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第三章
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◆◆◆◆◆
『似ている』
安田碧を見た第一印象は、外見ではない何かが似ていると思った。
一番の特徴であるプラチナブロンドの髪色とブルーの瞳は無く、似て非なるものであるにもかかわらずどうしてそう思ったのか?
確かに肌は白いし、肌理も細かそうだ。でも、だいたい男の肌なんかどうでもいい。
でも、姫ならきっと肌理も細かいだろうし、触ってみたい。身体中に手を這わせ、キスの雨を降らせ、乱れる姿を見てみたい。
不自然なほどのボサボサ頭に大きな黒縁眼鏡。ただ、名前が同じ。おまけに、字も同じ。あまりの外見の違いに逆に気になった。
気になるのは……それは第一印象が似ていると思ったからなのか?
あの時、泣き出した姫を何とか姫の家まで連れ帰った。下ろした下着とズボンをきちんと着せ、ごめんと謝りながら髪を撫でると泣きながらも何とか笑顔を見せてくれた。思わず抱きしめると、俺にしがみ付きシクシクと涙で俺の服を濡らした。
「恥ずかしい、碧空くんのバカ」
小さな声で怒るのを可愛いと思いながら髪を撫でた。俺は…好きな子に意地悪したくなる小学生のガキだったんだ。いつも可愛い反応をする姫にイタズラがどんどんエスカレートしてしまった。まさかあのまま会えなくなるなんて思ってなかった。
姫の家でも母親に謝った。もうしないからと言うとあっさり許してくれた。本当は怒ってたんだ。可愛い息子をいじめる奴とは話もしたくなかったのだろう。転校したことを知るとどこに行ったのか聞きに行った。しかし、当然教えてはもらえない。
調べた。
しかし、自分で調べるには限界があった。
この学校に中学で入るとなかなか探しに行けないし、色々忙しくてだんだん諦めてきた。この学校に入る時、少しだけ期待したんだ。もしかしてここにいるかもって。でも、いなかった。忘れたわけじゃない。高校に入り、周りが騒がしくなると余計に思い出した。
ああ、会いたい。
二年になり安田くんを見て、探そうと決めた。それで、探偵を雇ったんだ。
今日、結果を持って寮に来る。
「碧空、何だかそわそわしてるね?」
隣で優雅にカツ丼を食べている生徒会副会長の桜庭克がからかうように話しかける。
「だって、克さん、今日姫の行き先がわかるんだよ?」
「高校にいる間はどうせわかっても会えないからって、熱心に探してなかったのに。どうしたの?」
「それが、案外近くにいたりして…」
「えっ!?」
「ちょっ!克さん、声大きいって」
思わず克さんの口を手で塞ぐと、周りが騒がしい。
克さんの恋人に悪い虫を寄せ付けないようにと言いつけられ、授業以外の時を一緒に過ごすようになって一年と少し。最初こそ、直ぐに恋人を乗り換えて尻軽だとか、それなら俺が彼氏になってやると傲慢な声も聞こえたけれど、今ではすっかり落ち着いている。俺も克さんと一緒にいると煩い奴らが寄ってこないからちょうど良い。休み時間にも教室に来て欲しいくらいだ。
「これから探偵と会うんですよ」
「そうなんだ。ねえ、上手くいったら会わせてね」
「まあ、上手くいったらですけどね」
「ふふっ」
「何ですか?」
「いや、碧空のそんな顔初めて見たなって」
「どんな顔してます?」
両手で頬を覆うと面白そうに、可愛い碧空と笑顔になる。可愛いのは克さんだよ、とは言えなかった。間違いなく可愛いって形容がぴったりな人なのに可愛いって言われると怒る。性格は結構男前の人なのだ。
「じゃあ、部屋まで送ります」
「いつも、ごめんね」
「いえいえ、俺のためにも…ですよ」
「あっ、あ~、そうだねよ」
ふふっと笑い席を立つ。トレイを持って返却口に行くその間も桜ちゃんや今度一緒にご飯食べたいと声がかかる。俺への声は勿論無視だ。克さんを部屋まで送り一階へ降りる。約束の時間にはまだあるけれど、部屋にいても落ち着かない。
「あっ、大沢くん。今日、面会あるんだよね?入って待ってて良いよ」
寮父の勘解由小路鴻志さんが声をかけてくれた。
『似ている』
安田碧を見た第一印象は、外見ではない何かが似ていると思った。
一番の特徴であるプラチナブロンドの髪色とブルーの瞳は無く、似て非なるものであるにもかかわらずどうしてそう思ったのか?
確かに肌は白いし、肌理も細かそうだ。でも、だいたい男の肌なんかどうでもいい。
でも、姫ならきっと肌理も細かいだろうし、触ってみたい。身体中に手を這わせ、キスの雨を降らせ、乱れる姿を見てみたい。
不自然なほどのボサボサ頭に大きな黒縁眼鏡。ただ、名前が同じ。おまけに、字も同じ。あまりの外見の違いに逆に気になった。
気になるのは……それは第一印象が似ていると思ったからなのか?
あの時、泣き出した姫を何とか姫の家まで連れ帰った。下ろした下着とズボンをきちんと着せ、ごめんと謝りながら髪を撫でると泣きながらも何とか笑顔を見せてくれた。思わず抱きしめると、俺にしがみ付きシクシクと涙で俺の服を濡らした。
「恥ずかしい、碧空くんのバカ」
小さな声で怒るのを可愛いと思いながら髪を撫でた。俺は…好きな子に意地悪したくなる小学生のガキだったんだ。いつも可愛い反応をする姫にイタズラがどんどんエスカレートしてしまった。まさかあのまま会えなくなるなんて思ってなかった。
姫の家でも母親に謝った。もうしないからと言うとあっさり許してくれた。本当は怒ってたんだ。可愛い息子をいじめる奴とは話もしたくなかったのだろう。転校したことを知るとどこに行ったのか聞きに行った。しかし、当然教えてはもらえない。
調べた。
しかし、自分で調べるには限界があった。
この学校に中学で入るとなかなか探しに行けないし、色々忙しくてだんだん諦めてきた。この学校に入る時、少しだけ期待したんだ。もしかしてここにいるかもって。でも、いなかった。忘れたわけじゃない。高校に入り、周りが騒がしくなると余計に思い出した。
ああ、会いたい。
二年になり安田くんを見て、探そうと決めた。それで、探偵を雇ったんだ。
今日、結果を持って寮に来る。
「碧空、何だかそわそわしてるね?」
隣で優雅にカツ丼を食べている生徒会副会長の桜庭克がからかうように話しかける。
「だって、克さん、今日姫の行き先がわかるんだよ?」
「高校にいる間はどうせわかっても会えないからって、熱心に探してなかったのに。どうしたの?」
「それが、案外近くにいたりして…」
「えっ!?」
「ちょっ!克さん、声大きいって」
思わず克さんの口を手で塞ぐと、周りが騒がしい。
克さんの恋人に悪い虫を寄せ付けないようにと言いつけられ、授業以外の時を一緒に過ごすようになって一年と少し。最初こそ、直ぐに恋人を乗り換えて尻軽だとか、それなら俺が彼氏になってやると傲慢な声も聞こえたけれど、今ではすっかり落ち着いている。俺も克さんと一緒にいると煩い奴らが寄ってこないからちょうど良い。休み時間にも教室に来て欲しいくらいだ。
「これから探偵と会うんですよ」
「そうなんだ。ねえ、上手くいったら会わせてね」
「まあ、上手くいったらですけどね」
「ふふっ」
「何ですか?」
「いや、碧空のそんな顔初めて見たなって」
「どんな顔してます?」
両手で頬を覆うと面白そうに、可愛い碧空と笑顔になる。可愛いのは克さんだよ、とは言えなかった。間違いなく可愛いって形容がぴったりな人なのに可愛いって言われると怒る。性格は結構男前の人なのだ。
「じゃあ、部屋まで送ります」
「いつも、ごめんね」
「いえいえ、俺のためにも…ですよ」
「あっ、あ~、そうだねよ」
ふふっと笑い席を立つ。トレイを持って返却口に行くその間も桜ちゃんや今度一緒にご飯食べたいと声がかかる。俺への声は勿論無視だ。克さんを部屋まで送り一階へ降りる。約束の時間にはまだあるけれど、部屋にいても落ち着かない。
「あっ、大沢くん。今日、面会あるんだよね?入って待ってて良いよ」
寮父の勘解由小路鴻志さんが声をかけてくれた。
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