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第三章
07
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それから散々罵られた。
ここぞとばかりにまくし立てる。背が低い、ダサい髪に黒縁眼鏡、暗い、と有ること無いこと織り交ぜてよくこんなに言えるもんだと感心する。その中には高倉さんがどんなに素敵か、いつから見ているか、全然振り向いてくれないと僕には関係ないことまで言っている。
聞くくらいならいくらでも聞く。だいたい、目隠ししたままなのでここがどこだか、何人いるのかとか情報が入ってこないのでこの人の愚痴を聞いているだけでは恐怖は湧かない。ただ『レイプ』って言葉は頭の中にあって、ここに連れてこられた時は凄く怖かった。高倉さんと尾崎さんに襲われそうになった時のことを思い出し冷や汗が出る。
みんなから頼りない僕を心配する声を聞いたけど、まさか、寮の部屋にいる時に攫われるとは思わなかった。しかし、ヒステリックな声を聞くだけなら大丈夫。そんな僕の緊張感の無さにイラついたのか胸ぐらを掴まれて乱暴に目隠しを取られた。
「痛っ!あっ…」
爪がかすったのか頬がチリッと痛む。この人、見たことある。いつも高倉さんに話しかけてる人。とっても綺麗で、肩までのサラサラストレートヘヤーが印象的な人だ。
「何がおかしいんだ!?」
「べ、別におかしくなんかない…」
怖い。顔にお前なんか大っ嫌いって書いてあるくらい睨んでくる。綺麗な顔で凄まれると迫力がある。
「バカにしてるの?何様のつもり?」
「バカになんかしてません!」
怖さから思わず大きな声を出してしまった。手を振りかぶり顔を叩かれそうになり、括られていた手を出して防いだ。実は椅子の背もたれに当たった時、緩んだんだ。もともと紐ではなく、ハンカチかバンダナのような柔らかい布で縛られていたらしく不自然な格好というだけで手首は痛くなかった。顔に当たるはずの自分の手が捕まえられていることが信じられないのかポカンとしている。
「どうして!?大塚!何してんだよ!もう!こいつ、滅茶苦茶にして!」
この部屋には僕を散々罵ったサラサラヘアーと、岡野と名乗った本名大塚と、多分エレベーターで待っていた名前を知らない人の三人だけだった。
ここは自習室なのだろうか?個室が与えられているのにこんな部屋は必要ないように思うけれど、机と数脚の椅子がありパソコンが置かれていた。広さは四畳程あり四人でいても、圧迫感はない。今はカーテンが引かれているけれど大きな窓もあって快適な空間だ。
その快適な空間でサラサラヘアーは僕の座ってた椅子を部屋の隅に持って行き座る。岡野こと大塚は僕の胸ぐらを掴みヘラヘラ笑ってる。ちょろいと思われてるんだろう。名無しさんはサラサラヘアーの隣に立つ。僕の相手は大塚だけでいいと思ったのだろう。
碧空くんと離れ、転校した僕は空手を習った。師範には護身術だな、とか笑われながら頑張った。しかし、喧嘩はしたことない。喧嘩したら破門だからなと言われていた。僕だけじゃなくみんなに言っていたことだけど、僕には関係ないことだった。だって、喧嘩なんかしたくない。
大塚とは身長差がありグッと捻り上げられると爪先立ちになる。なかなか動かない大塚。じっと僕の顔を見て、何故か頬を緩め心なしか顔が赤くなる。
苦しくて、僕の服を捻り上げる大塚の腕を掴んだ。そのまま移動して、壁に背中を抑え僕の体重を預けると片手で眼鏡に触れる。
「ぃやっ…」
眼鏡を取られそうになり慌てると、余計に面白そうにニヤニヤ笑う。
「何してるんだ?早くやって!!」
「まあまあ、焦るなよ高須さん。面白いのが見られるかもな!…思った通りだ」
僕の顔から眼鏡を取り、二ヘラ~っとだらしない顔の大塚。
「この顔で高倉に気に入られたんじゃないか、高須さん?お前、勝てないかもな」
「そ!そんなことない!恭さまはそんな奴のことなんか、相手にするわけない!良いから!早く!」
