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第四章
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碧空くんにお姫さま抱っこされた僕のお腹にそのカバンを置いて歩き出す。
「あの…碧空くん?」
「何?」
「歩けるよ?」
「俺がしたいから」
「でも、重いでしょ?」
「ん、平気」
「でも…」
「あっ!」
「えっ?どうしたの?」
「コンタクト、取ろう」
そう言って洗面所へ連れていかれた。手を洗い、コンタクトを外す間だけ自分の足で立ったけど、すかさず抱き上げられまた腕の中。
碧空くんの部屋のソファに座ってるのにまだ腕の中。生徒会役員の碧空くんの部屋は完全に個室だった。だから、誰かが入ってくることはない。
「姫、一つだけ聞いていい?」
「うん」
「どうして、俺の事覚えてたのに、姫宮碧だって言ってくれなかった?」
「そ、それは…」
「一番最初、生徒会室で会った時からわかってたんだろ?」
「ごめんなさい。会いたくなかった」
「えっ?」
「ごめん…」
辛そうな顔を見ると申し訳なくなる。
「嫌われてると思ってたから。また、いじめられたら嫌だなって…」
「嫌いなわけないじゃないか!それに、またって…俺、いじめたか?……まあ、あれはいじめだったのかなぁ…。俺はあの時から碧の事が好きだった。あの時はそんな気持ちに気付いてなかったのかもしれないけど、碧を泣かせてしまった日に……、後悔したよ。ごめんな」
碧空くんが泣きそうな、辛そうな顔をして謝ってくれる。
「ち、違うんだ。僕もあの時は気付いてなかった…と、思う。会えなくなって寂しかった。意地悪されるのは正直嫌だったけど…」
「ごめ…」
「謝らないで。僕、嫌だって言わなかったでしょ?嫌だけど、嫌じゃなかった。変な日本語だけど、嫌じゃなかったんだ。碧空くんは僕だけ特別に接してくれた。女の子はいつも碧空くんを独り占めする僕に怒ってたけど、怒られても側に居たかったから」
「嬉しいよ」
「あのね、聞いても良い?智親くんに報告してた姫って僕の事?」
「そうだよ」
「なぁんだ…。嬉しい」
ドンドンとドアを叩く音に碧空くんの顔が歪む。さっきから携帯が鳴りっぱなしで煩いのに、更に騒がしくなる。
僕の携帯は部屋に置いたままで持ってくるのを忘れた。そして、碧空くんの携帯は切れては鳴り、切れては鳴りを繰り返す。
「ああ、煩い!せっかく姫と二人きりなのに!」
「誰からなの?」
今は誰からも掛かってきていないおとなしい携帯の、着信記録を読み上げる。
「美都瑠、智親、智親、美都瑠、智親、美都瑠…あっ」
『やっと出た。ここ開けてよ!』
思わずって感じで触ってしまった画面が、怒った声の美都瑠と困り顔の碧空くんを繋げた。
「わかったよ」
僕をぎゅっと抱きしめてからドアを開けるために離れた。
「碧!」
美都瑠に抱きしめられた後、少し離れてまじまじと顔を見られた。
「顔立ちは整ってると思ってたんだ。きっと眼鏡の下は綺麗なんだと気付いてたけど…まさかここまでとは」
「ちょっ…目もかよ!」
美都瑠と智親くんにじっと見つめられて恥ずかしい。隣に座った碧空くんを見て助けを求めた。
「何、何?もう、ラブラブなの?」
そう言えば、以前碧空くんの事が好きかと聞かれて完全否定した。あの時はまさかこんなふうに碧空くんと仲良くなれるとは思ってなくて、諦めるために誰にも知られてはいけないと必死だった。美都瑠の秘密を暴露するって卑怯なやり方であの話をおさめたんだった。
「あっ、あの…ごめん、美都瑠」
「何で謝ってるんだよ?」
不機嫌なオーラで僕の腰を抱く力が強くなる。
「碧空、そんな威嚇しなくても取らないよ?」
「み、美都瑠…」
「わかってたよ。碧が碧空の事が好きだって」
「っ…」
「そうなのか?俺、知らなかった…マジか…」
智親くんが驚いてる。
