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第一章
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入学直後から虐められた。
物を隠されたり、仲間外れになった。
遠巻きにこちらを見てヒソヒソとされると疎外感が半端なくて辛かった。
もともと友だちがいなかったからそんな時に気楽に話しかける人がいない。季節が変わるにつれて同室のイーノックたちが話しかけてくれるようになったから良かったけどね。
目に見えて何かをされるわけじゃないから兄上たちにはわからなかった。心配するだろうし、情けない弟と思われるのが嫌だったから相談もできなかった。
ローブが一番行方不明になった。大体が直ぐに戻ってくるけど、よく行方不明になる。だから母上にお願いして何着か用意した。
今までドレスばかり着ていたから裾の長いものは慣れているけれど学園のローブは重かったから軽くなる魔法をかけた。
内緒だよ。
魔法を使うことは問題ないとは思うけど。もし、自分のローブにも魔法をかけてと言われたら困るからね。
…その時の僕はそんな声かけだけでも話しかけてもらいたかったけど、それだけで終わりの関係なら初めからない方が良いだろう。
僕には好きな子がいる。
同級生の男の子だ。
名前はアシュリー・リンメル。
背が高く、痩身なのに柔な印象はない。しなやかな筋肉が付いているのだろう。
ブロンドのショートヘアは活発なアシュリーにはとても似合ってる。碧眼で通った鼻筋、薄い唇は誰もが見惚れるかっこ良さだ。
僕の髪も小さな頃は綺麗なブロンドだったけど、大きくなるにつれだんだんシルバーに変わっているように思う。こんなに髪の色が変わるのかと不思議な感じがした。別にブロンドにこだわりがあったわけではないけど、兄弟で一人だけ違うのは少し寂しく思う。
最初に気付いたのはクラレンス兄上で、長期休暇の時「髪の色が…」と呟いて何か考え込んでいた。
アシュリーとは偶然…でもないけれど、同じクラスになった。
入学前の説明会の時に簡単な検査があった。クラス分けの資料にすると説明を受けていたけれど、学力や魔力を調べていた。
一番上のクラスだ。
ドレス姿で何度も会っているけれど本当の姿では会ったことはなかった。
当たり前だ。
自宅にいる時も社交場でも女装なのだから…。
告白などするつもりはない。
ドレスの裾を踏まれたり肩をぶつけられたりして虐められたちょっと嫌な奴でもあるのだ。
何故そんな嫌な奴を好きになったかと言うと、案外男らしくて優しいところもある。
…違うな。
所謂、一目惚れ。
初めて見た時に運命を感じた。…まあ、僕だけのだけどね。女装のせいか女の子に興味はなかった。別に男の子に興味があった訳ではない。アシュリー以外の男の子には何も感じない。
そして、その恋心が淡いものから少し色付いた気持ちになったのは、兄上たちがみんな学園へ上がってしまい、僕が一人でダンスパーティーへ行った時のことだった。
煌びやかなフロアーには生演奏の軽やかな音楽が流れている。あちこちで談笑する人やダンスを踊る人がいて華やかな雰囲気の苦手な僕はなるべく目立たないように努めていた。
その日いつもの護衛は一人しか居らず、少し頼りない気持ちだった。
兄上たちに護衛なんか付いてなかったけど、過保護な母上に無理やり押し切られてしまった。女装していたからだろう。ドレス姿では何かあった時、戦うことも、逃げることも難しい。兄上たちが側にいてくれている時でもその後ろに控えてた。
そんな時壁と一体になりきれなかった僕は多分学園を卒業したてだろう男性にしつこくダンスに誘われた。
「あの、困ります」
「そんなこと言わないで、一曲だけでも」
こんな女装の僕に声をかけるなんて、間抜けな奴もいるんだな…と思いながら護衛が丁寧にあちらに連れて行ってくれるのを見ていた。その時一瞬、一人になってしまった。
「君、可愛いね。俺と踊ってよ」
その時に話し掛けられて困った。自信満々に誘われたって、嫌なものは嫌だ。それに不細工…。
見目麗しい兄上たちを見慣れた僕は一瞬で鳥肌が立ち、常に貼り付けている笑顔が剥がれそうなくらい心底嫌になった。
こう言う自分のことをよくわかっていない人はいくら言葉で断っても『モテる』と勘違いしているので諦めない。
なかなか消えてくれない不細工。
なかなか戻ってこない護衛。
ほとほと困っていた時だった。
「この子は俺と踊るんだ。遠慮してよ、お兄さん。それにお兄さんならもっと大人の女性があっちでお兄さんに誘われるの待ってるよ」
すると嬉しそに「そうか?」とか言いながら離れてくれた。