「わかった、よっ!」
その言葉とともに眼鏡を放り投げた右手が、腹に一撃を加えた。
ここぞとばかりにまくし立てる。背が低い、ダサい髪に黒縁眼鏡、暗い、と有ること無いこと織り交ぜてよくこんなに言えるもんだと感心する。その中には高倉さんがどんなに素敵か、いつから見ているか、全然振り向いてくれないと僕には関係ないことまで言っている。
聞くくらいならいくらでも聞く。だいたい、目隠ししたままなのでここがどこだか、何人いるのかとか情報が入ってこないのでこの人の愚痴を聞いているだけでは恐怖は湧かない。ただ『レイプ』って言葉は頭の中にあって、ここに連れてこられた時は凄く怖かった。高倉さんと尾崎さんに襲われそうになった時のことを思い出し冷や汗が出る。
みんなから頼りない僕を心配する声を聞いたけど、まさか、寮の部屋にいる時に攫われるとは思わなかった。しかし、ヒステリックな声を聞くだけなら大丈夫。そんな僕の緊張感の無さにイラついたのか胸ぐらを掴まれて乱暴に目隠しを取られた。
「痛っ!あっ…」
爪がかすったのか頬がチリッと痛む。この人、見たことある。いつも高倉さんに話しかけてる人。とっても綺麗で、肩までのサラサラストレートヘヤーが印象的な人だ。
「何がおかしいんだ!?」
「べ、別におかしくなんかない…」
怖い。顔にお前なんか大っ嫌いって書いてあるくらい睨んでくる。綺麗な顔で凄まれると迫力がある。
「バカにしてるの?何様のつもり?」
「バカになんかしてません!」
怖さから思わず大きな声を出してしまった。手を振りかぶり顔を叩かれそうになり、括られていた手を出して防いだ。実は椅子の背もたれに当たった時、緩んだんだ。もともと紐ではなく、ハンカチかバンダナのような柔らかい布で縛られていたらしく不自然な格好というだけで手首は痛くなかった。顔に当たるはずの自分の手が捕まえられていることが信じられないのかポカンとしている。
「どうして!?大塚!何してんだよ!もう!こいつ、滅茶苦茶にして!」
この部屋には僕を散々罵ったサラサラヘアーと、岡野と名乗った本名大塚と、多分エレベーターで待っていた名前を知らない人の三人だけだった。
ここは自習室なのだろうか?個室が与えられているのにこんな部屋は必要ないように思うけれど、机と数脚の椅子がありパソコンが置かれていた。広さは四畳程あり四人でいても、圧迫感はない。今はカーテンが引かれているけれど大きな窓もあって快適な空間だ。
その快適な空間でサラサラヘアーは僕の座ってた椅子を部屋の隅に持って行き座る。岡野こと大塚は僕の胸ぐらを掴みヘラヘラ笑ってる。ちょろいと思われてるんだろう。名無しさんはサラサラヘアーの隣に立つ。僕の相手は大塚だけでいいと思ったのだろう。
碧空くんと離れ、転校した僕は空手を習った。師範には護身術だな、とか笑われながら頑張った。しかし、喧嘩はしたことない。喧嘩したら破門だからなと言われていた。僕だけじゃなくみんなに言っていたことだけど、僕には関係ないことだった。だって、喧嘩なんかしたくない。
大塚とは身長差がありグッと捻り上げられると爪先立ちになる。なかなか動かない大塚。じっと僕の顔を見て、何故か頬を緩め心なしか顔が赤くなる。
苦しくて、僕の服を捻り上げる大塚の腕を掴んだ。そのまま移動して、壁に背中を抑え僕の体重を預けると片手で眼鏡に触れる。
「ぃやっ…」
眼鏡を取られそうになり慌てると、余計に面白そうにニヤニヤ笑う。
「何してるんだ?早くやって!!」
「まあまあ、焦るなよ高須さん。面白いのが見られるかもな!…思った通りだ」
僕の顔から眼鏡を取り、二ヘラ~っとだらしない顔の大塚。
「この顔で高倉に気に入られたんじゃないか、高須さん?お前、勝てないかもな」
「そ!そんなことない!恭さまはそんな奴のことなんか、相手にするわけない!良いから!早く!」
「わかった、よっ!」
その言葉とともに眼鏡を放り投げた右手が、腹に一撃を加えた。
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