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第一章
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☆★☆ ★☆★ ☆★☆
入学式は国王陛下と王妃殿下の御臨席を賜り粛々と進んだ。
その後それぞれのクラスに分かれこれからの学園生活、特に寮での生活について注意事項を聞いた。
朝は時間通りに起きないと、朝食が食べられないとか当たり前のことをつらつらと話す寮父さんは穏やかそうな人だ。親元を離れると言っても自分で料理をしたりする訳じゃないからかみんな多少不安そうにしているけれど、期待の方が大きいだろう。
兄上たちから聞いた話では魔法で食品を保存することを覚えれば食堂に行かなくても良いらしい。流石に昼も夜も自室で食べる人はほとんどいないらしいけどそれは自由だ。
でも、一年生は必ず食堂で食べなくてはならない。それは魔法が使える使えないに関わらない。規則を守る。特に貴族は甘やかされて育った子もいるだろう。ここでは身分は関係ない。王族も一緒に学ぶ。集団で生活するには守らなければならないことがあることを肌で覚えていく。
学園での記念すべき一日目は、これからの授業の前にみんなが仲良くなれるようにとオリエンテーションが行われる。クラスの結束力を高めるのだそうだ。
僕には元々の友だちはいないけどクラスメイトたちは友だちとワイワイ騒いでいたり、主従関係にあるのかクラスメイトに敬語で話しかけている子がいたり様々だ。
僕たちのクラスの担任は魔法学の先生だ。それぞれのクラスの担任は余程のことがない限り卒業まで同じ先生が受け持つ。最も、クラスは能力別のクラスだからクラスメイトが八年間皆同じとは限らない。
担任の先生の名前はレスター・バーンズ。
バーンズ先生は四十歳くらい。綺麗な赤毛で、瞳の色は黒。背が高く、ローブで隠れているけれどがっしりとした身体は威厳がある。
滅多に変わることのない担任だけど、バーンズ先生は去年まで、クラレンス兄上のクラスの担任だった。どうして変わったのかは知らないけれど、とても優秀な魔法使いらしい。国王陛下から最高位の魔法術者の称号であるジェイドが与えられた、国に五人しかいない逸材だ。戦いに明け暮れているような国ならば学園の生徒相手に教鞭を取っていたりしないだろうが、幸いアルシャント国は平和である。
学園では男女別々のクラスになり、男子寮と女子寮がある。
当然僕のクラスメイトは男の子ばかりだ。
感激で涙が出そう。
誰も僕を女の子扱いはしない。
兄上たちは弟とわかっていながらもどこか女の子として見ていたのではないかと思う。ドレス姿の弟では役不足だったのだろう。喧嘩など出来るわけないか…。
みんなと同じローブで、ローブの下の制服も同じ。休日には私服も着るけど兄上たちと同じズボンだ。
母上が「着たくなるかもしれないから一着だけでも持って行ったら?」と親切心なのか、好奇心なのかわからないけど言ってくれた時は即答で拒否した。それでも僕の荷物の底の底にドレスとウィッグが紛れていたのを見た時は…諦め、と言うか無の境地だよね…そのままトランクの奥に残したままだ。
学園生活と寮生活が一度に始まったけれど、僕は何かあれば三人の兄上がいると思うと寂しさはなかった。
…やっぱり、頼ってしまうのは仕方ないと思う…。
実際、兄上たちが入れ替わり様子を見に来るので、鬱陶しいくらいだった。
僕の家はこの国では五本の指に入る名家なので兄上が来ると目立つのだ。
それは家柄だけではない。
兄上たちはそれぞれ個性は違うけれど弟の欲目なしにカッコ良いのだ。
ローブを翻し颯爽と校舎を歩く姿は凛々しくて、遠目でもその姿を認めることが出来た。
その兄上に「もう来ないで」と何度言っても「心配なんだよ」と言われては、末の弟としては何も言えない。おそらく母上に頼まれたのではないだろうか?いくら女装をしていたと言えど男なのだからそんなに心配しなくてもいいのにいつまでも子ども扱いだ。
そんな僕に朗報があった。
母上は五人目の子どもを授かったのだ。ぜひ今度こそ女の子をと願わずにはいられない。
無事女の子が生まれたら、母上の呪縛から完全に解き放たれるのだ。
