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第三章
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自習室には鍵はかからない。いくつか使用中になっている、その中の一つを静かに開けた。
「えっ、あっ、碧空と、八城さま?」
純粋に読書に没頭するクラスメイトの中原だった。目を大きく開き驚いている。そりゃ、使用中にも関わらず入ってくるとは思わないだろう。ノックもなしに。
「悪い。ちょっと、人を探してて。ここ、開けといても良いか?じゃないと何回も開けられるかも」
このまま閉めたら智親たちがまた確認する。もう直ぐ一階に来て一緒に探してくれるはずだ。
複雑な気持ちはある。俺が探し出したい。何もされてなければ良いけれど、もし…もし、レイプ…いや、今は考えるな。
「い、良いけど…僕も手伝おうか?」
「大丈夫だ。後少しで追い詰める」
そうさ、あと少し。
待っててくれ、姫。
次のドアに手をかけて篤人と視線を合わせ頷くと一気に中に入った。次々に使用中の部屋を開けるけれど、どこにも姫はいない。
「姫…」
どこに行った。
自習室じゃなかったのか?
どうしたら良い?
「碧はいたのか?」
智親と高倉さん、尾崎さん、克さんの他クラスメイトが二人いた。首を振りうな垂れ座り込む俺に篤人が腕を取り立たせた。
「何やってるんだ!全部確認するぞ!」
そうだ、ここに居なくても絶対に探さなければ!使用中になっていないドアを順に開けていく。
「いや!やめて!痛い!やっ」
ドアを開けると突然声が聞こえた。
「姫!」
そこには眼鏡を取られ、綺麗なプラチナブロンドの髪を振りながら後ろから拘束され、ズボンを下された姫が泣きながら抵抗していた。顔が赤く腫れている。殴られたのか?何かで引っ掻いたのかその赤みの下で一筋の線がより赤く見える。
俺の姫の綺麗な顔に?途端に頭に血がのぼる。
「お前ら!」
姫の前に座り今にもパンツに手をかける男を蹴って吹っ飛ばした。姫の後ろの男は突然のことに腕を離し呆然と見ている。部屋の奥にはガタガタと震えだした男が壁を伝いゆっくりと移動する。
「篤人!あいつが逃げる」
俺たちの声を聞いて高倉さんと尾崎さんが入ってきた。
「あっ、恭さま…」
そう言って高倉さんに走り寄る。
「怖かった。僕、怖かった…」
こいつが首謀者だ。一瞬で理解した。
「高倉さん。そいつ拘束して!篤人と尾崎さんはこいつらお願い」
「いや!何、恭さま…怖い…」
何を言ってるんだ!
きつく睨むと高倉さんの腕に縋り付いていた身体を離し、途端に下を向き座った。姫に手を出していた二人は大人しく座り込む。着ていたパーカーを脱ぎそれで下半身を隠して姫を抱きしめた。
篤人は淡々と、高倉さんと尾崎さんは姫の外見に驚きながらも何故か納得していて、もしかしたら姫の部屋でのやり取りから何か知っていたのかもしれない。
「姫、大丈夫か?もう心配いらない。俺がこうしていてもいいか?」
まるで極寒の冬山で遭難したみたいにガタガタと震え、涙をいっぱいに溜めた目で俺を見る。
「碧空くん?」
「ああ、そうだ」
嬉しかった。いつもはよそよそしく大沢くんと呼んでいたのに今は名前で呼んでくれる。しかし、次の言葉にその喜びは萎んでしまう。
「いや…」
「えっ…」
首を振り違うと言う。
「嫌じゃないから…」
「よかった…。やっと見つけた。姫…」
「姫?」
「忘れたのか?俺がわからない?」
フルフルと首を振る。
「忘れてない。ちゃんと覚えてるよ。でも、姫って…」
「小学生の時、俺にだけ姫って呼ぶの許してくれてただろ?」
そうだったかなと呟き、俺の胸に顔を埋めた。俺の服をギュと掴んだ手がまだ微かに震えている。
「怖かった」
「もう大丈夫だ。俺が守るから、姫…好きだよ」
「好き?嘘…」
「本当だよ…」
ふっと笑顔になり嬉しいと呟いて意識を手放した。
緊張の糸が切れたのだろう。
嬉しいと言ってくれた。舞い上がってしまいそうだ。
「いたのか?大丈夫なのか?」
克さんと智親とクラスメイトが入ってくる。
拘束された三人と姫を見て言葉が出ないみたいだ。
「それ、そいつって、碧?」
「そうだよ。克さんと智親に紹介するよ、姫だ」
「はぁ~、なんだよ…」
智親に勘解由小路さんのところから毛布を取ってきてもらいパーカーの代わりに姫を包んだ。
「えっ、あっ、碧空と、八城さま?」
純粋に読書に没頭するクラスメイトの中原だった。目を大きく開き驚いている。そりゃ、使用中にも関わらず入ってくるとは思わないだろう。ノックもなしに。
「悪い。ちょっと、人を探してて。ここ、開けといても良いか?じゃないと何回も開けられるかも」
このまま閉めたら智親たちがまた確認する。もう直ぐ一階に来て一緒に探してくれるはずだ。
複雑な気持ちはある。俺が探し出したい。何もされてなければ良いけれど、もし…もし、レイプ…いや、今は考えるな。
「い、良いけど…僕も手伝おうか?」
「大丈夫だ。後少しで追い詰める」
そうさ、あと少し。
待っててくれ、姫。
次のドアに手をかけて篤人と視線を合わせ頷くと一気に中に入った。次々に使用中の部屋を開けるけれど、どこにも姫はいない。
「姫…」
どこに行った。
自習室じゃなかったのか?
