22 / 45
第三章
05
しおりを挟む
「なんか、鬱陶しい」
いくら智親にそんなことを言われても、このニヤついた顔を引き締めることはできない。
「お前のファンが泣くぞ?」
「そんなのどうでもいい」
ホント、どうでもいい。
「いい加減に、何があったか教えてくれてもいいだろ?」
探偵に会って、報告書を受け取り、二、三質問した。俺の満足した顔に彼も上機嫌で帰っていった。部屋まで戻りその書類を片付けた。落ち着くためにコーヒーを淹れて飲んだけれど、ソワソワする心は落ち着くことはなかった。諦めて、智親の部屋まで来て、今に至る。
「もう少ししたら、教えてやるよ。ところで、安田くんはどこに行ったんだ?」
「お前が来る十分くらい前に呼び出されて出てったきりだ」
早く、帰ってこい。ああ、待ち遠しい。
コンコンとノックの音がする。ひ…安田くんではないだろう。自分の部屋をノックする奴はいない。あっ、もしかして、智親に気を使ってのノックなのか?智親を見ると誰なんだとドアを開ける。なんだ…安田くんではないのか。
「碧、いる?」
顔を出したのは高倉恭。
「出かけてますけど」
「じゃあ、待たせてもらおうかな」
安田くんが高倉さんと昼に一緒のテーブルで食べてるのはみたことがある。克さんと一緒にいなければならないし、無闇に声をかけると迷惑になるからと、見守るだけだった。いつもこんなふうに、この部屋に遊びに来ていたのだろうか?
「今日はどうしたんですか?初めてですね、ここに来るの?尾崎さんは一緒じゃないんですか?」
「二人で約束したから泰基はいないよ」
「そう言えば…」
「牧野も夜は食堂で食べてよ。碧と二人でディナーだからさ」
俺を無視して話が進む。
「随分親しいんですね」
「ん?俺と碧?そうだよ」
「付き合ってるんですか?」
「どうだろ…そんなに睨むなよ。まだだよ。今日、告白しちゃおうかな」
「安田くんが高倉さんのファンにいじめられますよ」
内心穏やかではないけれど、ここで喧嘩を始めても仕方ない。どうやら夕食を共にというのは本当で、昨日食材を買ってきていて、智親にもそう伝えていたそうだ。
普段一緒に過ごすことのない高倉さんとコーヒーを飲んでる。
「ところで、大沢はどうしてここにいるわけ?」
「俺も知りたい。俺に用ってわけじゃなさそうだし。気持ち悪いほど機嫌よかった。今は微妙だけど」
「いや、ちょっと…。それにしても安田くんは帰ってこないな。晩御飯作るなら、そろそろ準備する時間じゃない?前の時も…」
「大沢も碧の手作り料理、食べたことあるんだ」
「ええ、一度だけ」
「そうだな、遅いよな。牧野、知らねぇの?」
「美都瑠が呼んでるって、一年生が呼びにきて出て行きました」
「あれ?美都瑠くんは昨日から外出してるはずだけど。もう帰ってきたのかな?」
「そうなんですか?」
「碧が一人で食堂で晩御飯食べてたから、一緒に食べてあげたんだよな」
「一緒に?二人で?」
智親の質問に爽やかな笑顔で頷く高倉さんに呆れてしまう。
「連れ去られたりしてないよな?」
この人のファンは過激な人が多いと聞く。だから、尾崎さんの他に特定の人を側に置いてないと思ってたのに。ここにきて何故安田くんなんだ?