「それより…、言ってくれれば良かったのに。その…髪とか…俺にもバレないようにってことは風呂上がりもウイッグ付けてたってことだろ?コンタクトも…部屋で付けたり、大変だったな」
「あの…碧空くん?」
「何?」
「歩けるよ?」
「俺がしたいから」
「でも、重いでしょ?」
「ん、平気」
「でも…」
「あっ!」
「えっ?どうしたの?」
「コンタクト、取ろう」
そう言って洗面所へ連れていかれた。手を洗い、コンタクトを外す間だけ自分の足で立ったけど、すかさず抱き上げられまた腕の中。
碧空くんの部屋のソファに座ってるのにまだ腕の中。生徒会役員の碧空くんの部屋は完全に個室だった。だから、誰かが入ってくることはない。
「姫、一つだけ聞いていい?」
「うん」
「どうして、俺の事覚えてたのに、姫宮碧だって言ってくれなかった?」
「そ、それは…」
「一番最初、生徒会室で会った時からわかってたんだろ?」
「ごめんなさい。会いたくなかった」
「えっ?」
「ごめん…」
辛そうな顔を見ると申し訳なくなる。
「嫌われてると思ってたから。また、いじめられたら嫌だなって…」
「嫌いなわけないじゃないか!それに、またって…俺、いじめたか?……まあ、あれはいじめだったのかなぁ…。俺はあの時から碧の事が好きだった。あの時はそんな気持ちに気付いてなかったのかもしれないけど、碧を泣かせてしまった日に……、後悔したよ。ごめんな」
碧空くんが泣きそうな、辛そうな顔をして謝ってくれる。
「ち、違うんだ。僕もあの時は気付いてなかった…と、思う。会えなくなって寂しかった。意地悪されるのは正直嫌だったけど…」
「ごめ…」
「謝らないで。僕、嫌だって言わなかったでしょ?嫌だけど、嫌じゃなかった。変な日本語だけど、嫌じゃなかったんだ。碧空くんは僕だけ特別に接してくれた。女の子はいつも碧空くんを独り占めする僕に怒ってたけど、怒られても側に居たかったから」
「嬉しいよ」
「あのね、聞いても良い?智親くんに報告してた姫って僕の事?」
「そうだよ」
「なぁんだ…。嬉しい」
ドンドンとドアを叩く音に碧空くんの顔が歪む。さっきから携帯が鳴りっぱなしで煩いのに、更に騒がしくなる。
僕の携帯は部屋に置いたままで持ってくるのを忘れた。そして、碧空くんの携帯は切れては鳴り、切れては鳴りを繰り返す。
「ああ、煩い!せっかく姫と二人きりなのに!」
「誰からなの?」
今は誰からも掛かってきていないおとなしい携帯の、着信記録を読み上げる。
「美都瑠、智親、智親、美都瑠、智親、美都瑠…あっ」
『やっと出た。ここ開けてよ!』
思わずって感じで触ってしまった画面が、怒った声の美都瑠と困り顔の碧空くんを繋げた。
「わかったよ」
僕をぎゅっと抱きしめてからドアを開けるために離れた。
「碧!」
美都瑠に抱きしめられた後、少し離れてまじまじと顔を見られた。
「顔立ちは整ってると思ってたんだ。きっと眼鏡の下は綺麗なんだと気付いてたけど…まさかここまでとは」
「ちょっ…目もかよ!」
美都瑠と智親くんにじっと見つめられて恥ずかしい。隣に座った碧空くんを見て助けを求めた。
「何、何?もう、ラブラブなの?」
そう言えば、以前碧空くんの事が好きかと聞かれて完全否定した。あの時はまさかこんなふうに碧空くんと仲良くなれるとは思ってなくて、諦めるために誰にも知られてはいけないと必死だった。美都瑠の秘密を暴露するって卑怯なやり方であの話をおさめたんだった。
「あっ、あの…ごめん、美都瑠」
「何で謝ってるんだよ?」
不機嫌なオーラで僕の腰を抱く力が強くなる。
「碧空、そんな威嚇しなくても取らないよ?」
「み、美都瑠…」
「わかってたよ。碧が碧空の事が好きだって」
「っ…」
「そうなのか?俺、知らなかった…マジか…」
智親くんが驚いてる。
「それより…、言ってくれれば良かったのに。その…髪とか…俺にもバレないようにってことは風呂上がりもウイッグ付けてたってことだろ?コンタクトも…部屋で付けたり、大変だったな」
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