どうしたら良い?
「碧はいたのか?」
智親と高倉さん、尾崎さん、克さんの他クラスメイトが二人いた。首を振りうな垂れ座り込む俺に篤人が腕を取り立たせた。
「何やってるんだ!全部確認するぞ!」
そうだ、ここに居なくても絶対に探さなければ!使用中になっていないドアを順に開けていく。
「いや!やめて!痛い!やっ」
ドアを開けると突然声が聞こえた。
「姫!」
そこには眼鏡を取られ、綺麗なプラチナブロンドの髪を振りながら後ろから拘束され、ズボンを下された姫が泣きながら抵抗していた。顔が赤く腫れている。殴られたのか?何かで引っ掻いたのかその赤みの下で一筋の線がより赤く見える。
俺の姫の綺麗な顔に?途端に頭に血がのぼる。
「お前ら!」
姫の前に座り今にもパンツに手をかける男を蹴って吹っ飛ばした。姫の後ろの男は突然のことに腕を離し呆然と見ている。部屋の奥にはガタガタと震えだした男が壁を伝いゆっくりと移動する。
「篤人!あいつが逃げる」
俺たちの声を聞いて高倉さんと尾崎さんが入ってきた。
「あっ、恭さま…」
そう言って高倉さんに走り寄る。
「怖かった。僕、怖かった…」
こいつが首謀者だ。一瞬で理解した。
「高倉さん。そいつ拘束して!篤人と尾崎さんはこいつらお願い」
「いや!何、恭さま…怖い…」
何を言ってるんだ!
きつく睨むと高倉さんの腕に縋り付いていた身体を離し、途端に下を向き座った。姫に手を出していた二人は大人しく座り込む。着ていたパーカーを脱ぎそれで下半身を隠して姫を抱きしめた。
篤人は淡々と、高倉さんと尾崎さんは姫の外見に驚きながらも何故か納得していて、もしかしたら姫の部屋でのやり取りから何か知っていたのかもしれない。
「姫、大丈夫か?もう心配いらない。俺がこうしていてもいいか?」
まるで極寒の冬山で遭難したみたいにガタガタと震え、涙をいっぱいに溜めた目で俺を見る。
「碧空くん?」
「ああ、そうだ」
嬉しかった。いつもはよそよそしく大沢くんと呼んでいたのに今は名前で呼んでくれる。しかし、次の言葉にその喜びは萎んでしまう。
「いや…」
「えっ…」
首を振り違うと言う。
「嫌じゃないから…」
「よかった…。やっと見つけた。姫…」
「姫?」
「忘れたのか?俺がわからない?」
フルフルと首を振る。
「忘れてない。ちゃんと覚えてるよ。でも、姫って…」
「小学生の時、俺にだけ姫って呼ぶの許してくれてただろ?」
そうだったかなと呟き、俺の胸に顔を埋めた。俺の服をギュと掴んだ手がまだ微かに震えている。
「怖かった」
「もう大丈夫だ。俺が守るから、姫…好きだよ」
「好き?嘘…」
「本当だよ…」
ふっと笑顔になり嬉しいと呟いて意識を手放した。
緊張の糸が切れたのだろう。
嬉しいと言ってくれた。舞い上がってしまいそうだ。
「いたのか?大丈夫なのか?」
克さんと智親とクラスメイトが入ってくる。
拘束された三人と姫を見て言葉が出ないみたいだ。
「それ、そいつって、碧?」
「そうだよ。克さんと智親に紹介するよ、姫だ」
「はぁ~、なんだよ…」
智親に勘解由小路さんのところから毛布を取ってきてもらいパーカーの代わりに姫を包んだ。
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