「美都瑠に連絡してみるよ」
智親が電話してる間も落ち着かない。
「大沢はさ…」
そんな俺の焦りを知ってか知らずか、のんびりした高倉さんの声にイラっとする。
「何ですか?」
「碧の事、どう思ってるの?あの子の見た目はどこにでもいる普通の…いや、普通以下の子だよ?」
「そのセリフ、俺もあなたにしたいです。高倉さん、何か知ってるんですか?」
「それ、そのセリフ、俺もそっくり返すよ。何か知ってるのか?」
「そうですね…。全部…でしょうか?」
「全部?あの眼鏡のこととか?」
「高倉さんは…」
「えっ?」
二人の会話を智親の大きな声が遮った。
「どうしたんだ?」
電話を終えた智親に聞くと顔色が悪い。
「美都瑠は呼び出したりしてないって。明日帰るって連絡入れても返事はなかったって」
「電話、してみる」
すると隣の部屋から着信音が聞こえた。
ドアを開けると机の上に置いてある携帯が大きな音を出し、震えていた。
いくら智親にそんなことを言われても、このニヤついた顔を引き締めることはできない。
「お前のファンが泣くぞ?」
「そんなのどうでもいい」
ホント、どうでもいい。
「いい加減に、何があったか教えてくれてもいいだろ?」
探偵に会って、報告書を受け取り、二、三質問した。俺の満足した顔に彼も上機嫌で帰っていった。部屋まで戻りその書類を片付けた。落ち着くためにコーヒーを淹れて飲んだけれど、ソワソワする心は落ち着くことはなかった。諦めて、智親の部屋まで来て、今に至る。
「もう少ししたら、教えてやるよ。ところで、安田くんはどこに行ったんだ?」
「お前が来る十分くらい前に呼び出されて出てったきりだ」
早く、帰ってこい。ああ、待ち遠しい。
コンコンとノックの音がする。ひ…安田くんではないだろう。自分の部屋をノックする奴はいない。あっ、もしかして、智親に気を使ってのノックなのか?智親を見ると誰なんだとドアを開ける。なんだ…安田くんではないのか。
「碧、いる?」
顔を出したのは高倉恭。
「出かけてますけど」
「じゃあ、待たせてもらおうかな」
安田くんが高倉さんと昼に一緒のテーブルで食べてるのはみたことがある。克さんと一緒にいなければならないし、無闇に声をかけると迷惑になるからと、見守るだけだった。いつもこんなふうに、この部屋に遊びに来ていたのだろうか?
「今日はどうしたんですか?初めてですね、ここに来るの?尾崎さんは一緒じゃないんですか?」
「二人で約束したから泰基はいないよ」
「そう言えば…」
「牧野も夜は食堂で食べてよ。碧と二人でディナーだからさ」
俺を無視して話が進む。
「随分親しいんですね」
「ん?俺と碧?そうだよ」
「付き合ってるんですか?」
「どうだろ…そんなに睨むなよ。まだだよ。今日、告白しちゃおうかな」
「安田くんが高倉さんのファンにいじめられますよ」
内心穏やかではないけれど、ここで喧嘩を始めても仕方ない。どうやら夕食を共にというのは本当で、昨日食材を買ってきていて、智親にもそう伝えていたそうだ。
普段一緒に過ごすことのない高倉さんとコーヒーを飲んでる。
「ところで、大沢はどうしてここにいるわけ?」
「俺も知りたい。俺に用ってわけじゃなさそうだし。気持ち悪いほど機嫌よかった。今は微妙だけど」
「いや、ちょっと…。それにしても安田くんは帰ってこないな。晩御飯作るなら、そろそろ準備する時間じゃない?前の時も…」
「大沢も碧の手作り料理、食べたことあるんだ」
「ええ、一度だけ」
「そうだな、遅いよな。牧野、知らねぇの?」
「美都瑠が呼んでるって、一年生が呼びにきて出て行きました」
「あれ?美都瑠くんは昨日から外出してるはずだけど。もう帰ってきたのかな?」
「そうなんですか?」
「碧が一人で食堂で晩御飯食べてたから、一緒に食べてあげたんだよな」
「一緒に?二人で?」
智親の質問に爽やかな笑顔で頷く高倉さんに呆れてしまう。
「連れ去られたりしてないよな?」
この人のファンは過激な人が多いと聞く。だから、尾崎さんの他に特定の人を側に置いてないと思ってたのに。ここにきて何故安田くんなんだ?
「美都瑠に連絡してみるよ」
智親が電話してる間も落ち着かない。
「大沢はさ…」
そんな俺の焦りを知ってか知らずか、のんびりした高倉さんの声にイラっとする。
「何ですか?」
「碧の事、どう思ってるの?あの子の見た目はどこにでもいる普通の…いや、普通以下の子だよ?」
「そのセリフ、俺もあなたにしたいです。高倉さん、何か知ってるんですか?」
「それ、そのセリフ、俺もそっくり返すよ。何か知ってるのか?」
「そうですね…。全部…でしょうか?」
「全部?あの眼鏡のこととか?」
「高倉さんは…」
「えっ?」
二人の会話を智親の大きな声が遮った。
「どうしたんだ?」
電話を終えた智親に聞くと顔色が悪い。
「美都瑠は呼び出したりしてないって。明日帰るって連絡入れても返事はなかったって」
「電話、してみる」
すると隣の部屋から着信音が聞こえた。
ドアを開けると机の上に置いてある携帯が大きな音を出し、震えていた。
55
お気に入りに追加
842
あなたにおすすめの小説


美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる