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番外編
06
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「お邪魔します」
結局押し切られて横田くんの部屋に来た。碧空くんの話に心動かされても、やっぱり行きたくない気持ちの方が強くて何度も断った。けれど、横田くんの碧空くんへの思いを知ってるせいで心の何処かに申し訳ないって気持ちがあったから、横田くんの手を振り切って勘解由小路さんの所には行けなかった。
「適当に座って。コーヒーで良い?」
「あっ、あ、うん」
そんなにゆっくりするつもりはない。でも、せっかくなので一杯だけご馳走になることにした。同室者は今はいないのか二人きりの部屋は落ち着かない。
「碧空ったら、姫宮が転校してからスゲー落ち込んでさ。最初みんなからかってたけど、あんまりにも落ち込み方が酷かったから冗談でもからかえなくなって」
「そうな、んだ…」
コーヒーを淹れてもらい、約束通り小学生の碧空くんの話をしてくれるけど、だんだん眠くなってきた。話されるその話の内容がだんだん理解できなくなってくる。昨日遅くまで起きてたかな?こんな時間に眠くなるなんて…。
「横田くん、ご、めん…。僕、眠くっ、て…」
「やっと効いてきたな…。碧、俺の碧。碧空なんかに渡さない。どうして碧空なんだ。俺がこんなに愛してるのに。やっと俺の腕の中に帰ってきた。もう離さないから…」
横田くんが何かを言っているけど、理解はできなかった。ただ、やっぱりここにきてはいけなかったんだなと後悔だけを感じながら身体はソファーに沈んでいった。
髪を撫でる優しい手の動きで意識が浮上する。
ああ、碧空くんの部屋で寝てしまったのかな。でも、少しの違和感を覚え閉じていた目をゆっくりと開ける。
見たことのない寝室だった。僕はベッドの上で身動きがとれなかった。両腕を上げてそこで括られ、どこか家具にでも繋がっているのか下ろそうと思ってもできなかった。
ここはどこだろう?
まだはっきりしない思考は、危険を感じながらも何もできなかった。
カチャとドアが開いて誰かが入ってきた。
「あっ、起きた?」
そこにはトレーにコップを乗せて笑顔を見せる横田くんが立っていた。
「どう、して…?」
「気分はどう?」
トレーをナイトテーブルに置いて僕を覗き込む。
「水飲む?持ってきたんだ。どのくらい効くのかわからなくってさ。乱暴なことはしたくなかったから」
「な、なぜ、横田くん、が?あっ、僕が目障りだから?」
だんだん思考が戻ってくる。
コーヒーを飲んで、横田くんの話を聞いて、それから…、それからの記憶がない。眠くなったと思ったのは薬で眠らされたからだったんだ。
僕の今の状況はあまりよろしくない。監禁されたのだろう。横たわる僕の直ぐ側に座り穏やかな手つきで髪を梳く。この状況にあまりに不釣り合いなその優しい手に戸惑いを隠せない。乱暴にされたいわけじゃないけど、混乱する。
「目障りなわけないじゃん。俺の碧」
「えっ?俺の…」
「そうだよ。今日からは俺のもの。碧空なんかには渡さない」
「えっ?えっ?それは…。えっと…、横田くんは碧空くんが好きなんじゃ…」
「碧、あの話、信じたんだ?」
「えっ?」
「俺が碧空の事、好きって話」
「えっ…違うの?」
「そんなの嘘。気持ち悪いだろ?俺が碧空の事好きだなんて…。うわっ、鳥肌立った」
「だって…」
あんなに碧空くんの事、構ってたじゃない……。
僕の声は驚きで喉を通らなかった。だんだんと迫ってくる横田くんに恐怖が押し寄せる。
新歓の時の高倉さんと尾崎さんに襲われかけた時とも、自習室で乱暴された時とも違う。横田くんの目はあきらかに僕に執着している。
高倉さんたちは誰でも良かった。僕に乱暴した人たちは僕の存在意義を重要視していなかった。乱暴しろと命令されたから暴力を振るっただけ。
でも、目の前にいる横田くんは僕を見てる。碧空くんじゃなく僕を。ぶるっと震えて、身体を動かそうとする。けれど、両手を括られ固定されているこの状況では動くことはできなかった。
