心配になった。
渡された手紙にはダラダラと何かを褒め称えていたり、ポエムが書いてある時もある。たまには絵が書いてあったりと自分の才能をこれでもかとアピールしている。またある子は魔法が得意なんだろう、封筒を開けると花や蝶々が出てきたりしてびっくりしたこともある。
…これは、僕に編纂して出版して欲しいということなのかな?そんな受け付けはしてないのに次々に渡される手紙にはほとほと困ってしまう。
手紙の束を持って寮の部屋で頭を抱える僕にイーノックが「どうしたのですか?」と聞いてくれた。
イーノックに相談すると「ジュリアン?本気で言ってるの?」と呆れられてしまった。
「本気も何も困ってるんだけど…。みんなには本にするつもりはないですって言えばいいかな?」
「止めておきなさい…」
「じゃあ、どうすればいいの?ちゃんと出版してあげればいいの?」
「それも止めなさい。…ジュリアンはそれ読んで、どう思いました?」
「えっ?そうだな…上手くかけてるのもあるけど、文法が間違ってるのもあったし…。
ポエムにはもう少し季節感が入っていた方が読み手としては想像力が掻き立てられると思うんだ。やっぱり、部屋の中で縮こまったポエムより、庭で風に吹かれ、噴水の水が玉になって跳ねるさまや四季折々の花に囲まれてい…」
「わかった…もういいよ」
「いや、ポエムには…」
「ジュリアン、もういいよ」
まだ言い足りないのにイーノックはそれ以上は言わせてくれなかった。
おまけに可哀想にと呟いて、僕の頭を撫でる。
イーノックは「可愛いね、ジュリアンは」とか言いながら何も解決していないのに「ふふっ」っと笑いだしてしまった。
僕は真剣なのに…。
ダレルにも相談したけれど、イーノックと同じような反応だった。
違うと言えば「もし出版するならぜひ全員の実名で」と大笑いで言われて、これはきっと違うのだと理解した。
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