しかし、もし男の子なら…かわいそうな弟に同情なんてものではない。
入学式は国王陛下と王妃殿下の御臨席を賜り粛々と進んだ。
その後それぞれのクラスに分かれこれからの学園生活、特に寮での生活について注意事項を聞いた。
朝は時間通りに起きないと、朝食が食べられないとか当たり前のことをつらつらと話す寮父さんは穏やかそうな人だ。親元を離れると言っても自分で料理をしたりする訳じゃないからかみんな多少不安そうにしているけれど、期待の方が大きいだろう。
兄上たちから聞いた話では魔法で食品を保存することを覚えれば食堂に行かなくても良いらしい。流石に昼も夜も自室で食べる人はほとんどいないらしいけどそれは自由だ。
でも、一年生は必ず食堂で食べなくてはならない。それは魔法が使える使えないに関わらない。規則を守る。特に貴族は甘やかされて育った子もいるだろう。ここでは身分は関係ない。王族も一緒に学ぶ。集団で生活するには守らなければならないことがあることを肌で覚えていく。
学園での記念すべき一日目は、これからの授業の前にみんなが仲良くなれるようにとオリエンテーションが行われる。クラスの結束力を高めるのだそうだ。
僕には元々の友だちはいないけどクラスメイトたちは友だちとワイワイ騒いでいたり、主従関係にあるのかクラスメイトに敬語で話しかけている子がいたり様々だ。
僕たちのクラスの担任は魔法学の先生だ。それぞれのクラスの担任は余程のことがない限り卒業まで同じ先生が受け持つ。最も、クラスは能力別のクラスだからクラスメイトが八年間皆同じとは限らない。
担任の先生の名前はレスター・バーンズ。
バーンズ先生は四十歳くらい。綺麗な赤毛で、瞳の色は黒。背が高く、ローブで隠れているけれどがっしりとした身体は威厳がある。
滅多に変わることのない担任だけど、バーンズ先生は去年まで、クラレンス兄上のクラスの担任だった。どうして変わったのかは知らないけれど、とても優秀な魔法使いらしい。国王陛下から最高位の魔法術者の称号であるジェイドが与えられた、国に五人しかいない逸材だ。戦いに明け暮れているような国ならば学園の生徒相手に教鞭を取っていたりしないだろうが、幸いアルシャント国は平和である。
学園では男女別々のクラスになり、男子寮と女子寮がある。
当然僕のクラスメイトは男の子ばかりだ。
感激で涙が出そう。
誰も僕を女の子扱いはしない。
兄上たちは弟とわかっていながらもどこか女の子として見ていたのではないかと思う。ドレス姿の弟では役不足だったのだろう。喧嘩など出来るわけないか…。
みんなと同じローブで、ローブの下の制服も同じ。休日には私服も着るけど兄上たちと同じズボンだ。
母上が「着たくなるかもしれないから一着だけでも持って行ったら?」と親切心なのか、好奇心なのかわからないけど言ってくれた時は即答で拒否した。それでも僕の荷物の底の底にドレスとウィッグが紛れていたのを見た時は…諦め、と言うか無の境地だよね…そのままトランクの奥に残したままだ。
学園生活と寮生活が一度に始まったけれど、僕は何かあれば三人の兄上がいると思うと寂しさはなかった。
…やっぱり、頼ってしまうのは仕方ないと思う…。
実際、兄上たちが入れ替わり様子を見に来るので、鬱陶しいくらいだった。
僕の家はこの国では五本の指に入る名家なので兄上が来ると目立つのだ。
それは家柄だけではない。
兄上たちはそれぞれ個性は違うけれど弟の欲目なしにカッコ良いのだ。
ローブを翻し颯爽と校舎を歩く姿は凛々しくて、遠目でもその姿を認めることが出来た。
その兄上に「もう来ないで」と何度言っても「心配なんだよ」と言われては、末の弟としては何も言えない。おそらく母上に頼まれたのではないだろうか?いくら女装をしていたと言えど男なのだからそんなに心配しなくてもいいのにいつまでも子ども扱いだ。
そんな僕に朗報があった。
母上は五人目の子どもを授かったのだ。ぜひ今度こそ女の子をと願わずにはいられない。
無事女の子が生まれたら、母上の呪縛から完全に解き放たれるのだ。
しかし、もし男の子なら…かわいそうな弟に同情なんてものではない。
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