結局押し切られて横田くんの部屋に来た。碧空くんの話に心動かされても、やっぱり行きたくない気持ちの方が強くて何度も断った。けれど、横田くんの碧空くんへの思いを知ってるせいで心の何処かに申し訳ないって気持ちがあったから、横田くんの手を振り切って勘解由小路さんの所には行けなかった。
「適当に座って。コーヒーで良い?」
「あっ、あ、うん」
そんなにゆっくりするつもりはない。でも、せっかくなので一杯だけご馳走になることにした。同室者は今はいないのか二人きりの部屋は落ち着かない。
「碧空ったら、姫宮が転校してからスゲー落ち込んでさ。最初みんなからかってたけど、あんまりにも落ち込み方が酷かったから冗談でもからかえなくなって」
「そうな、んだ…」
コーヒーを淹れてもらい、約束通り小学生の碧空くんの話をしてくれるけど、だんだん眠くなってきた。話されるその話の内容がだんだん理解できなくなってくる。昨日遅くまで起きてたかな?こんな時間に眠くなるなんて…。
「横田くん、ご、めん…。僕、眠くっ、て…」
「やっと効いてきたな…。碧、俺の碧。碧空なんかに渡さない。どうして碧空なんだ。俺がこんなに愛してるのに。やっと俺の腕の中に帰ってきた。もう離さないから…」
横田くんが何かを言っているけど、理解はできなかった。ただ、やっぱりここにきてはいけなかったんだなと後悔だけを感じながら身体はソファーに沈んでいった。
髪を撫でる優しい手の動きで意識が浮上する。
ああ、碧空くんの部屋で寝てしまったのかな。でも、少しの違和感を覚え閉じていた目をゆっくりと開ける。
見たことのない寝室だった。僕はベッドの上で身動きがとれなかった。両腕を上げてそこで括られ、どこか家具にでも繋がっているのか下ろそうと思ってもできなかった。
ここはどこだろう?
まだはっきりしない思考は、危険を感じながらも何もできなかった。
カチャとドアが開いて誰かが入ってきた。
「あっ、起きた?」
そこにはトレーにコップを乗せて笑顔を見せる横田くんが立っていた。
「どう、して…?」
「気分はどう?」
トレーをナイトテーブルに置いて僕を覗き込む。
「水飲む?持ってきたんだ。どのくらい効くのかわからなくってさ。乱暴なことはしたくなかったから」
「な、なぜ、横田くん、が?あっ、僕が目障りだから?」
だんだん思考が戻ってくる。
コーヒーを飲んで、横田くんの話を聞いて、それから…、それからの記憶がない。眠くなったと思ったのは薬で眠らされたからだったんだ。
僕の今の状況はあまりよろしくない。監禁されたのだろう。横たわる僕の直ぐ側に座り穏やかな手つきで髪を梳く。この状況にあまりに不釣り合いなその優しい手に戸惑いを隠せない。乱暴にされたいわけじゃないけど、混乱する。
「目障りなわけないじゃん。俺の碧」
「えっ?俺の…」
「そうだよ。今日からは俺のもの。碧空なんかには渡さない」
「えっ?えっ?それは…。えっと…、横田くんは碧空くんが好きなんじゃ…」
「碧、あの話、信じたんだ?」
「えっ?」
「俺が碧空の事、好きって話」
「えっ…違うの?」
「そんなの嘘。気持ち悪いだろ?俺が碧空の事好きだなんて…。うわっ、鳥肌立った」
「だって…」
あんなに碧空くんの事、構ってたじゃない……。
僕の声は驚きで喉を通らなかった。だんだんと迫ってくる横田くんに恐怖が押し寄せる。
新歓の時の高倉さんと尾崎さんに襲われかけた時とも、自習室で乱暴された時とも違う。横田くんの目はあきらかに僕に執着している。
高倉さんたちは誰でも良かった。僕に乱暴した人たちは僕の存在意義を重要視していなかった。乱暴しろと命令されたから暴力を振るっただけ。
でも、目の前にいる横田くんは僕を見てる。碧空くんじゃなく僕を。ぶるっと震えて、身体を動かそうとする。けれど、両手を括られ固定されているこの状況では動くことはできなかった。
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