「あの、ありがとうございます」
今までこんなふうに接したことはなかったから驚いた。
物を隠されたり、仲間外れになった。
遠巻きにこちらを見てヒソヒソとされると疎外感が半端なくて辛かった。
もともと友だちがいなかったからそんな時に気楽に話しかける人がいない。季節が変わるにつれて同室のイーノックたちが話しかけてくれるようになったから良かったけどね。
目に見えて何かをされるわけじゃないから兄上たちにはわからなかった。心配するだろうし、情けない弟と思われるのが嫌だったから相談もできなかった。
ローブが一番行方不明になった。大体が直ぐに戻ってくるけど、よく行方不明になる。だから母上にお願いして何着か用意した。
今までドレスばかり着ていたから裾の長いものは慣れているけれど学園のローブは重かったから軽くなる魔法をかけた。
内緒だよ。
魔法を使うことは問題ないとは思うけど。もし、自分のローブにも魔法をかけてと言われたら困るからね。
…その時の僕はそんな声かけだけでも話しかけてもらいたかったけど、それだけで終わりの関係なら初めからない方が良いだろう。
僕には好きな子がいる。
同級生の男の子だ。
名前はアシュリー・リンメル。
背が高く、痩身なのに柔な印象はない。しなやかな筋肉が付いているのだろう。
ブロンドのショートヘアは活発なアシュリーにはとても似合ってる。碧眼で通った鼻筋、薄い唇は誰もが見惚れるかっこ良さだ。
僕の髪も小さな頃は綺麗なブロンドだったけど、大きくなるにつれだんだんシルバーに変わっているように思う。こんなに髪の色が変わるのかと不思議な感じがした。別にブロンドにこだわりがあったわけではないけど、兄弟で一人だけ違うのは少し寂しく思う。
最初に気付いたのはクラレンス兄上で、長期休暇の時「髪の色が…」と呟いて何か考え込んでいた。
アシュリーとは偶然…でもないけれど、同じクラスになった。
入学前の説明会の時に簡単な検査があった。クラス分けの資料にすると説明を受けていたけれど、学力や魔力を調べていた。
一番上のクラスだ。
ドレス姿で何度も会っているけれど本当の姿では会ったことはなかった。
当たり前だ。
自宅にいる時も社交場でも女装なのだから…。
告白などするつもりはない。
ドレスの裾を踏まれたり肩をぶつけられたりして虐められたちょっと嫌な奴でもあるのだ。
何故そんな嫌な奴を好きになったかと言うと、案外男らしくて優しいところもある。
…違うな。
所謂、一目惚れ。
初めて見た時に運命を感じた。…まあ、僕だけのだけどね。女装のせいか女の子に興味はなかった。別に男の子に興味があった訳ではない。アシュリー以外の男の子には何も感じない。
そして、その恋心が淡いものから少し色付いた気持ちになったのは、兄上たちがみんな学園へ上がってしまい、僕が一人でダンスパーティーへ行った時のことだった。
煌びやかなフロアーには生演奏の軽やかな音楽が流れている。あちこちで談笑する人やダンスを踊る人がいて華やかな雰囲気の苦手な僕はなるべく目立たないように努めていた。
その日いつもの護衛は一人しか居らず、少し頼りない気持ちだった。
兄上たちに護衛なんか付いてなかったけど、過保護な母上に無理やり押し切られてしまった。女装していたからだろう。ドレス姿では何かあった時、戦うことも、逃げることも難しい。兄上たちが側にいてくれている時でもその後ろに控えてた。
そんな時壁と一体になりきれなかった僕は多分学園を卒業したてだろう男性にしつこくダンスに誘われた。
「あの、困ります」
「そんなこと言わないで、一曲だけでも」
こんな女装の僕に声をかけるなんて、間抜けな奴もいるんだな…と思いながら護衛が丁寧にあちらに連れて行ってくれるのを見ていた。その時一瞬、一人になってしまった。
「君、可愛いね。俺と踊ってよ」
その時に話し掛けられて困った。自信満々に誘われたって、嫌なものは嫌だ。それに不細工…。
見目麗しい兄上たちを見慣れた僕は一瞬で鳥肌が立ち、常に貼り付けている笑顔が剥がれそうなくらい心底嫌になった。
こう言う自分のことをよくわかっていない人はいくら言葉で断っても『モテる』と勘違いしているので諦めない。
なかなか消えてくれない不細工。
なかなか戻ってこない護衛。
ほとほと困っていた時だった。
「この子は俺と踊るんだ。遠慮してよ、お兄さん。それにお兄さんならもっと大人の女性があっちでお兄さんに誘われるの待ってるよ」
すると嬉しそに「そうか?」とか言いながら離れてくれた。
「あの、ありがとうございます」
今までこんなふうに接したことはなかったから驚いた。
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